「そういえば、爪しか映らなかった時期があったっけ」と語る小島さん

テレビ東京系の長寿番組『開運!なんでも鑑定団』から、番組創成期メンバーでもある司会の石坂浩二が降板することが発表された。

番組内では石坂の映像や発言がここ数年不自然なほどにカットされ続けており、プロデューサーによる「イジメ説」も伝えられるが、テレビ東京サイドは否定しているーー。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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今回の一件でふと思い出しました。そういえば私、爪しか映らなかった時期があったっけ。あれはもう10年以上も前のこと。

とある番組で、スタジオには私を含めて4人ほどの出演者がいたのですが、ある女性ディレクターが担当するようになってから司会者の横に座る私は全編カットされ、フリップを持つ手元だけが映る状態になったのでした。

映るのはおじさんばかりで、女性の声もなく顔も見えないのに、毎度マニキュアを塗った指先が映るのですから視聴者は誰の指かと、さぞ不審に思ったことでしょう。

それとは別枠のミニコーナーには私しか出演していなかったので、さすがにカットはされませんでしたが(いっそ番組ロゴの静止画とか鶴亀の絵皿のアップとかにしたらよかったのに)、本編では全力でカットしたいのが伝わってきて、「ああ、ディレクターが代わると人ひとりを画面から消すこともできるのね!」とTVの魔法にビックリしたのでした。

その一件で制作者の屈折した支配欲の一端を見た気がしたのですが、きっとそれは電磁波の影響で私の認知が歪(ゆが)んだせいですね。単なるTVの幻だったのでしょう。遠い昔の、お話です。

小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。新人アナだった頃、ある番組の出演最終日に視聴者に挨拶をしたら、後でスタッフから「余計なこと言うな」と叱られた。目立たぬように黙って消えろというTVの本音に震えたなあ