元麻薬Gメンは「清原逮捕のきっかけとなった、警視庁による家宅捜索は非常に不可解なものだった」と指摘。その真相とは…

覚醒剤所持で逮捕された清原和博容疑者――。

その後、同棲していたとされる“謎の女”や、清原容疑者に覚醒剤を横流ししていた巨人時代の元同僚の存在など次々と新たな疑惑や新事実が明るみに出ている。

日増しに報道が過熱する中、全く別の角度から清原容疑者を注視していた人物が。元厚生労働省・麻薬取締部・捜査一課長の経歴を持つ高濱良次(たかはま・よしつぐ)氏だ。

同省所属の麻薬取締官は、通称〝麻取(まとり)〟と呼ばれ、警察と同等の権限…つまり、尾行や取調べ、家宅捜索などの捜査権や逮捕権を持ち、拳銃と手錠の携行も許されている麻薬取締りの〝国家警察〟。今回の清原容疑者の逮捕には関わっていないが、過去には1980年、日本公演のために来日したポール・マッカートニーを大麻所持で逮捕した実績もある。

麻薬取締りの現場を指揮する捜査一課長として、「薬物中毒者はゴマンと見てきた」という高濱氏。元マトリの目に清原容疑者はどう映るのか。

「有名人だけにマスコミも世間も騒いでいますが、彼は覚醒剤を単純所持し、使用していただけの“末端のシャブ中”です。清原逮捕は、それにつながる密売組織を叩きたい捜査機関からすれば大した事案ではありません」

シャブ中だった、清原容疑者…。ファンからすれば、これほど屈辱的な表現はないだろう。彼は一体、どれほど覚醒剤にのめり込んでいたのだろう。

「報道によれば、逮捕時、清原容疑者は0.047gの覚醒剤を所持していました。1回の使用量は初心者で0.03~0.05g、耳かき1~2杯分の量です。そこから単純計算すれば0.047gは1回分の使用量となります。ただ清原容疑者の場合はその後の報道の通り、使用期間が長期に及んでいた分、1回分の使用量がもっと多かった可能性もあります。

というのも、覚醒剤というのは使用を続けるほど体内に耐性ができ、作用が効きづらくなっていくもの。最初は0.03g~0.05gだった使用量が次第に0.1g、0.2gと増えていく。清原容疑者もそうであったのなら、彼は相当深刻な薬物依存の状態に陥っているはず。依存性が高ければ高いほど、社会復帰は難しくなります」

“清原逮捕”をリークしセッティング!?

2014年に週刊誌で薬物疑惑が報じられてメディアへの露出が激減し、昨年から再びTV出演などもするようになった清原容疑者。画面に映る彼の姿を高濱氏はどう見ていたのだろうか。

「やはり、ろれつが回らない、周囲をきょろきょろとして落ち着きがない…など覚醒剤乱用者の典型的な症状が見て取れました。内偵捜査を進めていた捜査員もTVに映る彼の言動や顔色を注視していたはず。警察はずいぶん前から“清原はクロ”と見ていた可能性が高く、あとはいつ逮捕するかというタイミングの問題だけだったのでは」

そのXデーは2月2日に訪れた。日本中に衝撃を与えたその逮捕劇を整理すると…。

同日夜8時過ぎ、警視庁の捜査員が清原容疑者の自宅に家宅捜索をかけ、その時、現場にいた清原容疑者はストローと注射器を左手に持っていたとされる。テーブルの上には、覚せい剤が入った袋も…。その後、捜査員に『私が使用するために持っていた覚醒剤に間違いありません』とすんなり供述している。

だが、高濱氏はこの逮捕劇にこんな疑問を呈する。

「報道によると、捜査員は清原容疑者の在宅中に彼の家を訪れ、家宅捜索しています。このやり方は通常の麻薬捜査ではあまりない。普通は家の外で身柄を押さえるものです」

一体、どういうことなのか…。

「覚醒剤の常習者は警察の動きに鋭敏になっています。そんな状況で捜査員が犯人宅を訪れ、インターホンを押し、捜索令状を見せる…。この流れだと、部屋の扉を開ける前に“警察が来た”と気づかれ、覚せい剤をトイレに流すなど証拠を隠滅される恐れがあります。

それを避けるため、通常の捜査ではまず捜査員が自宅前で待ち構え、犯人が家から出てきたところを取り押さえるんです。それも自宅に仲間がいることを想定して、その人物に警察の存在が気づかれないような場所で。

身柄を押さえた後は、本人に鍵を開けさせ、必ず捜査員数名が先行して家に入り、証拠隠滅のチャンスを1秒も与えない。今回の逮捕劇にはそうした慎重さが全く見受けられません」

不自然な家宅捜査を行なった警視庁と、呆気なく逮捕された清原容疑者。さらにその時、自宅前にはTV局のカメラクルーも待ち構えていた。

家宅捜査が“空振り”に終わる恐れもあったのに、なぜか現場では“清原逮捕”がセッティングされていたかのよう…。あるTV関係者は、「家宅捜索のタイミングについて、捜査員が記者に情報提供した可能性が高い」というが。

自分の人生をリセットしたかった?

その点について、高濱氏はこう見る。

「どういう経緯でこうなったのかはわかりませんが、警視庁からすると清原のような大物を逮捕する現場を報道させることで、薬物乱用の犯罪抑止につなげる狙いがあったのでしょう」

そして、もっとも不可解なのが清原容疑者だ。高濱氏がこう続ける。

「彼からすれば、証拠隠滅のチャンスはあったはずなのに捜査員に抵抗する素振りもなく淡々と応じ、覚醒剤使用の容疑者としては、警察に従順すぎるくらいに従順でした」

そこから推測できる、心情とは?

「彼は薬に溺れていく中で、有名人であるがゆえに誰にも相談できず、自分でブレーキをかけることもできない状態に陥ってしまった…。心のどこかで警察に捕まることで自分の人生をリセットしたいと思っていたのではないでしょうか」(高濱氏)

今、清原容疑者は獄中で何を思うか…。日毎に口数も減っているというが、自らの愚行を悔いつつ、どこか安堵する思いも抱いているのかもしれない。

発売中の『週刊プレイボーイ』9号では、覚醒剤をやめられない理由を元依存者が赤裸々に告白。こらから清原容疑者を待つ茨(いばら)の道とは…。そちらもお読みください。

(取材・文/週プレNEWS編集部)