93歳での大往生した水木しげる先生。親交が深かかった伸坊さんだけに、まるで乗り移っ たかのような本人ぶり

長年にわたって、こっそりと発表されてきた南伸坊氏の秘伝〝本人術〟とは? 

発売中の『週刊プレイボーイ』51号で今年話題となった佐野デザイナーや早実・清宮くん、芥川賞作家・又吉などに扮し、その妙味を遺憾なく発揮している南氏に直撃、その知られざる秘密に迫ってみると…。

「『本人術』が生まれたのは1983年ですね。雑誌『ザ・シュガー』(サン出版)が創刊された時にイラストではなく『写真でふざけたページをやろう』ということになって、当時話題だったヨットスクールの戸塚宏氏やチェッカーズの藤井フミヤさんなどになったのが始まりです。

その後、その編集部に新入社員が入ってくるたびに『せっかく南さんにお願いするんだったら、もっとマトモなことをやらせたほうがいいんじゃないですか』という意見が出たようですが、社長が『このままでいいよ』と言い続けたので、ずっとやってきました」

―うまく似せるコツは?

「よく『女優の片桐はいりさんに似てるから、簡単にマネできるでしょ』と言われるんですけど、やってみると意外と似ない。本人術は顔の形が似てるからということでできるわけではないんです。面長の人をやっても似る時は似る。また、ホクロが特徴の人だからといって、ホクロを顔に描いても似ない。

それよりも目の表情だったりシワだったり、みんながあまり着目していないけど、実はその人を特徴づけているものを加えると似てくるみたいです。似顔絵を描く時に心がけるのは『無意識の特徴を探す』ということなんですが、本人術のコツも同じようなことかもしれません」

―今年の一年をふり返った今回の本人術の中で気に入っているのは?

「佐野研二郎さんは、みんなが『似てる』って言うのでやってみたけど、思ったより似てなかったかな。お気に入りはラグビー日本代表のリーチマイケルですね。まあ、リーチマイケルはヒゲと眉毛を描けば誰がやっても似るかもしれないけど、僕は似てるかどうかよりも、バカバカしいのが好きなので」

というわけで、先日亡くなった水木しげる先生も追悼し本人になりきっていただいたが、『週刊プレイボーイ』51号では、他にも2015年の話題に絡んだ人物を「顔マネ」しているのでご覧いただきたい!

●南伸坊(みなみ・しんぼう) 1947年生まれ、東京都出身。イラストレーター、コラムニスト、装丁家、編集者。主な著書に『歴史上の本人』(朝日文庫)、『本人の人々』(マガジンハウス)など

(取材・文/村上隆保 撮影/南 文子)