最強の刺客ネメシスとラーメンマンの死闘が描かれる『キン肉マン53巻』

「週プレNEWS」連載中(毎週月曜更新)の漫画『キン肉マン』(ゆでたまご作)のジャンプコミックス(以下、JC)最新巻の中から、ゆでたまご先生ご自身にお気に入りの原画を選んでご紹介いただくシリーズ企画“ゆで原画”第2回。

今回は1月4日に発売された『キン肉マン』JC53巻のベストシーンをご紹介!

まずは原作シナリオ担当・嶋田隆司先生に選んでいただいたのが、この1枚(JC53巻/97ページより)。

ネメシスの必殺技バトルシップ・シンクに捕らえられ、絶体絶命のラーメンマン。そのピンチに観客席のキン肉マンが叫んだ言葉は「メシア蘇(よみがえ)れ!」だった! その願いに反応して、ラーメンマンの中の眠れる魂“救世主=モンゴルマン”が覚醒。試合の最中にもかかわらず、ラーメンマンはもうひとつの姿であるモンゴルマンへと変身していく!

嶋田先生が選んだ1枚。往年のファン大興奮のモンゴルマンの登場だ!

嶋田隆司先生(ゆでたまご・原作担当)コメント

「ラーメンマンが好きなファンはもちろんたくさんいてくれるんですが、それ以上にモンゴルマンが好きだと言ってくれる人も大勢いて、この試合の中で是非その両方を見せたいというのは試合前からずっと考えてました。それでどうすればいいかと考えた結果、やられて血みどろになったラーメンマンの顔に赤い血のクマドリができて、そのままモンゴルマンになったらカッコいいなというのを思いついて、やってみたのがこのシーンです。

かつて、『闘将!!拉麺男(たたかえ!!ラーメンマン)』という作品を同時並行で連載していた時期、『キン肉マン』本編にラーメンマンを出さないようにするためモンゴルマンの仮面を被せたんですが、ちょうどその頃って黄金のマスク編、夢の超人タッグ編と『キン肉マン』の作品人気がうなぎ上りになっていた時期で、モンゴルマンの大活躍がその人気を支えてくれた。それだけに作中のキン肉マンたちだけじゃなくて、僕自身も“救世主”としての彼に助けてもらった気がしていて、思い入れが深いんですよ。

前に中井君が『絶対にペンタゴンを描いてみたい』と強く要望して、半ば強引に登場させた(JC43巻参照)ことがありましたけど(笑)、それと一緒で今回は僕が『絶対にモンゴルマンを出したい』と無理を言って、このシーンは描いてもらいました。

ネメシス対ラーメンマンの試合そのものも、グラップラー対ストライカー(※1)というのを前からやりたかったんですが、それも実現できたし、この一戦はいろいろと僕のやりたいことができた試合だったと思っています」(※1/グラップラー:組み技系の格闘家/ストライカー:打撃技系の格闘家

中井先生が選んだ“降ってきた”一枚

そしてもう1枚、作画担当・中井義則先生に選んでいただいたのはこちら(JC53巻/166頁より)。

中井先生が白紙の原稿用紙を見た時点でなぞるように描けたという1枚

ジャスティスマンから己の信じる“正義”を否定されたテリーマン。その横暴な物言いに対し、揺るぎない信念で真っ向から反論を見せるこの大ゴマ。圧倒的な力を見せる巨大な敵にも臆せず立ち向かう、テリーマンの“勇気”が見える、第143話のラストシーンだ。

中井義則先生(ゆでたまご・作画担当)コメント

「テリーマンはこれまでもう何十年と描いてきたキャラクターで、大ゴマの決めポーズもあらゆるパターンを描いてきたように思えるんですけど、それでもこのシーンは今までにない新鮮な絵が描けた気が自分でもしていて、非常に気に入っている1枚です。

相棒の書いてきた原作を読んでこのセリフを見た時に、このポーズがすんなりと頭に思い浮かんだんですね。畏(おそ)れ多すぎる例えですが、かのミケランジェロが彫刻製作について、こういうことを言ったそうなんです。『どんな石の塊(かたまり)も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ』と。

このテリーマンを描く際に僕もその言葉が少し感じ取れたような感覚があって、白紙の原稿用紙の前に座った時、すでにもうこの線ができていて、それをなぞるような感覚で描けました。おかげでほとんど修正なしの一発で描けて、それが自分でも驚きでしたね。

それにこの回は、このシーンに持ってくるまでのコマ運びもリズム良くできましたし、全体的に描いていて非常に楽しい回でした」

ネメシスVSラーメンマンの異種格闘技を思わせる大熱戦、そして強敵ジャスティスマンに立ち向かうテリーマンの勇気の行方は…!? 今回、ご紹介したシーンも含むJC『キン肉マン』53巻の詳細はこちらまで→http://www.s-manga.net/book/978-4-08-880693-8.html(一部試し読みあり)

★次回“ゆで原画”第3回はJC『キン肉マン』54巻(2016年4月4日発売予定)の刊行後に配信予定。お楽しみに!

(取材・文/山下貴弘)