海中で全く目立たない潜水艦は、中小国にとっては「コスパの悪い兵器」だったが… ※写真と本文は関係ありません

日本周辺の極東・西太平洋海域は、今や世界最大の“潜水艦密集地”といっていい。各国の最新戦力はどうなっているのか?

日本近海への中国公船の進出や北朝鮮の核開発が注目される極東地域の軍事情勢。しかし、「水面下」では各国が潜水艦の“軍拡競争”の真っ只中にある。

数年前まで、東南アジアではシンガポール、インドネシアが2隻ずつ潜水艦を保有しているだけだった。平時は海中で全く目立たない潜水艦は、中小国にとっては、「コスパの悪い兵器」だったからだ。

ところが、中国海軍の拡張戦略─特に東アジア初の空母の保有というエポックメイキングな出来事により、地域の軍事バランスは激変した。

とはいえ、空母自体の建造・維持コスト、艦載航空機や人員にかかるコスト、空母を護衛する艦艇の必要性などを考えると、中国に対抗し同じく空母を保有する選択肢は現実的ではない。そこで各国は、中国に対する「シー・ディナイアル(海上拒否)戦略」の中核として潜水艦を重視し始めたのだ。日本は従来の16隻から22隻体制へ転換し、他の潜水艦保有国も大幅増強を次々と発表。さらにベトナム、マレーシアも新規購入に踏み切った。

ただし、もちろん中国も潜水艦の開発・増強を進めている。艦の能力、戦術ともに発展途上とはいえ、昨年10月には東シナ海を航行中の米空母「ロナルド・レーガン」に中国の「元」級潜水艦が最接近する“事件”があった。

中国海軍は、昨年3月に北大西洋上で行なわれた国際軍事演習の仮想戦で、仏海軍の原潜「サフィール」が米空母打撃群の半数を撃沈した事例を徹底研究しているという。今回の米空母へのニアミスは「空母艦隊のバリアはいつでも破れる」というアピールだったのだろう。

普段は存在感をあえて隠し、いざという時に“ハチのひと刺し”を狙う潜水艦は、いわば海中の忍者なのだ。

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※参考 【潜水艦の種類】

●攻撃型潜水艦(SS)ディーゼルエンジンを搭載。魚雷や対艦ミサイルで水上艦や潜水艦を沈める役割を担う。米英仏以外の各国が導入

●攻撃型原子力潜水艦(SSN)原子力推進機関を搭載した潜水艦。静粛性ではSSに劣るが、航続力は無限で、最大30ノット(時速約55.6キロ)以上

●弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)大陸間弾道ミサイルを搭載した原潜。戦略ミサイル原潜ともいう。米・英・仏・露の4ヵ国が保有し、中国も開発中

●巡航ミサイル搭載潜水艦(SSGN)対艦・巡航ミサイルを搭載した原潜。露の「エコーⅡ」、「チャーリー」級、「オスカー」級原潜は米空母への攻撃を主目的とする。一方、米は一部のSSBNを改装し、対地攻撃を主目的とするSSGNを保有

(取材・文/世良光弘&本誌軍事班 協力/山内敏秀)