マイホーム購入はハイリスクなギャンブル?

旭化成建材によるマンション杭打ち工事のデータ改ざん問題が建設業界に波紋を呼んでいるーー。

10年間で手掛けた建物が3千件を超える大手の不祥事であることから、全国の地方自治体の間で同社以外の建設会社が手掛けた物件についても不正の有無を調査する動きが広がっているのだ。

マンションや戸建てに住む人々の間でも「ウチは本当に大丈夫か?」と心配する声が多数挙がっており、このままでは「それだけのリスクをとって、持ち家を買うのは本当に正しいのか?」という議論にも発展しかねない。

『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏も、この問題を旭化成建材1社の問題と捉えず、問われているのは建設業界全体の信頼だと指摘する。

「この手の問題が出ると、2005年11月に発覚した姉歯秀次元一級建築士の耐震強度偽装問題を思い出しますよね。あの時って、結果的に姉歯さんの“個人犯罪”ってことになったわけですよね。でも、今回の件が個人の責任じゃないとすると『大手企業も偽装をする』ってことになるわけで、そうなると『どの会社もやってるんじゃね?』って思うのが普通ですよね」と、ひろゆき氏。

今回の騒動では、横浜のマンションで杭打ちデータの偽装が発覚した後、北海道でも同様の問題が見つかってしまった。こうなると、横浜の偽装発覚当初に説明していた「担当者個人の不正」という理由が、「組織ぐるみの問題ではないのではないか?」と疑いたくなってしまうが…。

では、なぜこんな不正が行なわれてしまったのか? 堀江氏はそこに前出の「姉歯事件」の影響があるのではと見る。

「実は今回の件に姉歯事件が関係しているって話もあってね。姉歯事件で建築基準法が厳しくなったんだけど(07年6月改正)、その法律が施行される前に駆け込みで建築ラッシュがあって、その当時はどの会社もハンパなく忙しかったんだって。で、忙しい中、なんとか数をこなすためにの不正をしたんじゃないかっていう説がある。まぁ、時期的には重なってるんだよね(05年11月着工、06年6月分譲開始、07年竣工)」

もちろん、これはひとつの仮説にすぎない。しかし、ふたりが「この時期に建てられた物件は(同様の不正があるかどうか)総ざらいしたほうがいい」と指摘するほど建設業界に対する信頼が大きく失われつつあるのは間違いない。

マイホームを持つ人の気持ちがわからない

もうひとつ、ここで問題になるのは「これから家を買う一般の人は、どのように不正の有無をチェックすればいいのか?」ということ。自分で建築現場を見に行くぐらいしか対処法はないが、それで素人が完璧にチェックできる可能性は低い。

そこでひろゆき氏は、そもそも今の時代においてマイホームを購入することへの幻想に疑問を呈する。

「『マイホーム=夢』だと思っている人が多いですけど、ぶっちゃけ今の時代に不動産を買うことってギャンブルになっちゃってるんですよね。しかも、日本の人口が減ってきていて、今回のような違法建築が増えていることを考えると、マイホームってかなりハイリスクな割にだいぶレートが低い賭けになっちゃうわけです。

一時的でしたけど、人口が増えていた時代やバブル期には購入時よりも売却時のほうが価格は上がっていた時がありましたよね。でも、今は少子化で労働人口も減っているので、買えば得する時代は終わってますからね。

個人のレベルで買える不動産で、その後に価格が2倍になることなんてめったにないですけど、半額になることはざらにありますからね…」

この意見に堀江氏も「だから俺は、マイホームを持つ人の気持ちがわからないな。違法建築や災害のリスク、転勤とか家族の人数が変わっていくことを考えると、『なんでマイホームなんて持つんだろ?』って思う」とうなづく。

確かに、希少性の高い物件に高値がつくことはある。しかし、そういう物件を買えるのは金持ちばかり。「資産」として考えた場合、マイホームは決して割の良いものではないというのがふたりの持論だ。さらに堀江氏は…、

「俺は『家を持つことはリスク』だってずっと言ってるんだけど、なかなか理解してくれないんだよね。マイホームのことを『人生で一番大きな買い物』とかいう割に思考停止してる人が多いんだよ。まあ、今回の旭化成建材の不正は許されないことだけど、マイホーム購入を考えている人は『何かヘンなことはないか?』って思ったほうがいい。繰り返すけど、マイホームは持つだけでハイリスクなんだから」

今や大手の仕事といえど、不正が見つかる時代。マイホーム購入を検討する人は、こうしたリスクをしっかり把握したうえで、一度、「なんでマイホームがほしいのか?」と自問自答することが後悔をしないためにも必要だろう。

(イラスト/西アズナブル)

●この対談コラムの全文は発売中の『週刊プレイボーイ』47号でお読みいただけます!