焚き火台を使った焚き火。都心では禁止という公共エリアがほとんどだが…

炎は美しくゆらめく。手をかざせば暖かい。芋を入れれば焼き芋ができるーー。焚き火はすばらしい。

子供の頃に誰もが一度は体験したことがあるだろう。大人になってからは遠ざかりがちだが、年末年始、ひょっとしたら初詣先の神社や田舎の野焼きなどで焚き火に接する機会があるかもしれない。

実は今、焚き火にひそかなブームがきている。先月発売された雑誌『ガルヴィ』(実業之日本社)は「LOVE焚き火」と題して、焚き火の魅力や焚き火料理に関する特集を組んだ。

また、2003年に発売された『焚き火大全』(創森社)も見逃せない。焚き火の歴史から種類、文芸に至るまでを網羅した351ページもの大著だ。さらに、芸能界でも渡哲也や松田龍平らが焚き火好きを公言している。

海外でも近年、ノルウェーの国営放送局「NRK」が焚き火の映像だけを淡々と12時間放送したところ、20%という高視聴率を記録したという。

このニュースを受けて、ニコ生では2013年からクリスマスイブに「薪が燃えている」という番組名で、文字通り薪が燃えているだけの映像を27時間生中継。「あったかい」「癒される」など、クリスマスに予定がない人々(?)から毎年数十万件のコメントが寄せられている。

その魅力を力説したところで、実際に焚き火をしてみた。

ただし、昔と違って現代は制約が多い。特に都心では、公園や河川敷での焚き火は基本的にNG。キャンプ場でも、直火は禁止というケースがほとんど。

首都圏で直火OKのキャンプ場は、「せせらぎキャンプ場」(埼玉・飯能)、「氷川キャンプ場」(東京・奥多摩)、「フォレストパーティー峰山」(千葉・君津)、「緑の休暇村青根キャンプ場」(神奈川・相模原)など、ごく一部だ。

しかし、「焚き火台」使用という条件なら、ほとんどのキャンプ場や公園併設のバーベキュー場で焚き火が楽しめる。

無言の時間がロマンチストにさせる?

取材班(アラフォー男ふたり組)も、アクセスしやすい都内のバーベキュー場付き公園へと向かった。

用意したのは、薪、着火具、着火剤、焚き火台、軍手、トング、水。まず、落ち葉を集めて焚き火台に敷く。その上に周辺で拾ってきた小枝を乗せて、さらに太い薪(たきぎ)を並べる。燃えやすいものから積んでいくのが鉄則だ。

いざ、着火。風が強い日だったため、すぐに炎は大きくなり、思わず声が漏れるほどの暖がやってくる。

落ち葉、薪、着火具、着火剤、焚き火台、軍手、トング。軍手や火バサミがあると、安全に炎を扱える。

空気の入りやすいよう空間をつくりつつ、落ち葉や小枝など一番燃えやすいものから積んでいく。火をつける時は一番下から。

しみじみと、「いいねえ」「美しいねえ」と言っている男ふたりを、公園で遊んでいる小学生が怪訝(けげん)そうな顔で遠巻きに見ている。いや、いいものはいいんだよ、まだ子供にはわからんかなー。

ちなみに、1/fと呼ばれる炎の揺らぎとパチパチと火が爆(は)ぜる音は、人間にある種の催眠・癒し効果をもたらすことが科学的にも証明されている。そうして、火を見るアラフォー男はロマンチストになるのだ。

その証拠に、しばしば無言の時間も訪れる。お互いに何を考えているのかはわからないが、スマホ全盛で情報量過多の時代に、たまにはこうした“やすらぎ”のひとときも必要なのかもしれない。

やがて、アルミホイルにくるんださつま芋を投げ込めば30分ほどで、おいしい焼き芋が完成する。また、通の食材としてはマシュマロをオススメしたい。数秒間焙(あぶ)るだけでふわっふわにとろける極上スイーツになるのだ。

火の粉が飛ぶのでナイロン製の上着は避ける、住宅などの近くではやらない、完全に消化し、ゴミを処分したうえで帰る、などの注意点に気を配りつつ、この年末年始は思う存分、焚き火を楽しみ、ロマンチストになってみてはいかがだろうか。

しばし、何も喋らなくても気にならない、豊かな時間が流れる。

 

(取材・文/石原たきび)