カードのグラフィックの美しさも魅力的なマジック:ザ・ギャザリング

遊戯王やポケモンなど30代半ば以降の男性なら多くが触れたことのあるトレーディングカードゲーム(以下、TCG)。

子供の頃を思い出す懐かしい遊びだ。しかし、そんなTCGの中でも今、30代をメインに盛り上がっているものがある。それがMagic:The Gathering(マジック:ザ・ギャザリング)』(以下、MTG)だ。

MTGとは、1993年にアメリカで発売された世界初のTCG。遊戯王のカードゲームのモデルになったことでも有名だ。世界70ヵ国、2千万人以上のプレイヤーがいるという。

日本語翻訳版が95年に販売されると、コアなゲームファンが目を付け、にわかに活気づいた。ただ、そうした世代が就職や結婚などで環境が変わって撤退し、一度はブームが終了。しかし、それが今またさらに盛況を博しているのだ。

「もう6~7年くらい上がり調子ですね。世界でもMTGは盛り上がっているんですけれど、日本の盛り上がりは特にスゴいんですよ!」

そう語るのは、自身もMTGプレイヤーであり、日本最大級300席のプレイスペースを誇る「晴れる屋トーナメントセンター」のオーナー・齋藤友晴氏だ。一体、なぜ国内人気が高いのか。

「今は様々なTCGがあるので、それを卒業してからMTGに辿(たど)り着く若いTCGファンが増えました。趣味としてメジャーになったんですね。それから30前後のプレイヤーは中学・高校時代にやっていた“復帰組”が、社会人になって再開し始めたのも大きいです」

MTGは2千~3千円でカジュアルに楽しむことはできるが、3千~1万円前後する高いカードもあり、大会で通用するようなデッキを作るのに万単位のお金が必要だ。また、他のTCGが全年齢対象で小学生もプレイできるのに対して、MTGはパックに「AGE+13」とわざわざ書かれるほどプレイも複雑。

しかし、大人になり金銭的にも余裕が出てきた第一次ブーム世代のプレイヤーがここに戻ってきたというのだ。

一度で3千人以上が参加する大会も

金曜夜や週末には300席が埋まる高田馬場の「晴れる屋トーナメントセンター」

そしてもうひとつ、大きな要因があると齋藤氏は言う。それが環境だ。

「もちろんインターネットの普及で情報も手に入れやすくなったのもあります。元々、昔からのプレイヤーの繋がりが強いんですが、そうした人がMTGの開発会社(注1)に入ったり、ショップを作ったりと、今ではショップ同士の繋がりでいろいろなイベントが開催できるようになりました」

注1…Wizards of the Coast(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)社(以下、ウィザーズ社)

特に都内や首都圏では大手ショップが、常にある程度の参加人数が確保できるイベントを開催。普段、一緒にプレイする友人がいなくても遊べるようになった。

「あとは大きな大会に参加しやすくなった、楽しみが増えたことですね。MTGには国内なら参加人数2千人規模のグランプリ(以下、GP)と呼ばれる大会があるんですが、それがウィザーズ社ではなく民間主催になって、サイドイベントや出店などが増えたんです」(齋藤氏)

MTGのGPとは世界各地で40回以上、国内では年3回(2016年は4回)開催されるプレミアムイベント。国内GPでは一時、500人程度しか集まらない時期もあったが、今年5月の「GP千葉15」では国内最多3500人以上が参加するまでになった。

賞金増額で100万円越え!

自身もプレイヤーとして活躍し、先日行なわれたGP神戸までリヨン(フランス)・北京(中国)・シアトル(アメリカ)など世界各国のGPを7連戦してきた齋藤友晴氏。99年からMTGを始め、現在までプレイヤーとして国際舞台で活躍。「晴れる屋トーナメントセンター」の店内には齋藤氏やチームメンバーがこれまで獲得したトロフィーがズラリと並ぶ

年々規模の大きくなるMTG。しかし、齋藤氏も「そんなことして大丈夫かな」と心配するほどの大きな出来事が来年に控えている。

「先ほど挙げたGPなどのプレミアムイベントでは成績に応じて賞金が出るんですが、来年からGPの個人優勝賞金が4千ドルから1万ドルに上がって、それがすごくアツいんです! 優勝で100万円という金額以外に総額も上がるので、賞金自体、手にしやすいんですよ」

MTGの大きな特徴といえば“賞金”の存在だ。一番大きな「プロツアー」では賞金総額2万5千ドル以上と、昔からその賞金だけで生活しているプレイヤーもいるという。

他のプレミアムイベントは招待制で参加条件は厳しいもののGPは参加自由。大都市のみでの開催だが、賞金が増えたため参加意欲も大きくなってさらに規模拡大するはずだ。プレイヤーの人数もより増える可能性を秘めている。

カジュアルに楽しむのもよし、ガチで賞金を目指すのもよし。MTGという単語を見て懐かしく感じた人は、復帰してみるのもいかがだろうか。

■“プロプレイヤー”も存在するというMTG! プロとはどんな存在なのか、明日配信予定の記事ではその秘密に迫る!

(取材・文・撮影/週プレNEWS編集部)