(左から)PANTA、齋藤優里彩、齋藤乃愛、井上淳一監督。乃愛は「ひとりでも発信することによって何かは変わると伝えたい」と原発問題に言及した

東日本大震災から、もうすぐ5年が経とうとしているが、未だ苦しむ人々は数知れず。そんな現状に若き少女たちは何を思うのか。

19日、福島瑞穂議員からの許可を受け、参議院議員会館で映画『大地を受け継ぐ』の特別試写会が行なわれた。震災後、福島の農家が味わった非情な現実が明らかにされるドキュメンタリー作品だ。実際に福島で農業を営む樽川和也氏の口からその苦悩が語られる。

上映後のトークショーには井上淳一監督の他、「制服向上委員会」齋藤優里彩齋藤乃愛(のあ)、そして彼女らの曲の多くを手掛けるPANTA(頭脳警察)が登壇した。

「制服向上委員会」といえば、昨年行なわれた護憲団体のイベントで自民党批判を含んだ楽曲を披露し、話題となったアイドル。1992年に結成され、当初から反戦・反核を訴えていたが、東日本大震災を機に脱原発や憲法9条に関して歌う社会派アイドルグループとなった。

この日、映画を観た優里彩は「改めて原発っていらないなっていう風に強く感じました」と感想を述べ、まだ中学3年生の乃愛も「日本ではこういう恐ろしいことが現実に起きているんだ、と改めて感じた」と脱原発の思いを訴えた。

ただ、こうした社会的・政治的メッセージを伝えることで、活動が制限されているよう。井上監督から「楽屋で聞いたけど、イオンのレコード店でキャンペーンができなくなったとか」と振られると優里彩は

「本当にそうなんですよ。私たちがお招きいただいて現場に行くと『脱原発の歌は歌わないでください』だったり『政治的な主張の強い曲は控えてください』っておっしゃる主催者の方もいらっしゃいますよね」

と彼女らが目の当たりにした厳しい現実を漏らした。さらに批判も多く受けているが、その内容が気になるという。

「『原発はあってもいい』という意見だったら、この原発問題について改めて思考するきっかけになるので、ありがたく受け取るんですけど、『アイドルはミニスカートでかわいい恋愛の曲を歌ってればいいんだ』とか、そういう固定概念や『子供は主張の強いものは控えたほうがいいよ』とか、子供だからどうせって意見が多いんです」(優里彩)

そして、海外では多くのアーティストが政治的主張などをしていることと比較し、「批判の内容が日本と海外ではまるで違うので、そこを根本的に変えないといけないと感じています」と強い思いを明かした。

もっと国民が知るべきことはたくさんあるのに…

また、井上監督は前日に行なわれたSMAPの謝罪会見に触れ、「芸能タブーに触れられないマスコミが国家権力を監視できるわけがない」と主張すると、会見を見ていなかったふたりは、その詳細や内幕はわからないとした上で、

「もっと考えるべきことはあるんじゃないかなと、ただ思いは強くなりました」(優里彩)

「こうやって映画にされていたこととか、他にもっと国民が知るべきことはたくさんあるのに、そういうことをそこまで報道するのはなんでかなと思いました」(乃愛)

とマスコミの報道に苦言を呈した。

映画『大地を受け継ぐ』は2月6日よりフォーラム福島で1週間限定の先行上映が行なわれ、2月20日よりポレポレ東中野ほかで公開される。