「協会が今度は女子サッカーをどう支えていくかが重要」とセルジオ越後

来るべき時が来た。そんな感じだね。なでしこジャパンが、リオデジャネイロ五輪のアジア最終予選で敗退した。

すでに多くの人が指摘しているように、やはり世代交代を後回しにしてきたツケが出た。何しろ優勝した2011年ドイツW杯どころか、08年北京五輪のメンバーまで多く残っていたのだからね。今回は明らかに衰えの目立つ選手もいた。また、それだけ長い間、同じメンバーで戦えば、相手に研究されるのは当然。

佐々木監督にしても、若手が伸びてこず苦しかったと思う。リオ五輪まではなんとかベテラン組で乗り切って、その後に世代交代をと考えていたかもしれない。また、ドイツW杯で優勝して以降は常に勝たなければいけないというプレッシャーもかかった。それによって世代交代に踏み切れなかった部分もあっただろう。

中1日という過密日程も選手層の薄いなでしこには不利に働いたし、以前よりもライバル国のレベルも上がっている。加えて、一般的に女子は男子以上に人間関係が繊細でチームをまとめるのが難しい。中国戦後、主将の宮間がインタビューで「チームがバラバラにならないように」とわざわざ話したのも、内部でうまくいっていない部分があったからだろう。

一部では澤引退の影響を指摘する声もあったようだけど、それは関係ない。昨年のW杯の時点ですでに控えメンバーだったし、彼女がいても結果は変わらなかったと思う。今回のなでしこは負けるべくして負けたんだ。

でも、だからといって今回の惨敗について、選手たちを責める気にはなれないね。11年ドイツW杯で優勝、12年ロンドン五輪で銀メダル、15年カナダW杯で準優勝と、これまでなでしこは本当に頑張ってきた。偉大な選手たちだ。

佐々木監督にしても、世界でこれだけ勝った日本人監督は他にいない。男子が10年の南アフリカW杯以降、パッとしなくて苦しい時も日本サッカー界を盛り上げてくれた。そのことにあらためて敬意を表したい。

女子サッカーを見直すいい機会にしなければ

問題はこれから。今回負けたことを区切りとして、もう一度、女子サッカーを見直すいい機会にしなければいけない。

以前、宮間は「女子サッカーをブームではなく文化にしたい」と発言していたけど、今の状況では厳しい。19年フランスW杯まで大きな大会はないし、メディアやファンも女子サッカーにそっぽを向くかもしれない。だからこそ、これまでなでしこに何度も助けられ、おいしい思いをしてきた日本サッカー協会が、今度は女子サッカーをどう支えていくかが重要。

今までは選手たちや現場の頑張りに頼る部分が大きかった。組織としてのサポートは不十分だった。例えば、今回の予選でもスタジアムには空席が目立っていた。協会はどれだけ集客対策をしたのだろうか。

また、中国戦後、まだ予選敗退が決まったわけでもないのに、選手や監督がゴール裏のサポーターの元へ行って直接謝るようなことをしていた。信じられないよ。僕が協会のスタッフなら絶対に行かせない。なぜ誰も守らなかったのか。

なでしこの強化、選手の育成、普及活動、なでしこリーグの運営など手をつけるべき課題は多い。協会の田嶋(幸三)次期会長の腕の見せどころだね。

なでしこのこれまでの頑張りを無駄にしてはいけないし、女子サッカーの灯を消してはいけないよ。

(構成/渡辺達也)