モノマネに司会、役者etc.と大活躍する声優界の第一人者・山寺宏一さんが熱く語る!

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回のさとう宗幸さんからご紹介いただいた第12回ゲストは、声優の山寺宏一さん。

モノマネに司会、役者etc.と大活躍する声優界の第一人者だが、前回までは「イイ声って言われたこと、本当に1回もないです!」「ネットの評判とか打ちひしがれることがあるんです」「『ものまねバトル』でもう終わったなと思いました」…と意外すぎるお話が続々!

超多忙な中、2時間にわたって語り尽くしていただいた過去最高の第4弾、最終回は…。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―いや、トントン拍子できましたとご自分で仰ってましたが、やはり並みじゃない苦労をされての今というのがプロ意識とともに伝わります。

山寺 でもそれも楽しいっていうか、いい場を与えられてますから。「おはスタ」出て、三谷(幸喜)さんのドラマに出る前までは、どっか「声優以外の仕事がないのはチャンスが貰えてないだけ。うちは声優に強い事務所だから」って、それを言い訳にしてたりしてましたけど。そうやっていろんなとこでレギュラーで出させてもらったり、ドラマでスゴいいいポジションで出させてもらって、後は自分次第。見てる人は見てるわけで、繋がらないのは僕にね、本当に魅力がないんだって思えるから。

―ほんと謙虚すぎです(笑)。若かりし頃の先輩方とのエピソードも戒(いまし)めになってるんでしょうけど。

山寺 まあでも、最近、洋画の吹き替え少ないんじゃない?って、ずっとマネージャーのせいにしてたりですね、そこは矛盾してるんですけど(笑)。

―今や第一人者として、声優の人気であり、食っていける仕事としての裾野を切り拓いてこられたわけですから。功績としてはもはや歴史に残るものかと…。

山寺 どうなんですかね。なんか、そう思ってた時期もあったんですよ、「山寺さん、いろんなことできるよね」って言ってくれる人もいるんで。けど、後輩の声優でもスゴい人たちはやっぱりいて。世間のみんなが知らなくても、アニメファン、声優ファンの中でビジネスが成り立つくらい熱狂的な、アジア全体、世界にまでファンを持つような声優が増えてきてるんですよね。そこは僕には縁がないなって思ったりして(笑)。

―そういう意味では、今のいろいろある声優界の現状で山寺さんは肯定派のほうなんでしょうか?

山寺 うーん、肯定も否定もできないですけど。伸びてる部分とか活躍してる部分は否定はもちろんしないですし。ただ、同じ世代での価値観でしか判断できなくなっちゃうんじゃないかなとか、もっといろんな声優の楽しみ、深みってものを僕たちは先輩から学んだような気がして。芸だけとか、芝居だけじゃなくて何かね。

声優っていうのがよくわからなくなって、横の繋がりもなくなってる感じもあって。だからってそれに対して何も言うことはないんですけど。例えば、アニメ声優ってスターになりやすくて、今はライブでもイベントでもどんどん目立つ活動はできるけど、洋画の吹き替えでやってる人って世間的にはそれほどでもなかったりするので。そっちも評価してもらえたらいいのかなって。

この人の吹き替えで観てみようとなって、見る目も厳しくなったりしたほうがいいし。僕は両方どんどんやりたいので、そうなったらいいなって思いますね。

声優が傷つくし、観てる人も裏切ることになる

―最近、役者さんとかネームバリューもある方が吹き替えで起用されることが主流になり、それに関する山寺さんのコメントが取り沙汰されたこともありましたね。

山寺 はは(笑)。自分がナレーションやってる番組のホームページに1回だけ具体的な名前を出さずに書いたら、どんどん引っ張る人が出てきて。1年ぐらい前までありましたよね。7年前ぐらいのひと言がランキングに上がったりして、誰かが面白がって載せるんですよ。全然具体的に何ひとつ言ってないんですけど。

―それがひとり歩きしちゃってるような?

山寺 まあ、よく言ったって書いてあったんで、よかったのかなとも思うんですけど。僕は普段、声優の仕事をしないタレントさんとか俳優さんと作品を一緒にやることが結構多いから。知ってるつもりなんですよ、スゴさとか魅力も。

だから、その芝居を否定してるわけじゃなくて、その時1回だけ劇場版で花火打ち上げたいから、ずっとレギュラーでやってた人たちを急に変えるってのをね。変えられた人達も納得してないのかなってのがあって。そういうやり方だと、じゃあ何をもってよしとするの? 今まで観てた人達の気持ちは?っていう。声優が傷つくし、観てる人も裏切ることになるって思っただけで。有名な役者さん達を使うのが駄目とはひと言も言ってないんですよ。

―曲解されて、声優擁護にとられるのは本意じゃないと。

山寺 声優を使うんでも有名な人でも、合ってないキャスティングするのはよくないってのは誰もが思うことですから。もちろんネームバリューがそのまま宣伝効果に繋がることも重々わかってますし。

ボランティアとかチャリティやってるわけじゃない、趣味でやってるわけじゃなく、当然たくさんの人が観てくれる可能性があって、いいお芝居をする人をキャスティングするのがベストなわけで。バランスの問題だと思います。

―それでいくと逆に、声優の側もネームバリューに負けない、実力・個性を持って勝負に出て行かないとですね。

山寺 そうですねえ。だから例えば、ジョニー・デップは平田広明くんしか今やってないと思うんで、珍しいんですよ。大作の時にプロモーション側としては有名俳優を使ったっていいわけですよね、ものすごい超アイドル使ってもいいし。でもやっぱりそれは平田くんのがいいだろうって。

声優はそうなったら勝ちで、僕がやってた役を有名な人がやったとしたら、そこまででしかないんだなってことになると思うんですよ。そこで戦っていかなきゃいけない、そこに勝たなきゃいけないって。

1回きた役をまたフィックスされるような芝居で勝ち取っていくって、なかなかそれが難しくて。僕も最近全然ないので、やっぱり自分の個性が足りなかったんだろうし。そうやって認められなきゃいけないんだと思います。

こんな面白い仕事、飽きてる暇ない

―現状、そうやってビジネス的にもいろんな捉え方がある中で、声優を目指す若いコは後を絶たず…。ちょうど今年に入って山寺さんの盟友で戦友でもある大塚明夫さんが『声優魂』という著作を出されて反響を呼んでますよね。

山寺 そうですね(笑)。まあ明夫さんが言ってることも本当のことだと思いますけどもね。いろんな考え方はあると。

―声優は安直にやれるものではないぞと、生き方としての声優論といった感じで書かれてますが。

山寺 スゴいなと思いますけどね。「おい、山ちゃんのことも書いたから」って僕もすぐに本をもらって。なんか大げさに過大評価して褒(ほ)め過ぎですって言いましたけど。でもありがとうございますって。本当に長い間一緒にやらせてもらって、僕はあんな立派なことひとつも言えないんですけども。

―演じる深さ、伝えうる表現で俳優に劣るものではないというか、プロ根性はもちろん、本気でしかできない仕事なんだというのがテーマでしょうか。

山寺 そうしないと続かないんでしょうね。今、特に人がいっぱいいるし…。でもこの間、『エベレスト3D』っていう作品をやったんですけど、向こうは本当にネパールの山をね、もちろん頂上まで行かないにしろ、相当なところで過酷なロケをやってたわけですよ。

我々は都内の綺麗なスタジオで、空調効いてね、ロビーにコーヒーが用意してあったりするところで、ふわーっと喋って1日で終わるわけですよ。夕方には飲み行こうかーみたいな(笑)。そんなとこで、もちろんもらってるお金の桁(ケタ)もだいぶ違いますけど(笑)、現場で本当に苦しい思いをした役者さんと同じテンションで、我々はその人達が喋ったかのように日本語で伝えなきゃ、そういう環境でも出さなければいけないっていうね。

―本当そうですよね。そこでまた本気や声優自身の生き様も投影されるものかと。

山寺 だから、それはすぐにできることじゃないのかもしれないけど、でもそういうことなんですよ。我々ももっともっと頑張んなきゃいけないと思って。この違いたるや、そりゃもう向こうは命がけだよって。俺たちはそこの声だけでも命かけなきゃいけないんじゃないかと。ちょっとエアコン強めにして、寒さだけでも温度下げるかって話になったけど、でもそれは省エネに反するから止めとこうって(笑)。

―人生経験としては「ものまねバトル」での絶体絶命な心境など引き出しが活きたのでは?

山寺 究極の自分の極限状態ですよね(笑)。

―日々、血のにじむような苦痛、断崖絶壁にいる恐怖からにじみ出てくるものが。

山寺 だから、なんでも経験しておくのに本当に無駄はないっていうのはありますね。これだけいろんな役をやれる仕事はないと思うので、作品数も多いですし、役柄の幅が半端ないですから。『アンパンマン』でカビカビカビ~(←実際にかびるんるんの声で)ってやった後で、『マッドメン』って究極のスゴいカッコいい男やってますから。こんな面白い仕事ないですよ。飽きてる暇ないっていう(笑)。

―確かに、誰もカビカビの気持ちにはなれないですし(笑)。

山寺 いや、僕は気持ちになってやってますよ。バイキンマンに怒られて、カビ!、カビカビカビ~つってね(←再びかびるんるんの声で)。

俺、一番そこだけは書かれたくない…

―こんな生で聞かせていただいて、ほんと文章だけで見せるのが勿体ないです、ファン垂涎(すいえん)の(笑)。

山寺 いやいやいや。

―もう声優界では歴史上の人物になっているわけで。これからウィキペディアの書き込みがどんだけあと長く伸びるかっていう(笑)。

山寺 いや(笑)、歴史上の人物になるわけないじゃないですか! その分、他で悪口も書かれますからね(苦笑)。

ほんと、もういろいろ見るのやめよう、自信を持とうって…でもこの間なんか、誰かに山ちゃんのいいこと書いてあったって言われて、ぱっと見たらなんか“いつも同じ演技をする声優”代表とか書かれてたんですよね。さすがにそれはないだろう?って思って。

―「七色の声を持つ男」になんなんでしょうね?

山寺 いつも何やっても演技が同じな声優とか書かれてたんですよ。俺、一番そこだけは書かれたくないっていうか。あと、これといって代表作がない、器用貧乏とか…あ、それはそうだなって(苦笑)。まあいいんですけど。

―結局見てしまうと(笑)。でもそんなお忙しくて時間もないでしょうに…。

山寺 大して忙しくないんですよ。これは言っておきたいんですけど、基本的にですね、相当怠け者なんです。与えられるからやるんであって、仕事なかったらなんにもしてないですよ。

―仕事がない時は、さすがに今はもうパチンコ三昧(ざんまい)でもなく?

山寺 今はそう、なんにもしないです。なんにもできないから趣味もないんです。結局、仕事してるか、グダグダして家でTV観てるか。だからビックリされるのが、行ってらっしゃいって奥さんが仕事行って、夜帰ってきて、同じソファーに同じ形でいるっていう。本当によくそうやっていられるねって言われます。

―意外です。これだけ多芸だと、すごい趣味人でってイメージですが。

山寺 いや、そんなことないです。もう本当に駄目なんですけど、一生懸命なのは楽天の野球の応援と、地元愛だけは誰にも負けないつもりなんで、だから東北の支援活動もね。これといってスゴいことやってるって自慢できるものはないんですけどマメに行ってます。

本当に小ちゃいことしか全然できてないですけど、やっぱり宗さん(さとう宗幸)と一緒にやらせてもらっているので復興イベントへの出演依頼もきますし。宗さんのやり方がね、本当に地に足つけて、一歩、一歩こつこつとやりましょうっていうものなんで。

次回お友達は『おはスタ』でも共演した芸人の…

―いや、僕も同郷の人間として頭が下がります。今日もお忙しいところをこうやって受けていただいて、こんなに長時間お話いただけるとは。

山寺 いえいえ! 本当に編集長も仙台でね。『プレイボーイ』って聞いた時に「おっ」と思って。もう僕は本当に中学の頃から毎週買ってましたから。一番大好きな雑誌ですよ。『平凡パンチ』より断然『プレイボーイ』でしたね。

―そこまで言っていただけるとは(笑)。いや、本当にこういう御縁がまた面白いなと。“友達の輪”冥利に尽きます。

山寺 まあ最近はそんなにあれですけど、グラビアだけじゃなく、やっぱり中身がね、いろんなことを教えてくれますから。ちょっと背伸びしたい学生にとっては、どんだけお世話になったかっていう。なので、このお話もね、しかも宗さんからいただいたっていうので、それはスゴい嬉しかったんで。

―いや、ありがたいです。ということで、そのお友達なんですが。次に山寺さんにご紹介いただける方を…。

山寺 ちょっと面白そうな、どこに広がるかわかんないような人を選んで、流れを変えますか(笑)。南海ちゃんって呼んでるんですけど、山里(亮太)くんとか。「おはスタ」で何年か一緒だったんですけど、兄さん、兄さんって言ってくれて。声優業界ではそんな呼ばれることないから、ちょっと嬉しかったりね(笑)。声優も仲良い友達はすっごいいますけど、それは敢えて面白くないかなって。

―同じ山ちゃんと呼びたくなくてって、ウィキには書いてありましたが(笑)。南海キャンディーズがブレイクした当初、週プレで連載を持っていただいてたんで。それも巡り巡って繋がる感じです。

山寺 メールでいつもね、社交辞令じゃないですけど、ご飯食べようっていうのは本気で言ってるんですけど。最近はなかなか…。本当にまだ彼女いないのかって、聞きたいですよね。僕も紹介するつもりでいるんですよ。

―そうなんですか(笑)。ではそれをメッセージとして。

山寺 何人か候補はいるんです。でもどうかなあ、1回痩せてカッコよくなったと思ったら、また戻ってるし。相変わらず気持ち悪い感じは抜けてないんで(笑)。番組中にカンペをね、チラチラ見るあの目付きが邪悪な目で。怖いって言われてて。ほんと頭いいし、あんなに優しい男なのに(笑)。本当に紹介するからって伝えてください。

―承りました(笑)。いや、本当に今日は長時間にわたりありがとうございました!

●第13回は11月22日(日)配信予定! ゲストはお笑い芸人、南海キャンディーズの山里亮太さんです。

●山寺宏一(やまでらこういち)1961 年6月17日生まれ、宮城県出身。声優、俳優、タレント、ナレーターとして活躍。大学卒業後、1984年に俳協養成所に入所。85年にSFロボッ トアニメ『メガゾーン23』で声優デビューを果たす。吹き替えでは数多の有名俳優の声を担当、「七色の声を持つ男」と呼ばれるほどで、日本で最もディズ ニーのキャラクターの声を演じていることでも有名。また、テレビ東京の朝の子供向け番組『おはスタ』のメイン司会者に1997年から抜擢され、今年で19 年目に突入。2000年には、山寺の吹き替えのファンだったという三谷幸喜に声をかけられ、俳優デビューを果たすなどマルチな活動で人気を誇る。現在は日本テレビで放送中のドラマ『エンジェル・ハート』にホーリー役で出演中

(撮影/塔下智士)