10月5日からテレビ東京系列にて放送開始された『おそ松さん』(番組ホームページより)

稀代の漫画家赤塚不二夫大先生の生誕80周年を迎えた今年――。

巷(ちまた)では赤塚不二夫流のバカを学ぶ「バカ田大学」が東大で期間限定開校されるなど記念すべき“赤塚イヤー”を祝う話題が各所で見受けられる。

…が、いま最もアツい赤塚不二夫ネタといえば現在、テレ東で絶賛放送中のアニメおそ松さん』(月曜深夜1時35分~)だろう。

■放送ギリギリ“アウト”の表現を連発

『おそ松さん』は赤塚不二夫原作のギャグマンガ『おそ松くん』から派生したアニメで、『おそ松くん』に登場していた松野家の6つ子(当時10歳)が成長し、20代前半になっても親のスネをかじりながら生活しているニートとなって再登場、そのハチャメチャな日常をつづるギャグアニメに仕上がっている。

今秋、アニメが始まる以前からも「一体、どんな内容になるのだろうか」とアニメファンの間でじわじわと話題になっていた同作。昭和時代のアニメをリメイクし、おまけに登場人物を成長させてしまっている時点で、放送前からその得体の知れなさは十分に漂っていたが…微妙すぎる予感は見事的中?

記念すべき第1話には、「昭和の雰囲気では売れない」とアニメ再放送を危惧した6つ子たちが超絶イケメンに大変身。『ラブライブ!』や『うたの☆プリンスさま♪』を始めとした大ヒットアニメのパロディーを連発、放送時のツイッターには「これはヒドイ!」の書き込みが連投された。

ちなみに、案の定といえば案の定だが、すでにこの第1話は製作委員会の判断によりDVD・ブルーレイに未収録となることが決定しているという。

騒動はこれで終わらず、こぼれ話集と題された第3話の「ほれいけDEKAPAN‐MAN」では、アンパンマンに扮したデカパンが登場。その場で踏ん張ったデカパンマンがパンツの中から茶色い「かりんとう」を取り出すシーンが問題となり、テレ東社長が「オリジナルへの失礼な行為だった」と説明する事態となった。

腐女子の方々から絶大な支持!

■6つ子のダメ男っぷりに陥落する腐女子たち

そんな完全“アウト”を連発しまくりの『おそ松さん』だが、驚いたことにBL(ボーイズラブ)を愛好する“腐女子”の方々からは絶大な支持を得ているという。

BLといえば少女漫画に出てくるような線の細いイケメンたちが愛を交わす、いわゆるアレだ。一体、「おそ松さん」、いや、あの6つ子の何が腐女子たちをアツくさせるのか…絶賛“6つ子沼”にハマっている女性に話を聞いてみた。

腐女子歴20年の松子さん(仮名)は、商業BLから『少年ジャンプ』の二次創作モノまで幅広くカバーするという生粋(きっすい)の腐女子。そんな彼女が「まさか腐女子人生において赤塚不二夫作品にハマるとは思わなかった」という。

「最初は『話題になっているから』という理由でなんとなくアニメを見ていたのですが、気づいたら6つ子のダメ男っぷりに陥落していました。みんなイイ歳した立派なオトナなのに、ハローワークに行っても女のコをたぶらかしたり、猫と戯(たわむ)れたり…まったく働く気がないんです。そんな同じ顔した6人のおバカたちを見ていると可愛すぎて可愛すぎて…あぁ、養いたい……」

もちろん、BL愛好家らしく、兄弟同士の濃厚な「絡み」も妄想している。松子さん、お気に入りの“推し松”は三男・チョロ松と末っ子・トド松のカップリング(組み合わせ)だそうだ。

「6つ子の中でも唯一、常識人なチョロ松が、世渡り上手で甘え上手なトド松に振り回されるのが萌えます」

ちなみに、松子さんは過去に立派な大学生の“ヒモ”彼氏がいた経験があるとのこと。庇護欲を駆り立てられる6つ子にハマる人は、三次元でもダメ男にハマっている人が少なからずいるのかも…。

「イヤミ受け」という異常事態

■まさかのイヤミ人気も!?

彼女らを虜(とりこ)にするのは6つ子たちに限った話ではない。『おそ松さん』には、他にも個性豊かなキャラクターが登場するが、都内大学に通う大学生の松江さん(仮名)は日本一有名な“おフランス”帰りの男・イヤミにハマってしまったという猛者だ。

「ダメなオッサンのくせに、6つ子の前では態度がデカい。そういうところが可愛いですよね」

そんな松江さん的にイヤミがBL的にどっちのタイプなのかというと「ド受け」だそう。「金のためならなんでもするという精神が受け以外の何物でもない」とのことだが…なるほど、わからん。

ちなみにこの「イヤミ受け」はなかなか人気のようで、Twitterの検索スペースで「イヤミ」と打ち込むと予測変換の一番上に「イヤミ 受け」という候補が上がってきたという異常事態――にそっとブラウザを閉じた。

「あと、あの驚いた時に使う『シェー!』っていうギャグですか? あれ、ついマネしちゃいます…あ、マネしちゃうザンス?」(松江さん)

なるほど。あの1960年代に一世を風靡(ふうび)した「シェー!」も今の現役女子大生はその存在すら知らず、まったく斬新な新時代のギャグとして受け入れられているらしい…それこそ「シェー!」である。

今回登場した松子さんや松江さんの他にも「浜松」や「高松」といった「○○松」という単語に異常に敏感になる腐女子もちらほら…。一般人からすれば、彼女らの“萌えどころ”はやはりイマイチ理解に苦しむところだが…。

悪評も含め大反響を巻き起こし、なんと年始の第2クール放映続行も発表された。そんな新しい『おそ松くん』の楽しみ方も、雲の上の赤塚不二夫先生なら「これでいいのだ!」と笑ってくれそうである。