柿谷(C大阪)にとっていいお手本になるのが宇佐美(G大阪)だ

連日、移籍の発表がされるなど、Jリーグのストーブリーグが活発に動いている。

もっとも、今オフも「新チームを早く見たい」と思う大型補強や、あっと驚く大物外国人の来日はなさそう。例年、ライバルチームからの引き抜きでマスコミをにぎわす浦和にしても、U-23日本代表主将のMF遠藤、スロベニア代表のDFイリッチらを獲得したくらい。今オフはおとなしめだ。

以前から言っているけど、昨今のJリーグの移籍は“回転ずし”という印象。それなりに動きはあっても、流れているネタ(選手)は代わり映えせず、それをどこのクラブが獲るかだけになっている。新鮮味がない。

特に外国人選手の補強に関して、その傾向が顕著だ。例えば今オフも、昨季王者の広島が清水からFWウタカを、2位のG大阪が横浜F・マからFWアデミウソンを獲得するなど、各選手がグルグルとチームを回っている状況だ。もちろん、クラブ側にとっての「リスクが少なく、計算が立つ」というメリットは理解できる。

でも、Jリーグのブランド価値の向上、アジアチャンピオンズリーグでの覇権奪回ということを考えると、もっと野心的なクラブが出てこないとジリ貧になってしまう。リーグ全体が抱える今後の課題といえるだろう。

そんな中で個人的に注目している選手は、スイスのバーゼルから古巣のC大阪(J2)に出戻ったFW柿谷だ。かつてはアイドル的な人気を誇り、日本代表でも活躍を期待された選手。ところが、約1年半前に移籍したバーゼルでは鳴かず飛ばず。昨季は14試合出場3得点、今季は4試合出場1得点で、出場機会は減る一方だった。

柿谷の日本復帰は妥当な判断

サッカー選手は試合に出てなんぼ。試合に出ない状態が続けば、どんなに才能のある選手でも、あっという間にさびついてしまう。練習だけでレベルが上がるなんてことはない。だから、このタイミングでの日本復帰は妥当な判断。柿谷自身も何も恥じることはない。今、C大阪は彼の力を必要としているんだし、ゼロから再スタートを切ればいい。それだけの話だ。

そういう意味で、柿谷にとっていいお手本になるのが宇佐美(G大阪)だ。彼もまた、2011年に渡ったドイツで思うような結果を残せず、13年に当時J2のG大阪に復帰。すると、すぐにゴールを量産してJ1復帰の立役者となった。その後の活躍は言うまでもない。昨年は日本代表デビューを果たし、今では再度の海外移籍も取り沙汰されている。

柿谷はもう26歳。ラストチャンスという気持ちで頑張って、再びJリーグを盛り上げる選手になってほしい。みんなもう忘れているかもしれないけど、一昨年のブラジルW杯の前までは、宇佐美よりも柿谷のほうが評価は上だったわけだし、個人的にもそれくらいの力は十分あると思う。

ひとつ気がかりがあるとすれば、ここ数年のC大阪のフロントの迷走ぶり。そこは宇佐美が戻ったG大阪とは大きく異なるところ。補強にしても、監督選びにしても、お金をかけているけどまるで一貫性がない。だから結果が出ず、チーム内外から次々と雑音も出てくる。また、チームを指揮する大熊監督が、若いヤンチャな選手が多いチームを仕切れるかどうかにも不安が残る。チーム状況が悪ければ、どんな選手でも活躍するのは難しいわけで、そこは心配だね。

(構成/渡辺達也)