アウンサンスーチー氏が政権を取ったら、民族対立になりかねない…

アウンサンスーチー氏率いる野党の国民民主連盟(NLD)は、ミャンマー総選挙において下院の改選議席の9割超を獲得。軍系与党、連邦団結発展党(USDP)も敗北を認めたーー。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

***

半世紀以上続いた軍事政権への反感が、アウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」への支持につながったようです。

一方で、NLDは政党としては未熟で人材も乏しいという見方もあります。晴れて政権を取っても、その運営手腕は未知数とか。迷走すれば、政情不安を招きかねません。

ミャンマーの民主化には、迫害を逃れて日本で暮らすロヒンギャ民族の人々も期待を寄せています。

彼らは軍政下で国籍を奪われた少数派のイスラム教徒。アウンサンスーチー氏がロヒンギャ迫害について沈黙していることに不満を募らせてもいます。背景には、NLDが国内多数派の仏教徒の支持を得なければならないという政治的事情があるようです。

今年の5月には、現政権が政府と対立関係にある複数の少数民族と停戦合意、和平への道を歩み始めました。その最中の政権交代は、ミャンマーの未来にどのような影響を及ぼすのか?

独立の父・アウンサン将軍の美しき娘は、民衆の軍部への不満を受けて民主化のアイコンとなり、長い自宅軟禁に耐えノーベル平和賞も受賞しましたが、彼女が政権をとったら、民主化の悲願はすぐに同床異夢の民族対立になりかねない。

そのカリスマは、軍事政権があったからこそひとつの夢であり得たという、皮肉な現実が露(あら)わになるのかもしれません。

●小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト