様々な詐欺の手口に晒されるマイナンバーにご用心!

来年1月にスタートするマイナンバー制度。通知カードの配達が急ピッチで進む中、あちこちで事件が発生中!

手ぐすねを引く詐欺業界、修羅場真っ最中の郵便局員、早くも特需に沸く企業がある一方、騒動はこれからがますます本格化……。

■マイナンバー振り込め詐欺の実態

マイナンバー制度に便乗した詐欺犯罪が全国で多発している。警察庁によると、マイナンバー法が施行された10月5日以降、通報件数は33都道府県133件(11月24日現在)にもなるという。

その手口だが、マイナンバーの通知書が届いていない人の家を宅配便業者の格好で訪れ、「いつマイナンバーが届くのか知りたければ、5千円の料金で調べてあげる」という単純な「来訪型詐欺」もあれば、複数の人間が次々と登場し、嘘のストーリーを演じる中で金銭を巻き上げるという「劇場型詐欺」もある。まずはこの「劇場型詐欺」の典型的なケースを紹介しよう。

被害者は南関東在住の70代女性。ある日、行政関係者と名乗る人物から電話でニセのマイナンバーを教えられた。その直後、別の電話が…。

「ある公的機関に寄付をしたいが、マイナンバーがないので寄付できずにいる。あなたはマイナンバーをもらったと聞いている。寄付のためにマイナンバーを貸してくれないだろうか」

そう懇願する男性の声に根負けする形で、女性はマイナンバーを伝えてしまった。すると翌日、3本目の電話がかかってきた。寄付を受けた団体を名乗る男性はこう告げる。

「マイナンバーを他人に教えることは犯罪です。そのことを隠したければ、お金を振り込んでください」

不安に駆られた女性は結局、指定された口座に数回に分けて数百万円を振り込んでしまったという。国民生活センターの保足和之(ほあしかずゆき)主事がこう指摘する

「当初は行政を騙(かた)って戸別訪問し、マイナンバー漏洩(ろうえい)の対策が必要と脅して金品を騙(だま)し取るなど、割と単純な手口が主流でした。ところが最近はこのままではクレジットカードが作れないだの、ローンが組めないだの、果ては財産が差し押さえになるとか、詐欺の語り口がより巧妙、複雑になっています」

若者もあっさりと騙される電子マネー詐欺

マイナンバー詐欺に引っかかるのは高齢者ばかりではない。20代の若者もあっさりと騙されている。その例が、兵庫県高砂市で発生したスマホとプリペイド式電子マネーを駆使した詐欺だ。

事件発生は10月31日。高砂市在住の20代男性の携帯電話に「個人情報の不正流出に関するお知らせ」というタイトルのメールが着信した。

そこには男性のマイナンバーが流出しており、このままだと他人にクレジットカードを作られたり、住民票を移されたりして被害が発生するなどの注意が丁寧な文章でびっしりと書き込まれていた。またメールの最後には「個人情報の削除申請」ボタンがあった。事件を捜査した兵庫県警生活安全企画課の担当官が言う。

「個人情報の流出を止めたかった男性はためらうことなくボタンをクリックしました。そして表示されたページには、削除費用として5千円のプリペイド式電子マネーのギフト券を購入し、その番号を送信せよ、と書かれてあったそうです」

男性は指示通り、コンビニで電子マネーを購入し、ギフト券番号を送信した。この時点で詐欺犯は男性から5千円をせしめたわけだ。しかし、詐欺はそれで終わらなかった。兵庫県警担当官が続ける。

「男性は、その後も『削除システム実行手数料』といった名目で金品要求のメールが届くたびに電子マネーを送り、10日間で10回、総額49万5千円を騙し取られてしまいました。

この男性をばかにできませんよ。若者であれ、高齢者であれ、個人情報が流出したと脅かされて恐怖心を感じると、早く犯罪者と手を切りたい一心から、詐欺だとうすうすわかっていても騙されてしまうんです。電子マネーを利用した詐欺は振込口座や現金送付先の住所を用意する必要がなく、証拠が残らない分、詐欺犯の足がつきにくい。今後も同じ手口が発生する恐れは十分にあります」

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(取材・文/姜誠 興山英雄)

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