マグロが女子たちをも熱狂させた!

「マグロに完敗でしたね…」

2015年の年の瀬も迫った12月28日の渋谷で、マグロが熱狂を生んだ。一体、なんの話かといえば、渋谷のクラブ・clubasiaで行なわれたイベント「マグロハウス」だ。

ますますわけがわからないだろう。なんせこれは史上初の試みとして行なわれた、「マグロの解体ショー」と「ハウスミュージック(以下、ハウス)」の融合イベントなのだ。

マグロの解体と音楽、なぜ合わせてしまったのか…。

「スシローのTVCMを観ていたら、新鮮な魚介のみずみずしさと、洗練されたハウスが合う気がしたんですよ。それがきっかけというか、思いつき(笑)」

と言うのは、主催者であるパーティークリエイター・アフロマンス。「泡フェス」や「Slide the City」などの体験型イベントを企画してきた人物だ。

「あとは最近のクラブシーンではEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)に押されて出番のないハウスを復権させたかったんですよ。自分も今日集まったDJもみんなハウスが好きだから、年末だし美味しいものを食べながらやろうって(笑)」

この「マグロハウス」は12月半ばに情報解禁されるや、数々のWEBメディアに紹介され、SNSで瞬(またた)く間に拡散。この日は500名が集まった。

イベントが始まったのは23時。マグロを心待ちにしていたのか、すでに多くの人が集まっていてイベントスタッフも驚いていた。

解体ショー前には(左から)ダンサーのCHIWA、マグロ人間(?)、ダンサー・MARI、Afromanceが登場

セクシーダンサー&“マグロ人間”登場で大熱狂

観客に大人気だったマグロ人間。後ろはちゃんと切り身の断面になっている

24時半頃にはダンサーと共に謎のゆるキャラ?“マグロ人間”も登場! フロアにいる、いわばマグロ待ち状態の人たちはマグロ人間に大興奮だ! セクシーなふたりのダンサーがいる中、出オチかと思いきやショータイム中、マグロ人間はずっと大人気だった。

そして、しばらく“普通”のクラブとして盛り上がっていると、この日のメインパフォーマンスを行なう居酒屋「たいこ茶屋」の面々が登場。イベントのVIPである彼らのメンバー(?)紹介では会場から大喝采が浴びせられる。

そして若旦那が本日のマグロを取り出すと、フロアのテンションは最高潮に! ハウスもかき消されるほどの歓声だ。

かつてこれほどの歓喜の声を聞いたマグロをいただろうか…。初競りなどで注目されることはあれど、普段は人目のない場所でおろされ、スーパーの店頭や居酒屋 のテーブルに並べられるマグロたちには想像もできないような煌(きら)びやかなステージにこの夜のマグロは舞い降りたのだ!

イベントスタッフのひとりはこう証言する。「まさか、ここまでとは思いませんでしたね。みんなマグロに近づこうとしてきて、解体台の前で抑えていた柵が僕の体にめり込んでたんですよ。ホントにツラかった…」。

いよいよマグロ解体スタート!

若旦那たちも準備を終え、ついに解体がスタート。長い包丁がマグロを突き刺し、切っていく様子を皆、静かに見守る。さっきまでとは打って変わり、聞こえるのはハウスとマグロの解説をする若旦那の声だけ。

若旦那が時折、「脂のノリはバッチリです!」「3枚目、どうだー!」と観客を煽(あお)るように叫びながらマグロを掲げると、フロア全体で「イェーイ!」とまた歓声。ここまでマグロにテンションが上がる人間を正直、初めて見た。

Afromanceは観客の興奮ぶりに「マグロがハリウッド俳優に思えた」という

幸せそうにマグロを咥(くわ)える女子たち

無事に解体された200人前・40kgのマグロは、観客たちの口へ。マグロを幸せそうに食べていた女性はこう感想を伝える。

「めっちゃ美味しいです! 目の前で見ていた時から美味しそうだと思ってたけど、ホント最高! このために千葉から来た甲斐(かい)がありました!」

この日来ていた観客23人(女性だけ)に「なぜ、来たのか」聞くと、皆、「マグロが食べたいから!」と嘘のように口を揃(そろ)えた。別に居酒屋でも食べられるのでは…と思っても「捌(さば)きたてですよ! 絶対美味しいと思ったんです」とこれまた同じような言葉ばかり。

彼女ら4割ほどは、クラブに来たこともなければ、どちらかというと避けていたそう。それでもマグロの魅力に敵(かな)わなかったのだ。

イベントを企画したはずのアフロマンスは「マグロ解体にDJ陣が負けちゃいましたね。すごかった。…僕もね、DJしながら『これは邪魔しちゃいけない』と思って少しボリューム下げちゃったんですよ。完敗です」と振り返る。

「やっぱり日本人はマグロが大好きなんですよ!(笑) でも、初めての人がいるのは嬉しいですね、1月8日に“マッチョ×もちつき×クラブ”の『マチョ餅ナイト』もやるんですが、それも期待したいです(笑)」(アフロマンス)

ちなみに非常にくだらないことを承知で、彼女ら全員に「マグロ女子ですか?」と質問すると「違う~!(笑)」「すごいから!(笑)」と笑顔で即否定。初対面で下ネタも許させるマグロに多謝!!

(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/鈴木昭寿)