池袋発・森林公園行の最終列車が23:48から0:02に繰り下げなど、ダイヤ改正でより便利になる東武東上線

3月26日(土)、埼玉県北部と東京・池袋を結ぶ東武東上線がダイヤ改正を実施する。

列車の増発や始発の繰上げ・終電の繰り下げなど様々な面で利便性が向上するが、その中でも注目なのは「池袋発・森林公園行」終電の延長。23:48発が0:02発になるのだ。

たかだか14分の差じゃないか、と侮るなかれ。23時台から0時台に日付を跨(また)ぐわけで、これは100m走に例えれば10秒台から9秒台への壁を突破するような大イノベーションなのだ。記者自身、元東上線ユーザーで、終電に乗り遅れ途方に暮れた経験は何度もある。さぞかし埼玉県民たちは歓喜に沸いているはず!ということで、実際に東上線を利用する人たちの声を集めてみた!

***

「終電延長は衝撃的、大快挙です!」と喜ぶのは、35歳・アパレル店員。彼は、若葉駅(池袋まで急行で41分)から銀座のショップに通勤している。

「店の棚卸しの時などはよく終電になります。延長することで精神的に余裕が出てくるんじゃないですかね。23:48の終電に乗り込む時はみんな殺伐としてますから。列車が到着しドアが開けば、イス取りゲームのように殺到します。終電が早くてツライのは飲んだ後で、トイレに行きたくなって途中下車しようものなら完全アウトです」

終電を逃した場合はどうしている?

「知り合いの家に泊めてもらうか、池袋の安いカプセルホテルに泊まります。3駅手前の川越市駅まで行って(池袋発・川越市行の平日終電は0:44)、ここからタクシーで帰る手もありますが、タクシー代とホテル代は同じくらいだし、ムリして帰らずに池袋に泊まって翌日そのまま仕事に行くほうが楽ですから」

今回、10数名の東上線ユーザーに話を聞いたが、終電延長のメリットとして最も多く挙がったのは、「もうちょっと飲める」ことだった。同じく若葉駅から文京区の大学に通う21歳・男子学生はこう語る。

「たとえば渋谷で友達と飲んでいたら、23:30頃にはJRに乗ってなきゃ危ない。盛り上がってきた!って時に自分だけ早く帰らなきゃいけない寂しさがあるんですよ」

“東上線内格差”も存在した?

しかし意外にも、逆に「終電が早いことにはメリットもあった」という声も。どんなケース?

「仕事絡みの面倒くさい飲み会の時。終電が早いので引き止められずに帰してもらえる」(31歳・男性会社員)、「合コンで相手側の男性陣のメンツがビミョーな時。終電を理由にさっさと引き揚げられる」(37歳・OL)

また、東松山駅(池袋まで急行で53分)から品川区に通う36歳・商社マンの“終電早いメリット”活用法は少々ユニーク。

「本当は会社から深夜帰宅タクシー代が出るんですけど、妻にはそれを伏せてます。『タクシー代がもったいないから』と言って、月に1回、池袋のサウナに泊まるんです。たまには妻や子供から離れてひとりの時間を満喫してリフレッシュしたいじゃないですか」

前述したように、川越市駅までの平日終電は0:44である。川越在住の22歳・ガールズバー嬢は余裕の発言をかます。

「川越より奥に住んでる女子は大変ですよね、不憫(ふびん)に思う。けど、大体、彼女たちは都内で泊まらせてくれる男をキープしてる。私自身は川越だから終電遅いけど、なるべく家に帰りたい。だって急に男の家とかに泊まったら、メイク落としやカラコンケースがなくて死にたくなるもん」

どうやら“東上線内格差”というものも存在するようだ。鶴ヶ島駅(池袋まで急行で39分)から世田谷区の大学に通う20歳・男子学生が思いの丈をぶちまける。

「大学の友達に、ふじみ野(池袋まで急行で25分)に住んでるヤツがいるんですけど、終電が遅いのと、快速が停まるっていう理由で“ふじみ野は都会感”を出してくるんですよ! 鶴ヶ島と6駅しか離れてないのに!

確かに、東上線内格差はありますよね。先日、同じ埼玉の女子と池袋で飲んで終電を逃したので、勇気を出してラブホに誘ったんですけど、『私は埼玉でもタクシーで2千円の距離だから』と鮮やかに断られてしまった。この時も格差を感じました。でも終電延長は嬉しいですよ。14分という時間そのものよりも、ふじみ野の終電と同じ0時台になったのが精神的にすごく大きいっす。終電0時台って、素敵な響きですよね!」

“お持ち帰り”できるか、できないか…影響も?

“お持ち帰り”できるか、できないか…。古今東西津々浦々で終電間際には男女の駆け引きが繰り広げられてきたことだろう。実際、この“14分の差”は、男女の心理にどう影響するか? 坂戸駅(池袋まで急行で43分)から新宿区の大学に通う20歳・肉食系小悪魔女子は、熱い吐息を漏らしながらこう語る。

「私は終電延長してほしくなかったな~。終電早いのって“逆連れ出し”の口実になるんですよ。飲み会で、『私、終電早いからもう帰らなきゃいけないの。でもひとりで駅まで行くの寂しいから、●●クン、駅まで送って~』とか言って、そのままラブホに直行するもよし、彼の家に行くもよし」

一方、男の側からいえば、お持ち帰りにどんな影響が? 東上線ユーザーではないが、池袋在住で、某TVドラマで有名になった池袋西口公園を根城にするナンパ師(35歳・500人斬り)はこう語る。

「ブクロ(池袋)のナンパ師にとって、東上線ユーザーは格好の獲物だよ。終電を逃した女子は大体、マン喫を利用するので、店の前で張ってればかなりの確率でゲットできる。あと、この時期の飲み会でよく使えるのは“花粉症設定”。『俺、ひどい花粉症で外出られないから、うちで飲み会やろう』と。これは超使えるよ。

家飲みのアドバンテージは、家と駅までの距離感を女子が把握していないこと。『駅まで7、8分だけど、送っていくよ』と嘘をつく。本当は15分かかるんだけど(笑)。ダベりながらのろのろ歩いているうちに終電なくなってるってわけ。じゃあ、飲み直そうかとなる。花粉症の話はどこ行ったって感じだけど(笑)」

そんな百戦錬磨のナンパ師にとって、終電延長はメリット? デメリット?

「普通に考えればデメリットしかないね。でも敢えてメリットを見出せば、女子に気持ちの余裕ができることかな。終電が23時台なら、常に終電を意識するじゃん? 0時を過ぎればその感覚は多少薄らぐでしょう。そこを突いて、『もう一杯飲めるでしょ~』と。まぁとにかく、終電が何時だろうが、相手の終電時刻を正確に把握しておくのは基本中の基本。『そろそろ終電が…』と言い出しそうな時に、先手を打って『もう一杯!』とやるのが勝負の定石だね」

ナンパの極意がオチになってしまったが、終電延長は東上線ユーザーにとって格好のネタなのは間違いない。それでしばらく盛り上がるのもあり!? 池袋や東上線沿線の街は、“プラス14分”夜の賑わいを増すことだろう。

(取材・文/週プレNEWS編集部)