本屋さんって、避難場所でもあると思うのです

老舗書店・芳林堂書店の破産が明らかになったーー。

2月5日に取次の太洋社が廃業した余波を受けてのことと伝えられており、出版社と書店の間に取次会社を介する「委託制」を軸にした日本の出版流通システムが事実上、破綻してきていると指摘する声も…。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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小学生の時、近所の書店で買った人生初の文庫本は『セーラー服と機関銃』。中学に上がると駅前の書店で名作小説を買っては長時間の電車通学をしのぎました。

いろんな本屋さんの思い出がありますが、時は流れ、今や出版不況で老舗書店まで姿を消しつつあります。

特に目当ての本がなくても、書店であれこれ手に取るのは楽しいもの。装丁を見比べるのも面白いし、話題の本の出だしの数ぺージをつまみ食いするだけでも得した気分。

ちょっと落ち込んだ時に立ち寄ると、結構な気分転換になります。誰にだってありますよね、なんだか真っすぐ職場に戻りたくない時や、ひとりぼっちの部屋に帰る他に行くあてもない時、家族に会う前にしばしひとりになりたい時…。

本屋さんって、そんな避難場所でもあると思うのです。生身の人間と話すほどの体力はないけど、人の気配を感じていたい。もうとっくに死んでしまった人や、会ったこともない人の言葉にじっと浸って、しばし孤独を忘れるのです。

芳林堂書店の倒産で、通勤途中の逃げ場がまたひとつ消えたと、肩を落としている人もいるのでは…。

小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。パースのショッピングモールに大抵入っているのが「DYMOCKS」という赤い看板が目印の書店。他にも、大型雑貨店の中にも書籍コーナーがあります。英語と価格の壁が高いです