「全日本スナック連盟」会長でもあり、ますます幅広い活躍で人気の浅草キッド・玉袋筋太郎さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、大鶴義丹さんからご紹介いただいた第15回ゲストは芸人の玉袋筋太郎さん。

水道橋博士と浅草キッドを結成し、長年、多才な活躍。また「全日本スナック連盟」会長でもあり、前回はさらに酒呑みの話がディープに展開。男の生き様論の様相を呈してきたがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―たけし軍団もそうでしょうけど、やっぱり奥さんとか家族を持ったっていうところでも当然、生き方は変わりますよね。

玉袋 あ~そうですね。貫多(※)は持ってないわけだし。ちょっとそれがね、なんて言うか…俺はカッコわりいっていうか。(※芥川賞作家、西村賢太氏の小説に登場する主人公)

でも、うちの師匠が出だした頃も「たけしはのたれ死にするべきだ。芸人だ、レイニーブルースだ」っていう風にね、勝手にたけし論を書かれることにすごい、殿も最初は嬉しかったらしいけど、やっぱそれから抗(あらが)いたくて。「冗談じゃねーよ」と。「のたれ死になんてしたくねー」つって、「俺が死ぬ時はこれだけ金貯めたんだ」つって死んでやるって。ひっくり返したんだよね。

―周囲の思い通りになんか、なってやるかと。

玉袋 うん。俺もなんかそういった部分で、結婚したの結構早かったりして、26だったりするんですけど。まぁなんか、人生のインフラ整備もしてねーでカッコつけてんのが、すげーカッコ悪いと思っちゃって。だから結婚して子供ができてっちゅーかね、うん。

そういう生活がしっかりしてねーヤツで、本当に転がってるような人にはなりたくなかったっていう。両方やってるほうがカッコいいじゃないですか。要するに、家族、人生のインフラ整備をしながらも変節しないで酒飲んで、姉ちゃんと遊んでっていう人生やってるほうがいいかなとね。

―そこで家族に収まってっていうんじゃなく、同じように遊んでバカもやるし。そういう魅力はありますよね。

玉袋 そうそう。なんかね、殿が言うところの振り幅なんですけど。まぁそれは本当に小せぇことでね、師匠に比べりゃあ。でもそっちのほうがいいんですよね。で、基本的に変わってないんです、昔から。ずーっとまんまです。成長してないっていう証拠なんだけど、本当ずっと変わってないですね、中身はね。誰も褒(ほ)めてくれねーけど(笑)、うん。

―でも良くも悪くも、僕も自分がよしと思える部分があるとしたら変わってないところかなと。ひとりっ子なもので、強がりつつ寂しがりも含めて(苦笑)。

玉袋 あ~、ねぇ。俺もやっぱ親父失ったりとか、そういうのも大きかったんじゃないですかね、結構ね。その満足できなかった部分がすごい、もうちょっと酒飲みたかったとかさ、そこは全然充足してない。無念しか残ってないんで。「バッカヤロー、先行っちまって」ってところがあるのかな。

でも、みんなそんなもんなんですよね。どんな家庭だって、そ~んな全てが万事、幸せな家庭なんかないです。いろいろあるわけだし、と思えばね、うん。だからそのいろいろ経験さしてもらうとわかってきますしね。落としどころというか、身の丈を知らせてもらうっていうか。まだまだそんな俺なんかもね、まだまだ青いっすけどね。

「昔、白馬に乗ってた王子様なんだよ」

―でも、これだけ公私ともいろんな人に会われて。経験ということでは周りに大勢サンプルがいて、だいぶ多様な人生を味わってるような感じかと思いますが。その中で、もちろん師匠は一番でしょうけど、こんな生き様、影響を及ぼしてっていう人は他にも?

玉袋 これはね、もちろん殿はNo.1なんですけど、結構、俺、業界の友達少ないんですよね。だから行ってるサウナのオヤジとか、建築屋のオヤジとか。その中でも八百屋のオヤジいるんですけど、すげー仲良くて。その人の生き方とか見てると本当カッコいいなって思いますよね。

―また市井(しせい)のというか…普通にそこらに何気なく人生の達人が?

玉袋 うん、そのおじさんってのが青空八百屋なんですよ。ハイエースにバンバンって積んで、決まったところにお店広げて売ってるんだけど。それが俺の前住んでたマンションの駐車場でやってたの。で、5年ぐらい住んでたんだけど、最初の3年間は口もきいてなかったの。でも、かみさんがそこで買ってたから「あのおじさん面白いのよ」「何言ってんだバカヤロー」なんつって。

3年過ぎて、ある時、俺、釣りが好きで、釣りやって帰ってきたら、おじさんが「釣りやんだ!」「やるよ、なんか悪いの?」「いや、俺も昔やってたから」「え、そうなんだ」ってとこからこう、お付き合いが始まるようになって。どうせ釣りやるって言っても大したことねーだろうなとか思ったら、もう名人級でさ。1ヵ月に10日間は伊豆に通ってたっていう。それをね、何気に「俺もちょっとやってたんだよ」っていう話が面白くて、ひけらかさねーし。あ、このおじさん、スゲーわって。

―会話のやり取りが絶妙だったり、ウマも合ったんですね。

玉袋 そのおじちゃんもさ、やっぱ昔、遊び人だったんだな~っていう、片鱗(へんりん)がなんかこう言葉に出てくるわけよ。でもまだそんな親しくねーから、面と向かって過去の遊んでた話とかしねーんだけど。ある時、「玉ちゃん、なんかペットとか飼ってるの?」って。「いや、別に」「俺、なまず飼ってる」「え、なまず? 買ってくるの?」「いや違う、獲ってくるんだよ」「え? なまず獲りに行くの?」「俺、そういうの嫌いじゃねーからさ、じゃ今度連れてってやるよ」って。

で、連れてってもらったの、日曜日。そうしたらさ、ばかばか獲れるわけよ。それで車の中でふたりきりでさ、なんとなくポツポツ話をしてくれるわけ、何やってたとかさ。野菜買いに来るおばちゃん相手に「僕は昔、白馬に乗ってた王子様なんだよ」なんつって、「何言ってるのおじちゃんが~!」とか言ってるの俺も聞いててね、「あれよく言ってるけどよ」って聞いたら、「じゃあダッシュボード開けてみろ」と。本当に白馬にまたがってるさ、若けー頃の乗馬やってるおじちゃんの写真が。「な、やってるだろ? 乗馬やってたんだよ」「すげー! やってるわ!」って。

―それ、意外性という意味でも惹かれる感じですねー。

玉袋 ポツポツそういう話をね、いろんな遊び行くと話してくれるんですよ。「俺、40まで何もしてなかった、遊んでた」と。で、40過ぎて手に職っつーかね、仕事そろそろ就こうかなと思って、釣りやるから魚屋やろうかな、冬は水が冷てーからやだな。八百屋だったらいいかって、市場に潜り込んで。で、そこの親方と友達になっちゃって、ハイエースもらったわけ。そっからですよね。

じゃあその40まで何やってたんだよって聞いたら「まぁいろいろやってたなぁ。20代の頃は新宿の個室ヌードってあったんだ、昔」「あったあった!」「あそこのよ、女の入れ方やっててよ、5~6人集めて」「すげー! あとは?」「とにかく山手線一周、働いたことない場所はねー」みたいな。

「ものすげ~の、思いっきり龍の入れ墨が」

―へ~。どんどん出てきますね、そこから…。

玉袋 一番よくやってたのは、池袋のバーで「結構やってた、雇われ支配人みたいなの」「あとは?」「あれだ、大人のおもちゃ屋もやってたんだ」「本当に~?」って。そういうの誰もね、買い物来てるおばちゃんたちは知らないんだよ。それを俺だけに教えてくれるわけ。そ~のおじちゃんが最高で。

その関係がすごいよくて、今でもほんと親友でさ。でも、それだけ遊んでもおじちゃんの名前も何も知らないんだけどね。俺も聞かねーし、うん。どこ住んでるとかも知らないの。

―え、そうなんですか!? メルアドも知らないしみたいな?

玉袋 ま、電話番号だけね。「今度の日曜日遊びに行こうよ」って。

―でも、ナマズ獲ったりして、お酒飲んだりもしてるんですよね。

玉袋 酒は飲まない。運転して連れて行ってくれるだけなんだよ。で、俺にはビール飲めって言ってさ。炎天下で飲ませてくれたりとか。

―それこそ、今度スナック一緒に行きましょうよって会話とかは?

玉袋 スナックはね、お客さんにママさんがいるんで、そのお店には行ったことあるけどね。最初、おじちゃんとふたりで行ったんだけど、「前はよ、大工のくまさんっていう人がいて」「くまさん? 落語じゃねーんだから」「そのくまさんっていうのが、本当に落語に出てくる奴みてーでよ」つって。

一升瓶持ったら離さない人で、死んじゃったらしいんだよ。で、もうひとり鳶(とび)の頭(かしら)っていうのがいるんだけど、「現場で電ノコが頭落っこちてきちゃって、今入院してるんだ」って。で、その人が復活してきて、今度3人で行くようになったんですよ。その頭っていうのがまた面白くて、生きてりゃ81歳、82歳かな? その人も優しい人なのよ。

その頭が作るつけ麺のタレがあって、それがうめーの。どんなつけ麺よりウマい! それで俺と頭は酒飲んで。おじちゃんは全然飲まねーんだけど、くさや焼いたりさ。でも何もキャンプの道具とか持って行かないんだよ。普通そういうのって、コールマンとか揃えるじゃん。普通のカセットコンロ持って行ってさ、風防でブロッコリー入ってたダンボールで囲って火つけて。チェアもなんにもないんだよ、地べたが椅子だから。

最初はね、面食らったけどそうなったら楽でさ。キャンプ場なんか行かなくたって、金払わなくたって楽しいことはいくらでもあるんだってこと教えてくれて。で、また鳶の頭も面白くてね。普段もう、ヨレヨレのおじいちゃんなんだよ。だけど、家に行ってさ、夏場遊びに。「頭~飲みに来たよ」って。「おぅ」って出てくるの、裸で。

「おぅ玉ちゃん、来いよ」って、ふっと振り向いて背中見たら、ものすげ~の、思いっきり龍の入れ墨がぶわーって。「うおー、カッケ~頭ーー!」みたいな。

「下ネタも大好き。おま●ことか普通に言うしね」

―それ映画じゃないですか(笑)。どんどんエピソードが止まりませんね。

玉袋 『龍三と七人の子分』だね。カッコいいのよ。そういう人達とね、遊んでるとすごい。

八百屋のおじちゃんのカッコよさは、若い衆もさ、面白いからってみんな連れてってくれるんだけど。飲みてぇのに自分は飲まないんだよ。それで、道具とか鍋とか全部用意してくれるわけですよ。ほいで、終わったらみんなで無言で片付けるんだけど、その時に、俺はやってもらうんじゃなくてやる、やってやるんじゃなくてやるって、思ったよね。

人間っていうのはつい貸し借りになるじゃないですか。俺がやってやったのにとかさ。そういう風にならないで、やってもらうんじゃなくて自分でやって、やってやるんじゃなくて自分らでやるっていうのを学んだんですよ。

―そういうカッコいい市井の人がちゃんといるのはいいですね。

玉袋 いる。やっぱね、普通のおじさんとかのほうがいい。業界なんかの人間と遊んでるとね、チューニングがブレっぱなしになるんだ。

―いや結構、意外でした。業界でも人一倍、人脈があって、飲みに行って遊んでっていうのかと思ったらちょっと違うんですね。

玉袋 違うんですよ。そっちのほうが全然面白い。ペンキ屋のオヤジとかさ、元東芝のエリートサラリーマンだった年金暮らしのおじさんとか。そういった人の話のほうが飲んでても楽しいし。

―そこでオンとオフの切り替えもできて? 当然、仕事の現場でいくらでも業界の変な人とかエピソードや面白ネタはいっぱいあるでしょうけど、それがプライベートまでごっちゃになると…。

玉袋 そうなんですよ。だから俺、八百屋のおじちゃんと遊びに行くために仕事してるんだもん。そのために生きてるって言っても過言じゃない。

―そこまで!

玉袋 それぐらい好き! 大好き! もう生き方の達人ですよ、遊んでるしさ。

―次のお友達に紹介してもらいたいくらいですね(笑)。八百屋のおじちゃん出てきちゃった、みたいな(笑)。

玉袋 俺、本当にそういう番組やりてーなと思ってるもん。普通のおじさんとトーク番組。だって、たくさんいるよ、笑っちゃうようなさ。下ネタも大好きだしね。全然、感覚が業界の言語関係ねーから、おま●ことか普通に言うしね。

「行間を読めってことですね(笑)」

―ははは(笑)。まぁこれだけ素人がいっぱい出てくる時代になって、そっちのほうが面白いっていう。そこで普通に隠れてるオヤジをもっと発掘していくような…。

玉袋 いるいる。またそれが気持ちいいの! 言えないんだから、こっちは放送の中では。それを平気で言ってるところが素敵でさ。

―でもさすがに地上波向きじゃないから、これから有料コンテンツのね、ペイパービューなんかでやれたら面白いかもですね。…ところで、それこそ水道橋博士ともオンとオフでプライベートは全く別ですか?

玉袋 に、なっちゃいましたね。前はだってずーっと一緒じゃないですか。同じマンションにも住んでたし、車もふたりで1台だったし。月水金は俺、火木土が博士とかでさ、日曜日はじゃんけん勝ったほうとか。そういう生活してたんですけどね。

―僕のイメージとしては、当初の藤子不二雄コンビみたいな。著作なんかは作品ごとに合体したり、それぞれが担当して書き分けてたりという感じなのかなと…。

玉袋 はいはいはいはい。まぁどうなんだろうな、もちろんそういう浅草キッド像っていうのをふたりで作っていったっていうのはあったと思うんですけど、うん。これがねぇ、う~んどうなんだろうなぁ。俺はもうさっき言った通り、変わってないんですよ。俺は変わらないんですよ、うん。…ていうことですよ(苦笑)。

―わかりました、それ以上は(笑)。

玉袋 えぇ、行間を読めってことですね(笑)。まぁ詰めすぎると袋小路に入って行くっていうこともありますからね。まぁわかんないですけど、プロとしての姿勢はね、正しいわけですよ、そこは。繋がってるのは、繋がってますしね。やっぱフランス座の修行時代とか一緒に飯食ってるわけだから。うん、そういうことです。

●この続きは次週、1月17日(日)12時に配信予定!

●玉袋筋太郎1967年6月22日生まれ、東京都出身。1986年にビートたけしに弟子入りし、翌年お笑いコンビ浅草キッドを結成。90年にテレビ朝日『飛び出せ笑い のニュースター』に出場し、10週連続で勝ち抜き、5代目チャンピオンに輝く。自ら立ち上げた一般社団法人「全日本スナック連盟」会長でもあり、スナック という地域の社交場に玉袋が突撃訪問する『玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ・リターンズ』がJ:COMテレビにて放映中。また店長となり、スナックの選び 方、楽しみ方を教わりながら一緒にお酒を酌み交わす「スナック玉ちゃん」も隔月で開催。現在、TBSラジオ『たまむすび』、TOKYO MX『人生酒場~ 唄は夜につれママにつれ~』『バラいろダンディ』などにレギュラー出演中

(撮影/塔下智士)