「編集部が許してくれれば、デリヘルのプレイシーンはハメを外して書きますよ(笑)」と語る新堂冬樹氏

裏社会を描く「ノワール小説」の第一人者、新堂冬樹氏が『週刊プレイボーイ』13号(3月14日発売)にて新連載小説『ASK』をスタート。金、セックス、権力を求めるアウトローたちの実態を描く衝撃作だ。

そこで本人に新作への意欲と今後の見どころを伺った!

―今週号から連載が始まった『ASK』。トップタレントが高級デリヘル嬢になり、しかも値段は60分で数十万円! タイトルは「値段はお店に聞いて(ASK)くれ」というところからからきているとか。読者からすると、かなり刺激的で興味深い設定ですが、今後の展開を教えていただけますか?

新堂 私も週刊誌での小説連載は十数年ぶりなので、今回はいつも以上に風俗関係者に念入りに取材して書いてます。

小説に出てくる「パパラッチ」という高級デリヘルは、モデル、レースクイーンなどの著名人や、一般女性の中でもハイレベルな人しか在籍していない。一番レベルの低い人でも、「タレント」や「役者」とかで、普通の店ならそれでもトップクラスになれる。

で、そのお店の中でも最高級クラスに属しているのが、主人公の優奈。彼女は毎日のようにTVに出たり、雑誌の表紙をバンバン飾る売れっコだった。それで天狗(てんぐ)になってたんですが、そんな地位と権力を持ったトップタレントが、なぜ〝売春〟にまで堕(お)ちることになったのか。それがまずひとつの見どころです。

この小説、内容的にかなりの官能シーンがありますが、もうひとつの見どころとしては、ミステリーになってるんですね。トップタレントであれば、普通は事務所や関係者に守られて、そう簡単には堕ちないもの。でも、そのタレントが、一般人がお金を出せば関係を持てるところまで堕ちる過程を、かなりリアリティある感じで生々しく書いてます。

自分で言うのもなんですが、私が読者でもどういうカラクリでこうなるのか、興味あると思うんですよ。一般の人の感覚なら、1時間で5万、6万円でも「高っ!」ってなるでしょう。10万円ならどれだけのものが出てくるんだ?って。

でも1時間50万円というのはウソでもデフォルメでもなく現実なんです。なので、どんな経営になってるのか、顧客はどんなふうにして集めるのか、というのも主人公の転落人生とはまた別に、すごい見どころだと思います。

皆さん、探すかもしれないですね、読んでる途中で(笑)。

小説をおかずにして興奮してもらえれば

―そんな中でもやはり楽しみなのは官能シーンだと思います。今回は客が優奈の手だけでイッちゃってますが、今後はどういう…?

新堂 元トップタレントで、美しくプライドの高い女がデリヘル嬢になってるだけでも屈辱モノですよね。だから今回も書きましたが、最初、優奈は無表情だし声も上げない。やる気ないんです。

ところが、そんな女が常連の超絶テクの客やフェチ、変態の客によって、感じたくないのに感じて声が出てしまう、意思に反して乱れてしまう。ここは興奮モノだと思います。週プレさんが許してくれれば、ハメを外して徹底的に書きたいと思ってますけどね(笑)。

今まで私の小説を読んでいる方は、その部分、期待してくれていると思うんで。私の場合は映像が頭に浮かぶとかで、私の小説をおかずにしている方々も多いと聞きます(笑)。

ということで、読者の皆さんには官能シーンとミステリーを堪能していただけたらと思います。

●新堂冬樹(しんどう・ふゆき)1998年、『血塗られた神話』でデビュー。闇金融の世界で働いた経験を生かし、金・セックス・暴力の渦巻く裏社会を描く一方、純愛小説も手がけ、その作風の違いから「黒新堂」「白新堂」と呼ばれることも。代表作として『忘れ雪』『黒い太陽』『溝鼠』『枕女優』などがある。オフィシャルブログは『白と黒』 http://ameblo.jp/shindo-fuyuki/

(撮影/本田雄士)