米軍基地の経済メリットはないという古賀氏

沖縄県宜野湾市の市長選挙が24日、開票され自民党と公明党が推薦する現職の佐喜真氏が再選した。

安倍政権は補助金を餌に辺野古基地移転を進めているが、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏はそこに沖縄を無視した本当の狙いがあるという。

***前回のコラムで、「宜野湾(ぎのわん)から沖縄の未来を考える―基地・経済・地方自治―」というシンポジウムで講演をするため、故・菅原文太さんのネクタイをつけて沖縄に出かけたことを書いた。

そのシンポジウムに参加して、ついにここまできたか、とあらためて驚かされた。

シンポジウムには沖縄を代表する企業人がパネリストとして登壇していた。建設業、小売業、リゾート業など多岐にわたる分野で沖縄経済を支えている「金秀(かねひで)グループ」の呉屋守將(ごやもりまさ)会長と、沖縄で大規模リゾートを営む地元発の企業グループ「かりゆし」の當山智士(とうやまさとし)社長だ。このふたりの発言が沖縄の基地返還の運動が新たな段階に入ったことを印象づけた。

これまで沖縄の経済は米軍基地が落とすお金、いわゆる基地経済に支えられて成り立っていると説明されてきた。ところが、呉屋会長は「経済的に基地がなくても沖縄は大丈夫」と、きっぱり否定したのだ。當山社長に至っては、「基地こそ、沖縄経済の阻害要因。基地がなければ県民生活は大きく変わり、産業としての観光も飛躍的に伸びる」と言い切った。

確かに、沖縄では米軍施設跡地に次々と大きな商業施設やマンションなどが建設され、新たな需要や雇用が生まれている。

例えば、北谷町美浜(ちゃたんちょうみはま)地区のハンビー飛行場跡地にある商業施設「ハンビータウン」は約2千億円の経済効果を生んでいるし、昨年4月に北中城村(きたなかぐすくそん)の米軍施設跡地にできた巨大ショッピングモール「イオンモール沖縄ライカム」もオープン初日に11万人が押し寄せるなど連日、大盛況だ。

安倍政権が掲げる振興策は本土人のためのもの

米軍基地の多くは好立地にある。それを県民が自らの意志と選択で利用できるようになれば、町づくりの青写真を自由に描くことができるし、経済活動も盛んになる。そのことは以前からいわれていたが、一般人から見れば、「そうだったら嬉しいけど本当に大丈夫だろうか」と半信半疑だった。しかし、経済界の大御所が公の場で宣言したとなれば、多くの沖縄の人々が自信を持つはずだ。

一方、安倍政権は辺野古基地建設を認めれば、多額の補助金を出すと、基地問題と経済振興をリンクさせようと動いている。普天間基地の跡地にディズニーランド施設を誘致するなどの話はその典型だ。振興策というアメをちらつかせることで、辺野古基地建設を沖縄県民に認めさせようと画策している。

だが、繰り返すが、沖縄の人々は基地がないほうが経済発展するという事実に気づきつつある。なら、安倍政権がぶち上げている振興策は誰に何をアピールしようとしているのか?

私は、本当の狙いは“本土人の意識”にあると考えている。「振興策=金さえ出せば、基地受け入れに賛成する沖縄県民も少なくない」というイメージを植えつけ、「政府が沖縄に一方的に無理な要求を押しつけているわけではない」と思わせたいのだ。

そうなれば、沖縄県民がいくら団結して反対しても、本土人から見れば、辺野古基地建設に反対する声は「沖縄の一部のモノ」にしか見えず、これを黙殺しても批判は小さい。安倍政権はそう計算しているのだ。

本土人は、そのたくらみを見抜かなければならない。

(撮影/山形健司)