横浜DeNAベイスターズの新監督に就任したアレックス・ラミレス監督

沖縄・宜野湾キャンプ。横浜DeNAベイスターズの新監督に就任したアレックス・ラミレス監督の様子がいつもと違う。

「ラミちゃん監督、“ゲッツ” してもらってもいいですか?」

そんな報道陣からの要求に「NO、NO、パフォーマンスは現役を辞めた時にもう封印しました」と笑顔でかわす新指揮官。

パフォーマンスのないラミレスなんて…と嘆くなかれ。現役時代から日本で監督になることを目標とし、何度もシミュレーションを繰り返してきたというラミレス監督。その情熱と自信がすごい。

「ベイスターズの監督としてまたユニフォームを着られることができて、本当に嬉しいです。現役の頃からずっと、このチームがどうすれば勝てるかを考えてきましたし、リーグでも屈指の戦力が整っている。自信を持って優勝できると言えます」

そんな“NOゲッツ、NO最下位”なラミレス監督は選手・コーチたちの間でも「明るいだけじゃない。すごく野球を知っていて細かいこともできる」とすこぶる評判がいい。一体、ラミレス監督はベイスターズに何をもたらしたのか。

昨年、最下位に沈んだDeNA最大の弱点は、暴投の日本タイ記録をつくるなどミスが連発したバッテリー。特にレギュラーを固定できなかったキャッチャーが泣きどころだ。

「昨年のバッテリーミスの映像を見て驚いた。練習ではできているのに試合になると『なんでこうなっちゃうの?』というようなレベルの低いミスばかりだった」とは、新任の光山英和バッテリーコーチ。そうしたミスから捕手陣はさらなるエラーを恐れ、動きが固まる悪循環だった。

ラミレス監督は、昨年までの黒羽根利規、髙城俊人、嶺井博希の併用方針を改め、正捕手ひとりを決めていくと明言。新人の戸柱恭孝を含めた4人で競わせている。

「チームが勝つには10年任せられる正捕手をつくっていかなければなりません。IQが高い選手もいれば、スローイングの能力が高い選手、バッティングがいい選手とそれぞれに個性がありますが、今後“誰が一番ベイスターズを助けてくれるか”を見て判断していくつもりです」

ラミレス監督が打ち出した異例の方針

正捕手の条件についてラミレス監督は「まずはキャッチングとスローイングだけできればいい」とし、「バッティングとIQは求めない」と宣言。ピッチャーへのサインは自らがベンチから出して試合をコントロールするという異例の方針を打ち出した。

「うちのキャッチャー陣は皆若く、しかもここ数年、結果を残せていない。まずは基本であるキャッチングとスローイングをしっかりやってもらうということです。サインに関しては僕は現役時代、ピッチャーでなくキャッチャーのことを学び、配球の研究・分析をしてきた。その経験を生かして少しでもキャッチャー陣を助けることができればと思っています。

もちろん、それぞれの考えもあるだろうし、ピッチャーが首を振ることもあるでしょう。そのライン引きをどこにするかはこれからですが、とにかくこのチームに大事なことは、キャッチャーに成長してもらわなければいけないということです」

では、リードの主導権を奪われたキャッチャー陣はこの方針をどう思っているのだろうか。

「自分でサインを出せないのはそりゃ悔しいですよ。だけど、ラミレス監督のリード、面白いように打たれていないんですよ。今は勉強させてもらっています」(髙城)

「今は基本の捕って投げることをとにかくしっかりやれということだと思うので、そこを大事にしていきたい」(嶺井)

捕手陣は連日、光山コーチと共に日が暮れるまで居残りのキャッチング、スローイング練習を行なうなど、激しい生存競争が繰り広げられている。誰が生き残るか、ラミレス監督のリードとともに注目だ。

この他にも山口俊をエースに指名した投手陣やセンターラインを強化し意識改革、打撃陣への好循環を目論むなど、優勝を目指すべく改革に取り組んでいるラミレス新監督。その全貌については『週刊プレイボーイ』11号で本人のインタビューとともに掲載しているのでお読みいただきたい。

(取材・文/村瀬秀信 写真/小池義弘)