2015年1月から、太平洋クロマグロの漁獲に上限を設ける規制がスタートしている。
未成魚(0歳~2歳程度)の漁獲量を02~04年の年平均から半減させるという内容で、漁獲枠の7割に達すると水産庁から『注意報』が、9割5分を超過すると『操業自粛要請』が発令され、漁の継続ができなくなる。
だが、国際漁業資源に詳しい学習院大学教授の阪口功氏はこう話す。
「水産庁の規制は巻き網業者にゆるく、零細事業者が多い沿岸漁業者に過度に厳しい内容になっている」
規制により、沿岸漁業者が苦しんでいる現状は前編記事(「マグロ漁師が操業自粛で死活問題…」)でリポートしたが、“巻き網業者にゆるい規制”とは一体、どういうわけだろう。
クロマグロの一大漁場のひとつである長崎県沖は、水産庁による規制では漁獲枠1269tが課せられている九州西部ブロックに属するが、「今年1月からの漁獲量は159t(10月末日時点)と、漁獲枠に対して10分の1程度に落ち込んでいる」(阪口氏)のが現状だ。
長崎沖で操業する引き縄漁師がこう嘆く。
「今年は盛漁期だというのにマグロが1ヵ月間に1,2匹しか釣れない月もありました。規制に関係なく対馬、壱岐エリアの沿岸漁業の不漁は深刻な状況です」
なぜだろう。
「九州西部は0歳魚と1歳魚が集まる漁場ですが、ここ数年は曳(ひ)き縄を主体とする沿岸漁業は漁自体が成り立たないほどクロマグロの加入量が激減しています」――その最大の原因は「巻き網漁船による乱獲にある」と前出・阪口氏は指摘する。
「まず、巻き網漁は1隻で1日何十tものクロマグロの漁獲量があり、一本釣りや曳き縄とはケタが違います。そして日本の巻き網漁船がターゲットにするのは、長崎県沖に漁場が集中する未成魚(0歳~2歳程度)と、夏に日本海へ産卵に来るマグロ(産卵魚)です。
長崎県沖は幼魚がとどまる“太平洋マグロの保育園”であり、日本海や南西諸島で生まれたヨコワのうち、かなりの割合が長崎沖までやってきてそこで滞留して育ちます。国内の巻き網漁船はそこを狙ってクロマグロの幼魚を大量漁獲。生き残った群れは3歳になると日本海に遡上(そじょう)して産卵します。この産卵魚群を同じ巻き網船が集中的に漁獲し、境港(鳥取県)に水揚げします。
日本のクロマグロは幼魚と産卵魚群が巻き網漁船に一網打尽にされているということ。畜養向けの曳き縄の漁獲も無視できないが、資源への影響では日本の巻き網漁船が突出している。太平洋マグロが枯渇している最大の原因と言えます」
そのため、国内では巻き網漁船への抗議運動が過熱している。
今年6月には対馬沿岸で曳き縄漁業などの零細漁船100隻ほどが終結し、巻き網漁船の入港を実力で阻止した。さらに、対馬、壱岐の沿岸漁業者は自主的に産卵期のクロマグロの禁漁を宣言。産卵魚群の巻き網操業の規制を水産庁に訴え続けている。



































