「電力自由化」でユーザーにとってのメリット、デメリットは?!

いよいよ今年4月から家庭向けの「電力自由化」がスタート! 

とはいえ、「なんとなくは知っているけど、よくわかっていない」という人も多いはず。我々ユーザーにとって、どんなメリット、デメリットがあるのか、基本的な疑問をまとめてみた。

“節約の達人”として知られる経済ジャーナリストの荻原博子氏と、ケータイジャーナリストの石川温つつむ)氏に解説してもらおう!

Q そもそも電力自由化って何?

 荻原「正確には『電力の小売全面自由化』といいます。改正電気事業法がきっかけで4月から個人家庭の電力が自由化され、既存の電力会社以外の企業でも参入が可能になりました。異業種を含めた各社が競争することで、これまでの高すぎる電気料金の適正化、さらには大幅な値下げも期待できます。今年前半で最も明るいトピックですよ(笑)」

Q 誰でも電力会社を選べる?

 荻原「はい。ただし、注意したいのはマンションや団地など一部の集合住宅。建物の管理組合が電力会社と一括受電契約をしている場合は、一戸だけで電力会社を変更できません。契約形態がわからない人は大家さんや管理組合に問い合わせてみてください。もし一括受電契約だったとしても、それですでに電気料金が通常よりも5%程度安くなっているはずなので、『損をした』と落ち込む必要はないと思います」

Q どのくらいの業者が名乗りを上げている?

 荻原「現在、東京電力の管轄内にお住まいの方でも、別管轄の電力会社から電力を購入できるようになる他、新規参入業者を合わせると130社以上から選択可能になります(1月26日時点)。新規参入組の業種は多岐にわたり、例えば旅行会社のH.I.S.やコンビニのローソンなども手を挙げており、ポイント付与や各種割引を行なう予定です。

ちなみに今、特に力を入れて営業を行なっているのはガス会社。実は来年4月には『ガスの小売自由化』も始まる予定なのです。これに対し、東京ガスなど各ガス会社は今のうちに顧客の囲い込みをしておかないと、来年以降、資本の大きい大手電力会社にガスの顧客を奪われるという危機感を抱いているのです」

申し込み時には、電力会社の検針票が必要

Q 新規参入組に電力安定供給への不安はない?

 荻原「安心してください。小規模の新規参入組でも停電などの心配は無用です。基本的には、小さな発電所でつくった電気も大手がつくった電気も、イメージでいえばプールのようなところにためられ、そこから各家庭に配られるからです。だから、これまで使っていた電気と実質は変わりない」

Q 電力会社の切り替えは面倒じゃない?

 石川「はい。自分の選んだ電力会社のホームページや電話などで申し込むだけで、それまで契約していた電力会社に解約を申し入れる必要はありません。ただし、申し込み時には今の電力会社の1月以降の検針票が必要になるので捨てずに取っておいてください。

また、申し込み後、メーターがスマートメーター(使用した電力量を自動で電力会社に送信する検針不要のメーター)に無料交換されますが、電力会社を変えずとも随時、無料で交換される予定です」

Q ズバリ、どのくらい電気料金を下げられる?

 荻原「各社が次々と安い料金プランを打ち出していますが、居住地域、電気の使用状況、世帯人数、在宅時間帯などによってお得なプランも変わるので一概にいくら安くなるとは言えません。

ただし、一例を挙げるなら、前述の東京ガスの場合は、ガスと電気を両方契約する『ガス・電気セット割』だと、同社の電気のみの基本料金の907・20円(プラン名「ずっとも電気1」、契約電流30A)よりも毎月270円引きとなり、ガス代と合わせて年間で3千円以上安くなる計算です。

また、電気の使用量に応じて支払う料金も東京電力よりもやや安めの設定。また、東京ガスに限らず、4月以降、加入が少ないなどの状況によっては値下げ競争に踏み切る可能性もあります」

Q 電力会社を切り替えるべきタイミングは?

 荻原「すでに予約申し込みを始めているところがほとんどですが、焦る必要は全くない。今後も新規参入業者が増えていき、選択の幅が広がるかもしれません。じっくりと比較検討することをオススメします」

解約違約金や契約解除料を取られる可能性も…

Q 自分に合った電力会社をどうやって探す?

 石川「まずは自分の生活における優先順位をしっかりと把握しましょう。スマホのヘビーユーザーならば携帯会社、クルマに毎日乗るならガソリン販売会社といったように選択肢は多く存在しています。どこがより節約できるのかは、比較サイトを使うとわかりやすい」

Q 電力自由化によるデメリットはない?

 石川「例えば、ソフトバンクやau(KDDI)などの携帯会社が参入しますが、携帯、ネットに加えて電力までセットで契約すると、何か不満な点があっても簡単には会社を乗り換えづらくなりますよね。実際、ソフトバンクの「バリュープラン」の場合、契約2年以内に解約すると2500円の契約解除料と540円の解約事務手数料が発生、auの場合は利用開始から1年未満で解約すると2千円(税抜き)の解約違約金が発生します。

また、ソフトバンクなどは現状、東京電力と中部電力、関西電力のエリアでしかサービスを提供しません。契約中にエリア外に引っ越すと契約解除料を取られる可能性もあるので注意が必要です」

Q その他に考えられる落とし穴は?

 荻原「家では寝るだけ、電気はほとんど使わないという単身生活者の方は電力会社を変えないほうが安い場合もあります。また、高齢者を狙った詐欺も起こるでしょうね。例えば、『(無料である)スマートメーターの交換代の請求』という手口が考えられます」

石川「業者によっては今後、携帯やガスなどとのセットにとどまらず、保険や住宅ローンも一緒に契約することで、さらに割引になるといったプランを展開することが予測されます。そうなった場合、例えば、保険料や住宅ローンの支払いが終わる30年後、35年後などの長期にわたって電気を“縛られる”可能性もありますので、慎重に検討してほしいですね」

不安はゼロじゃないけど、電力自由化が歓迎すべきものだということはよくわかった。あとは自分に合ったプランをじっくり選ぶべし!

●週刊プレイボーイ7号(2月1日発売)「誰でもおトクな『電力自由化』の落とし穴!」では企業&料金プランの一例を比較検証しているので、参考にしていただきたい。

(取材・文/牛嶋 健[A4studio])