『報ステ』の真価が問われるのはこれからだが…

リニューアルスタートとなった『報道ステーション』(テレビ朝日系)が上々の滑り出しを切っている。初回4月11日の視聴率が12.0%、翌12日はなんと、14.1%!

だが、TV業界関係者の評判は芳(かんば)しくない。

「硬派なイメージがなくなった印象。軸がなくなったというか、番組がフワッとした感じになってしまった。トップニュースもゴールデン街の火事や保育園問題など、当たり障りのないものばかり。好視聴率はリニューアルしたことへの視聴者からのご祝儀という側面も強かったのでは?」(民放制作関係者)

当のテレビ朝日内部からも、こんな声が聞こえてくる。

「実は放送開始前から『つまらない』『これでは持たない』の評価しきりなんです。4月初め、実際の取材VTRを使い、本番さながらのリハーサルを行なったんですが、新キャスターの富川悠太(とみかわ・ゆうた)アナとコメンテーターの後藤謙次・共同通信客員論説委員の会話がまったく弾まない。

後藤さんはぼそぼそと歯切れの悪いコメントをするだけだし、富川アナは聞き役に回るだけ。『これではスタート前から番組崩壊だ』と、スタッフがパニックになったほどです」(『報ステ』制作スタッフ)

報道番組に必要な“牙”を抜かれたとの声も…。これまで『報ステ』スタッフは、「スタッフルーム」と呼ばれる独自スペースで作業をしていたのだが、4月からは報道センターのニュースフロアで、政治部の記者と一緒に作業をするようになったという。

あるテレビ朝日社員はこの変化を「古館時代に比べ、報ステ内の風通しがよくなった証(あかし)」と歓迎するが、別のスタッフはこう首を振るのだ。

“牙”を抜かれた象徴的な事件?

「古館時代の『報ステ』は政権がイヤがるニュースも流してきました。当然、官邸はテレビ朝日の政治部を叱る。すると政治部は『報ステ』に『もっとお手柔らかに』と苦情を持ち込んでくるのです。『報ステ』スタッフが独自のスペースで作業していたのは、そんな政治部からの苦情には耳を貸さないという意思表示でもあったんです。

なのに、4月からは報道センターのニュースフロアで政治部記者と一緒に作業をすると聞いて驚きました。これは『報ステ』が今回のリニューアルで報道番組としての“牙”を抜かれたことを物語る象徴的な事件です」

それが事実なら、『報ステ』は以前のようには政権批判のニュースを流せなくなる?

そんな『報ステ』に元経産官僚の古賀茂明氏がこうエールを送る。ちなみに、古賀氏は報ステのオンエア中、同番組に安倍官邸からの圧力があったことを暴露し、番組のコメンテーターを降板している。

「安倍政権批判を口にしない後藤謙次氏をコメンテーターに起用したことが象徴するように、今後、政権批判のトーンが弱まるのではと思います。でも、物を言わないで報道番組と呼べるのか? だからこそ、富川アナには聞き役に回るだけでなく、切れ味の鋭いコメントを発してもらいたい。

彼はキャスターを最低でも10年以上続けたいと意気込んでいるようですが、10年続投にこだわれば、どうしても政権や局上層部の意向を斟酌(しんしゃく)するようになる。むしろ一期一会の覚悟でキャスターを務めてほしいですね」

『報ステ』の真価が問われるのはこれからだ。

(取材・文/本誌ニュース班)