史上最大規模の情報漏洩事件に発展している「パナマ文書」スキャンダル

タックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れの“顧客データ”が大量流出した「パナマ文書」スキャンダル。各国の首脳クラスの政治家、財界人、トップアスリート、俳優など超大物の実名が飛び交い、史上最大規模の情報漏洩事件に発展している。

パナマ文書には、日本の約400の個人、企業の情報も含まれるという。ただし、当初ネットニュースなどで広まった「電通」「JAL」「三菱商事」などの名前は“ガセネタ”。2013年に公表された「オフショアリークス」という別文書と、今回のパナマ文書が混同されたようだ。

実際には、現段階でパナマ文書に含まれていることがわかっているのは大手警備会社セコムの創業者一族くらい。あとは今後の追加発表で何が飛び出すか…だ。

この世界的スキャンダルの流出元は、パナマの弁護士事務所モサック・フォンセカ。外貨獲得のために税率を極端に低く設定している国や地域(タックスヘイブン)に、租税回避のための法人(多くはペーパーカンパニー)を設立したい顧客の支援を主業務とし、この分野では世界最大手のひとつだ。

この事務所のコンピューターがハッキングされ、1977年の創業時から2014年末までの顧客関連データ――電子メール、PDFファイル、テキスト文書、画像など合計1150万件ものデジタルデータが盗まれたのだ。データ総量は2.6テラバイトで、2010年にウィキリークスが公開した米政府秘密文書の約1500倍に上る。

後にパナマ文書と呼ばれることになった、このデータの一部がミュンヘンの「南ドイツ新聞」にメールで送られてきたのは2015年初頭。差出人の名前はジョン・ドゥ。

英語圏では男性の身元不明者に対してよく使われる仮名だ(日本でいえば「名無しの権兵衛」みたいなもの)。つまり、ベタな仮名を名乗る謎の男から、いきなり超弩級のスキャンダルが持ち込まれたわけだ。

「命の危険にさらされている」と面会を拒否

ジョンは「命の危険にさらされている」と、記者との面会を拒否し、連絡手段は暗号化されたチャットのみ。記者が「狙いはなんなのか」と聞くと、ジョンは「悪の撲滅だ」と答え、なんの見返りも求めなかったという。

しかし、ジョンから毎日送られてくる大量のデータは、調査チームのキャパシティをはるかに超えていた。そこで南ドイツ新聞は、非営利団体ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)に協力を要請。日本の朝日新聞、共同通信社も含む世界80ヵ国、376人のジャーナリストが調査・分析を進め、今年4月3日に「パナマ文書」の第1弾が大々的に公表されたのだ。

それが今、世界中でスキャンダルを巻き起こしているのはご存知の通り。しかしここで気になるのは、この「ジョン・ドゥ」なる人物が、一体、何を目的として「パナマ文書」をリークしたのか? そして、彼の正体は何者なのか?ということ。

月曜発売の『週刊プレイボーイ』18号では、このジョン・ドゥの正体を追求。国際調査チームの背後に潜む怪しい影から、謎の人物の真相に迫っている。国家的な駆け引きと思惑が暗躍する、その背景とは…? ぜひ本誌でお読みいただきたい。

(取材・構成/小峯隆生)

■週刊プレイボーイ18号(4月18日発売)「超弩級スキャンダル 『パナマ文書』の黒幕の名前」より