軽減税率を導入するのは無駄が多い!?

昨年末、2017年の4月から導入される軽減税率の適用範囲が決まった。特に議論を呼んだのが、「食品」の適用範囲をどこまでにするかという問題と、「新聞」を軽減税率の対象にするかどうかという問題だ。

例えば、「食品」では「加工食品」や「外食」を含むかどうかが議論になっていた。最終的には、加工品には適用されて、酒類と外食は範囲外という結果に収まったが、これが現場の混乱を生みそうなのだ。

理由は「外食」の扱いが難しいから。コンビニの弁当を店内で食べたら10%で、持ち帰ったら8%の課税という制度になっている。一体、何が違うというのか?

『週刊プレイボーイ』本誌で対談コラム「帰ってきた!なんかヘンだよね」を連載中の“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏も、こうした複雑な適用範囲が決まった軽減税率に懐疑的だという。堀江氏が言う。

「ヨーロッパの国々でも軽減税率はやってるけど、そもそも消費税が20%とかだから日本とはちょっと事情が違うんだよ。2%の税率の差のために導入するのは得策とはいえない。それに軽減税率導入のために国はシステムを変えたりして、無駄なコストがかかるから意味がないんだよね」

しかし多くの国民は「軽減税率=お得」と思っている可能性も高い。そこをひろゆき氏が指摘すると、

「普段食べてる食品の価格なんてたかが知れてるでしょ。2%っていったら、150円の商品が162円(消費税8%の場合)になるか165円(消費税10%の場合)になるかの違いだよ。ひと月の食費が3万円だったとしても、その差は600円。これって無駄なコストをかけてまでこだわる差なのかね?」

と堀江氏は答える。それにはひろゆき氏も、

「税率が8%と10%の2種類になるとシステムが複雑になるので、その分、財務省など国の機関での経費が増える。しかも、それは税金で賄われる。結果的に国民としては損してしまいますよね」

と「軽減税率=お得」という印象が間違っていると同意した。

政府を批判するような強気な報道ができにくくなる?

一方、「新聞」にも軽減税率が適用されることについては、「このことで新聞は『御用メディア』って批判されていますよね。確かに、これで新聞社は政府に借りをつくったわけですから、今後、政府を批判するような強気な報道はできにくくなります」とひろゆき氏は言う。

ただ、新聞社にとって増税は読者の減少が予測される死活問題。実は堀江氏のメルマガも前回の増税時に「読者が1割くらい減った」という。全国紙であれば、増税による影響はさらに大きくなるだろう。

しかし、これは単に“増税によって価格が上がるから”読者が減るというわけではない。「金額が変わると再契約が必要になるし、金額が高くなっていれば明細を見たときに目立つから、そこでやめちゃう可能性がある」と堀江氏も指摘するように、増税が“新聞購読という習慣を見直す”機会になってしまうから、というわけだ。

まったく同じ理由で、「新聞」だけでなく、定期購読系の商品全般には試練の時が予想される。しかし「紙の新聞は軽減税率が適用されるのに、メルマガは違うってのは不公平」(堀江氏)ではないのか?

この疑問に対してひろゆき氏は、「ヘンな話ですけど、それは御用メディアにならなかった罰なんでしょうね…」と語る。

そもそも「新聞」だけでなく、スポーツジムなど月額会員や定期購読のビジネスは、契約や入会したことを忘れている“幽霊会員”の存在が利益の源泉になる。しかし増税されると幽霊会員がかなりやめてしまうため、新聞業界は必死にロビー活動をしたと推測。

とはいえ、「ロビー活動をしないと生き残れないってことは、普通に考えて新聞社の終わりは時間の問題」(ひろゆき氏)とも考えられる。軽減税率を取引の材料にとられた“御用メディア”として公平な報道もしづらくなるので、結果的に自分たちの首を締めることに…。

「ってことで、軽減税率の話題をまとめると、『今の日本の消費税率で軽減税率を導入するのは無駄が多いのでヘン』。んで、『そんなヘンな仕組みを批判せず、むしろ自分たちの保身に使った新聞もヘン』ということになりますね」(ひろゆき氏)

「だからこそ、安倍首相には公明党とかロビー活動、それに参院選などを気にせずに消費税を一律10%で押し通してほしかったね」(堀江氏)

●この全文は『週刊プレイボーイ』3・4合併号(1月4日発売)でお読みいただけます!

(イラスト/西アズナブル)