撮影慣れしているためどんな表情でもすぐ出せてしまうみちょぱと緊張気味の長谷川氏

明るい茶髪に濃いメイク、そして何にも臆(おく)せず思ったことをズバズバと言う――。

そんな我々の頭にある、いわゆる「昔ながらのギャル」が、今では街から消えて久しいと言われている。

女子高生雑誌の草分け的存在ともいえる『Cawaii!』の誕生から終焉(しゅうえん)までを追った『ギャルと「僕ら」の20年史』(亜紀書房)は、そんなギャルが生まれてから今までそのギャルたちとともに雑誌を作り、業界を盛り上げてきた編集者たちのノンフィクションだ。

著者の長谷川晶一氏が、まさにその流れの中に身を置いたひとりの編集者として、当時を改めて検証するために著したというこの本。その中で、今なお存在する数少ない「昔ながらのギャル」として登場しているのが、“みちょぱ”こと池田美優である。

実は、昨年末の『週刊プレイボーイ』52号でも2016年にブレイクしそうなモデルとして取り上げられていた彼女。現在のギャル界を牽引(けんいん)する女性ファッション誌『POPTEEN』のトップモデルとして活躍し、オトナっぽい雰囲気で女子中高生に大人気だが、本人自身もまだ高校2年生の17歳。

そこで今回は、今ドキのギャルがどんなことを考え、どのように生きているのかを暴くべく、長谷川氏とみちょぱの対談をセッティング。果たして、45歳のオジサンと17歳のカリスマギャルのトークは噛(か)みあうのか…?

* * *

みちょ (週プレをぱらぱら見ながら)男の人ってコレ見てどうするんですか? おかずにするんですかね~?

長谷川 まぁ、そういう人もいるかも…。

みちょぱ じゃ、これエロ本ですよ~!(笑) 私、おかずにはなりたくないな~。って、私みたいなタイプの女のコはみんな苦手か。

長谷川 いやいや、結構、ギャルが好きなおじさんっていますよ。

みちょぱ あ~、ドMの人とかってギャルのこと好きそうですよね。たいてい「怖そう」って言われますし。でも、ギャルって基本ノリノリだから、一緒にいて楽しいと思うんですけど。

質問に対し、一刀両断とばかりにはっきり答えるみちょぱに清々しい気持ちになった

長谷川 まぁ、確かに一般的にはほんわかした雰囲気のコのほうが男ウケはいいですよね。

みちょぱ ああいうコたちって何考えてるかわからなくないですか? ひとつ言っておきたいんですけど、おとなしそうなコに限ってビッチだったりするんですよ! 本当は!! 私みたいなのがビッチでも、ただの予想通りでしょうけど、清楚っぽいコが実はビッチだって知ると、ショック受けるんですよね、男って。

長谷川 モテたくて清楚っぽく振る舞ってるってこと?

みちょぱ そう。それで実際みんなダマされちゃうんですよね~。まぁ私みたいなギャルは、他人にどう思われるかよりも、いかに自分で自分を盛れる(カワイいと思える状態にできる)かが大事で、まったくモテは狙ってないですから!

原宿系はそろそろ終わってほしい!

長谷川 1年前にお話を聞いて、そういう「ギャルマインド」みたいなものってすごくカッコいいなって思ったんですけど、そもそもみちょぱさんが考える「ギャルマインド」ってなんですか?

みちょぱ ん~、ひと言で表すのは難しいんですよね~。私はやりたいことやってるだけだし。まぁ、ギャルになりたくてなってるんで、周りから「ギャルだね」って言われるのは、認められてるみたいですごい嬉しいです。

長谷川 やりたいことやろうとして、周りからNGが出たり、時間がないとか、お金がないとか、そういう障害はない?

みちょぱ ないですね。昔、ピアスを勝手に開けてママに怒られたりしても、やっぱりやりたいことやってよかったと思ったし。よくファンのコから「つけまが似合わないって言われるんですけど、どうしたらいいですか?」みたいな質問がくるんですけど、自分がしたいんだったらすればいいじゃん、って返事してます。結局、大切なのは自己満なので。

長谷川 「ギャルは自己満」って言葉は本にも書いたけど、そういう自覚はあるんですね。

みちょぱ ありますよ~。スッピンがブスとか言われるけど、メイクしたってなんだってカワイくなれるんだったらよくない?って思うし。でも、最近すごい悲しい出来事があって…。私、ずっと自分の爪がすっごい長くて自慢だったのに、仕事の事情で短くしろって言われちゃって。泣く泣く切りました…。その仕事が終わったらソッコーでスカルプ(アクリル樹脂で長さを出す付け爪の一種)にしたんですけど。

長谷川 パッと見だと自分の爪か付け爪かなんて見分けがつかないけど、やっぱり自分の爪じゃないとダメなんですか?

みちょぱ そりゃそうですよ~。だって「私は自爪だよ」って自慢できるじゃないですか。気合い入ってるカンジがするんですよ。作り物じゃなく自分の爪で盛れてるっていうのが。まぁ、それこそまさに自己満なんですけど(笑)。

長谷川 メイクとか髪とか、盛るポイントって他にもいろいろありますよね。

みちょぱ つけまとカラコンは絶対でしょ。ただ最近、どっちもナチュラル化が進んでてつまらないんですよね。だから、あえて私は濃いタイプのものをプロデュースしてるんです! 意外とみんな使ってくれて、おっ、ギャル復活してきてるな~って密(ひそ)かに喜んでます。

みちょぱがプロデュースしたグッズ。化粧水などからカラコン、つけま、骨盤ショーツまで多岐にわたる

長谷川 時代はナチュラル化してると感じてるのに、それをギャル全盛期みたいに戻そうとしてるんですか?

みちょぱ そうですね!  戻したいです。いや、戻します!!

長谷川 ひとりで時代を変えようとしてると。

みちょぱ 変えたいですけどね…。原宿系みたいなファッションとかメイクのブームはそろそろ終わってほしい!

長谷川 え、そもそも原宿系は敵なんですか…?

みちょぱ いやいや、敵じゃないし、嫌いでもないんだけど、私はああいうのはカワイいと思わないし…。でも、原宿系のコたちからは私もそう思われちゃってるんですよね、たぶん…。

長谷川 原宿系のコたちも、モテるモテないってあまり関係なさそうですよね。そこはギャルと共通点があると思うんですけど。

みちょぱ まぁお互いに一番盛れた状態を目指してるのは間違いないかもしれないので、方向性の違い?ってやつですね。

草食系とかありえないですよ、男として!

長谷川 みちょぱさんは、今、盛れた状態?

みちょぱ 盛り盛りです。最上級です! 盛るのって楽しいですよ~!  つけまもいろんなタイプを組み合わせたり、カラコンも色の選び方ひとつで顔もかなり変わる。自分を盛ることって本当に楽しいんです! だから人生、一番楽しんでるのってギャルだと思う!!

長谷川 ギャルの先輩で尊敬してる人とか、目標とかはいるんですか?

みちょぱ そういうの作れって言われるんですけど、私、人のマネするの好きじゃないし。そもそも人にあまり興味がないので、憧れの人とかできないんですよ。だって、他人に憧れたって、その人になれるわけじゃないし。

長谷川 自分は自分っていうことですね。同世代のギャル仲間はいるんですか?

みちょぱ 最近は増えてきたかな? モデルのコでも年下でギャルっぽいコも目立ってきたし。でも、私って男友達のほうが多いんですよね、はっきりしてる人が好きなので。だから、最近のジェンダーレス男子とかマジよくわからない! 草食系とかありえないですよ、男として。

長谷川 ギャルのことが好きな男とかは近づいてきたりしませんか?

みちょぱ きますきます。でも私、自分から好きになった人しか好きになれなくて。近づいてきたら逃げちゃうんですよ。キモイキモイって。仲いい友達でも、突然好きになったとかアピールされると、あ、ゴメン無理だわってなっちゃう…。

長谷川 でも草食系は嫌なんですよね?

みちょぱ そうなんですよ~。でも自分からアプローチしたいんですよね。どうしたらいいんだろ…。面倒くさいですね、私…。

長谷川 では、話を変えましょう(笑)。『ギャルと「僕ら」の20年史』は20年前に創刊されたギャル雑誌のドキュメンタリーなんですけど、当時のギャルの写真を今見てどう思いますか?

20年前(著作は2015年12月上梓)の1995年7月に産声をあげた『cawaii!!』創刊号の表紙(なんと当時の女子高生100人が集まった!)とみちょぱが初の単独表紙を飾った2015年1月号の『POPTEEN』。「ギャル」がいかに変わっていったかがわかる(左は長谷川氏提供資料より)

みちょぱ 最初はギャルもメイクが薄かったんですね。眉細すぎだし。でも当時はこれが盛れてると思ってたんですよね…。私がギャルを目指し始めたのは10年前くらいで、ガングロが流行ってた頃なんですよ。パラパラとか憧れてましたね。踊れたらカッコいいなって。

長谷川 共通点を感じることってありますか?

みちょぱ 当時も皆さんやりたいことやってたんでしょうし、マインドは変わってないんじゃないですか? でもスマホもSNSもなかったし、盛り写メとかどうしてたんだろ? ヒマな時とかやることなくないですか?

長谷川 ポケベルしかなかった時代ですからね。

みちょぱ ポケベル! それ聞いたことある~!! なんのことだか全然わからないけど(笑)。

TVに出れても、どうせすぐ飽きられて終わる

『cawaii!!』の20年をまとめた資料。安室奈美恵や浜崎あゆみ、倖田來未などが表紙を飾っている(長谷川氏提供資料より)

長谷川 20年で世の中ってかなり変わったんですよね。これからさらに20年後、ギャルってどうなってると思いますか?

みちょぱ ギャルって完全に消えることはないと思うんです、絶対に! 目立ちたがり屋がいる限り!!

長谷川 僕はギャルしかいない渋谷で仕事してたけど、みちょぱさんは、ギャルが少ない中でも頑張ってギャルをやってるじゃないですか? それはツラくはないんですよね?

みちょぱ 全然ツラくないですよ~。もちろん、もっとギャルが流行ればいいなとは思うけど。

長谷川 じゃ、TVに出て今の世の中にギャルを広めていきたいとか?

みちょぱ 私、こないだバラエティ番組に出させてもらったんですよ! TVの現場は新鮮で楽しかったけど、やっぱり本業はモデルでいきたいですね! TVにどんどん出られるようになっても、どうせすぐ飽(あ)きられて終わるだろうから…。そういう現実たくさん見てるし。
長谷川 なるほど。TVに出たら面白いキャラだと思うんですけどね。

みちょぱ あと、本音を言うと、ギャルが流行りすぎたら自分が今より目立てなくなっちゃうかもって(笑)。私もギャル全盛期だったら有名になれてたかわかりませんよ。今のギャル界では自分がNo.1だと思ってますけど。

長谷川 そうやって今のギャル代表として登場している、この本を読んでどう思いました?

みちょぱ こんな難しい漢字ばっかりの本になると思わなかった! まさかこんな堅苦しい言葉で書かれてるとは(笑)。

長谷川 書くの大変だったんですよ、本当に…。

みちょぱ お疲れ様でした! 私、最近はマンガしか読まないから、こんな辞典みたいな本を書いてスゴイな~って思いましたよ(笑)。

池田美優いけだ・みゆうみちょぱ) 1998年生まれ、静岡県出身。2014年から『POPTEEN』の専属モデルとしてデビュー。2015年1月号で初の単独表紙を飾り、そこから5ヵ月連続の記録をつくった。ニックネーム・みちょぱの由来はマンガ『ONE PIECE』のチョッパーから

長谷川晶一はせがわ・しょういち) 1970生まれ、東京都出身。ノンフィクション・ライター。著書に『不滅 元巨人軍マネージャー回顧録』『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』、『イチローのバットがなくなる日―「アオダモ」を巡る渾身のルポルタージュ』、『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!~涙と笑いの球界興亡クロニクル~』など多数

『ギャルと「僕ら」の20年史』(長谷川晶一著、亜紀書房、1800円+税)

(構成/大松集行(Btree)  撮影/関純一)