来年開校する通信制高校「N高等学校」とは!? イラスト/西アズナブル

「KADOKAWA」グループと「ドワンゴ」が統合してできた「カドカワ」が、同社の教育事業として「N高等学校」という通信制高校を来年4月に開校すると発表した。

動画サイト「ニコニコ動画」のシステムを改良し、授業は基本、ネットを通じて行なわれる。数学や外国語といった通常科目の他にも、各業界で活躍する講師陣によるプログラミング、文芸創作、ゲーム、アニメといった「課外授業」も受けられるという。

「ネット時代に対応した新しいかたちの通信制高校」として注目を集めているN高等学校には、『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏も興味津々。

しかし意外なことに、この試みをめぐる評価はふたりの間で少し異なっていた。ひろゆき氏が言う。

「個人的な意見なんですけど、僕はそもそも通信制の学校に問題点を感じていて…。ものすごい優秀な人だったら通信制でもなんの問題もないと思うんですが、そうではない人が初めから通信制を狙うのはどうかなと。

通信制の学校には、よくゲームとかアニメのクリエーターコースがあったりしますけど、この手の仕事って学校で習ったからといって、すぐに十分に食っていけるようにはならないですよね。プログラマーとしての仕事だって、今の待遇が3年後も同じかは微妙ですし。

例えば、アメリカでは2000年代にインターネットバブルがあって、プログラマーの給料が高騰しました。でも、その後はアメリカ人に高い給料を出すよりも安く発注できる海外に需要が移ったんです。なので、カリフォルニアでもプログラマーを辞めてスーパーのレジ係をしてる人とか普通にいます」

同様の現象は日本でも起こりつつあり、「学校で量産できるレベルのプログラミング知識って、海外の人や自動化に入れ替えられてしまう」というのが、ひろゆき氏が懸念する点だ。つまり、通信制高校の“ウリ”である「実社会で役に立つスキル」が、子供たちが大人になってからも通用するとは限らないのではないかというのだ。

さらに、「通信制だと実際に人と関わることを経験できない」ところも心配だという。

「普通の学校に通学してるとイヤな教師がいたり友達とケンカしたりするわけで、人間関係やコミュニケーションを自然と経験するわけです。これって意外と大事で、大した勉強をしてなくても人間関係を学ぶ意味で学校に行くのは選択肢としてアリだと思うんですよ。

で、ここで通信制の話に戻るんですが、『食っていけるような学問を習得してません』『資格もありません』『人間関係の経験も少ないです』って人が、卒業した後にどうなってしまうのか」(ひろゆき氏)

今の学校のあり方を問う存在になる?

ひろゆき氏が重視するのは、「人間関係の対策って経験によるものが大きい」という点だ。

「学校で量産できるレベルのスキル」であれば、より人件費の安い海外の人や、コンピューターやロボットによる自動化に置き換えられてしまう可能性がある。しかし、コミュニケーション能力に優れている人は、そう簡単に替えがきかない。だからこそ、若いうちに人と交わり、コミュニケーション能力を鍛えたほうがいいのではないかと主張。

一方、堀江氏はこの意見に「それはそうなんだけど」と同意しつつも、

「就きたい仕事によっては専門技術を学ぶことは必要だったりするよね。ゲームでもアニメでも、映画でも音楽でもなんでもいいんだけど、何かが好きすぎて勝手に知識とかスキルが上がり、気づいたら仕事にできるレベルになってたっていう働き方が理想じゃん。これからはそういう働き方が求められると思うし、そういった社会の過渡期的な形としてN高等学校があるんじゃない?

あと、N高校に期待してる点がもうひとつあって。いわゆる『浮きこぼれ』っていわれるんだけど、いつの時代にも教師の想像を超えるほど優秀な生徒がいるわけだよね。で、そういう人は、今の学校では教室の中でつまはじきにされてしまうし、彼らはプライドも高いから自殺してしまうことだってある。そういう人たちを救うための受け皿として期待してるわけ」

と、N高等学校が優秀であっても優秀でなくても、普通の学校教育に馴染めない人向けのセーフティネットになり得るのではないかと擁護する。

その背景には、堀江氏の今の学校教育に対する危機感があるという。ひろゆき氏も「古文や漢文とか。あれを何年も教えるくらいならプログラミングやったほうがためになる」と同意するように、もはや既存の学校教育が限界にきているのではないかというのだ。

「教師が教壇に立って授業を教える今のスタイルも変えたほうがいいかも。だって、リクルートがやってるネット予備校の『受験サプリ』とかで十分じゃない? 教師は授業についていけない生徒の指導補助員になればいい。そういう細かな対応は現場にいたほうがやりやすいから」(堀江氏)

いずれにせよ、いろいろな問題が指摘されている学校教育への新たな選択肢のひとつとして注目されるN高等学校。堀江氏も「きっとヘンなことだらけの今の学校のあり方を問う存在になるんじゃないかな」と期待を語っていた。

●この全文は『週刊プレイボーイ』46号でお読みいただけます!