世界との戦いを考えれば、絶対にOA枠は使うべき

男子のU-23日本代表がリオデジャネイロ五輪出場を決めた。しかも、単に出場権を獲得しただけでなく、優勝という最高の結果を残し、2016年早々、日本サッカーを大いに盛り上げてくれた。

この世代は今までずっと「弱い」「勝てない」と言われてきて、悔しい気持ちもあったはず。見事に見返してくれたね。選手、監督、スタッフには心からおめでとうと言いたい。

個人的にも、これで14年のブラジルW杯に続いての現地観戦に踏ん切りがついた。年齢的にブラジルで大きな大会を見られるのは最後かもしれないし、今から楽しみだよ。

ただ、「勝って兜(かぶと)の緒を締めよ」ということわざがあるように反省も忘れてはいけない。確かに、結果は最高だった。でも内容はどうか。劇的で感動する試合が多かったということは、裏を返せばそれだけ危ない試合が多かったということ。相手を圧倒するような強いサッカーは見せられなかった。

しっかり守備を固めて、速い攻めを狙う。むしろ“弱者のサッカー”だね。同じく五輪出場権を獲得した韓国、イラクと比べると組織力で勝っていたものの個の能力では見劣りした。

実際、韓国戦では後半15分過ぎくらいまでは“鬼回し”(プレスをかけても、ダイレクトパスなどで簡単にボールをつながれること)された。また、優勝したのに「すぐにA代表で見たい」と思わせる選手も見当たらなかった。そもそも、この世代は所属クラブでスタメンじゃない選手も多い。

そういう意味で、選手個々のレベルアップは今後の大きな課題だね。「(大会を通して)成長した」と語る選手も多かったけど、だったらそれをJリーグで見せなければいけない。

五輪本大会でのノルマはメダル獲得

韓国戦で2点を奪った浅野も広島では佐藤のサブだし、MVPの中島も昨季はFC東京であまり出場機会を得られなかった。主将の遠藤にしても新天地の浦和ではどうなるかわからない。今大会の登録メンバーは23人。でも、五輪本大会は18人。さらに23歳以上のオーバーエイジ(OA)枠3人を使うことになれば、リオ行きはぐっと狭き門になる。

現時点で安泰といえる選手はひとりもいない。これから熾烈(しれつ)なサバイバルが始まるわけで、ぜひ選手たちには奮起を期待したい。

五輪本大会でのノルマはズバリ、メダル獲得。前回ロンドン五輪が4位なのだから当然だろう。そして、世界との戦いを考えれば、絶対にOA枠は使うべきだ。チームの軸となるポジションに、経験があってリーダーシップのとれる選手が欲しい。

リオ五輪は国際Aマッチデーではないし、所属クラブとの折り合い、本人の意欲など調整の難しい部分は多いけど、僕が見てみたいのはFW岡崎(レスター)、MF青山(広島)、DF吉田(サウサンプトン)の3人。

岡崎には前線での強さ、格上相手にもひるまないタフさがある。ボランチの青山は守備だけでなく、攻撃面でもプラスをもたらせる。広島で発揮しているリーダーシップも魅力だね。吉田は前回のロンドン五輪でもOA枠に選出され、チームをいい方向に持っていってくれた。経験豊富だし、明るい性格で若い選手もやりやすいだろう。

いずれにしても、本気でメダルを狙うなら「選手を育てる」「経験を積ませる」という言い訳をせずに、とことん勝ちにこだわったメンバー選考をすべきだね。

(構成/渡辺達也)