「パウリーニョ(左)ら強力な助っ人がそろう広州恒大(中国)。資金力に大きな差があっても、立ち向かうすべはある」と語るセルジオ氏

ここ数年、Jリーグ勢が大苦戦していたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)。

今季はG大阪と柏が決勝トーナメントに進出し、頑張りを見せたけど、それぞれ準決勝、準々決勝で中国王者の広州恒大(こうだい)に敗れた。

試合を見れば、広州恒大にまったく歯が立たなかったわけではない。特にG大阪のパスサッカーは十分通用していた。また、以前よりもその差は縮まったとはいえ、G大阪と柏の日本人選手の質は、広州恒大の中国人選手よりも上だった。

それなのに、なぜ勝てなかったかといえば、“助っ人”外国人の質に大きな差があったから。中国リーグを4連覇中の広州恒大は、年間予算500億円ともいわれるアジア一のリッチクラブ。前ブラジル代表監督のスコラリが指揮を執り、選手も移籍金約19億円で獲得したMFのパウリーニョをはじめ、リカルド・グラール、エウケソン、ロビーニョら欧州の強豪でも通用するブラジル代表クラスがそろう。好景気を背景に羽振りのいい中国にあっても飛び抜けた存在のチームだ。

今後、中国経済が減速するかもしれないし、僕は広州恒大がいつまでも今と同じようなお金の使い方をできるとは考えていない。とはいえ、中国のバブルがはじけるのを指をくわえて待つわけにもいかない。今年だけでなく、来年も年末にクラブW杯が日本で開催される。そこに開催国枠で出場するのと、アジア王者として出場するのとではまったく意味が違うしね。来季こそJリーグ勢がアジアの頂点に立つために、どうすれば彼らを倒せるのかを本気で考えなければいけない。

一番重要なのは、やはり選手のキャスティング。広州恒大とは使えるお金に差があるけど、やりようはあると思う。

柿谷他、くすぶっている欧州組は大勢いる

ヒントになるのは、2007年のACLを制した浦和。あのチームなら今の広州恒大とも互角に戦える。ポンテ、ワシントンという優良な外国人選手はいたけど、彼らに頼り切るのではなく、各ポジションにズラリと日本代表クラスがそろい、活躍していた。それがポイントだ。つまり、何億円、何十億円もの移籍金がかかる代表クラスの大物外国人をふたり、3人と獲得するのが無理なら、質の高い日本人選手を今よりも増やすことで、力の差を埋めていこうという発想だ。

例えば、試合に出られずにくすぶっている日本代表クラスの欧州組は大勢いる。彼らなどは狙い目だ。G大阪ならC大阪出身の柿谷(バーゼル)にオファーを出したらどうだろう。たとえレンタル移籍でも、双方に多くのメリットがあると思う。選手もクラブもプロであるなら、かつての所属チームに遠慮をする必要はない。また、国内に目を向け、C大阪がJ1昇格を逃がしたら山口を獲りにいけば面白い。

もちろん、そうした各クラブの努力だけじゃなく、Jリーグ本体からのバックアップも必要だ。G大阪の長谷川監督は広州恒大戦後の会見で「(Jリーグは)ACLに合わせた日程づくりをしてほしい」と過密日程への不満をコボしていた。それに対してJリーグの村井チェアマンは「打てる手は打っている」と語ったそうだけど、納得できる人がどれだけいるだろう。

高い目標をもたなければ、成長は遅くなる。ACLで何年も勝てていない事実に各クラブ、Jリーグ本体はもっと真剣に向き合うべきだ。

(構成/渡辺達也)