東京・中野にある「昭和浴場」の番頭として働きながら芸能活動をする祝茉莉ちゃん

“銭湯の番頭”と聞いて、どんな人が働いているイメージがあるだろうか? この時代では大半の人が、お婆ちゃんやお爺ちゃんといった高齢の方をイメージするはずだが…。

そこに、銭湯で働きながら芸能活動をしている21歳の女のコが!?と話題なのが、祝茉莉(しゅくまり)ちゃんだ。現在、東京・中野にある「昭和浴場」の番頭として働く彼女は、ミスiD2015で個人賞を受賞、多方面の業界から注目を浴びている。

そんな個性的すぎるプロフィールと不思議な雰囲気を武器にモデルとしても活躍する茉莉ちゃんを直撃! 「銭湯との出会い」や「プライベートなこと」まで話を聞いた!!

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―あの…本当に銭湯で働いているんですよね?

祝茉莉(以下、祝) はい、中野にある昭和浴場という銭湯で働いてます。

―一体、なぜそこに…。銭湯との出会いは?

 高校を卒業したあとに、旅行で京都に行きました。その時に泊まった宿が素泊まりの宿で、お風呂がなかったんです。で、そこのご主人に「うちはお風呂がないから近所の銭湯に入っておいで」って言われて行ったのが初銭湯になります。

―そこから、いきなりなぜ銭湯で働こうと?

 新潟県の南魚沼市っていう、すごい田舎なところから東京に出てきたんですけど、ちょっと寂しいというか、ホームシックにかかっちゃったんですよね。そんな時、ふらっと東京の銭湯に行ったら、帰り際に「おやすみなさい」って言われたんです。

普段、洋服屋さんでも飲食店でも「おやすみなさい」って言われることってないじゃないですか。それがグッと刺さったんですよね。人に「おやすみなさい」って言われてから寝るのって、とても久々だったんですごい感動しました。そこで「あ、お風呂屋さんで働きたいな」って思ったんです。あと、昔から日本的なものが好きなのも惹かれた理由ですね。

―なるほど。そもそも、なぜ東京に出てこようと思ったんですか? 

 昔から洋服が大好きで、自分の好きな洋服を掘っていくうちに東京のあるお店に行きついたんです。それで、そのお店の近くで生活したいなって思って上京してきました。

半年間、毎日通ってくれる人もいます

―すごい行動力ですね! 上京してすぐに銭湯で働き始めたんですか? 

 いえ。働けるまでに2年かかりました。銭湯って家族経営とかが多くて、なかなか働き口がないから全然見つからなかったんですよ。そんな時、銭湯好きが集まる「銭湯ナイト」というイベントに行ったら、昭和浴場のオーナーのタジマジックさんがマジシャンとしてショーをしに来ていて。そこで初めて昭和浴場を知りました。

後日、昭和浴場に行って、「銭湯ナイトで知りました。お風呂が大好きで2年間、銭湯のお仕事を探しています。ここで働かせてもらえませんか?」と、お伝えしたらご縁があり、それから働いてます。

―そこまでの時間と熱意が! で、銭湯ではどんなお仕事を?

 祝は、番頭に座って受付したり、洗濯をやったりしてます。

―働いてみて大変だったことは?

 基本的なお仕事は受付けだけですけど、浴場の掃除が大変です。

―働いていて、印象深い変わった人とかいました?

 えー。変わった人はいっぱい(笑)。でも、そういう人には常連さんが多いので仲良くなれて楽しいです。

―祝さんのファンも銭湯に来たりしますか?

 はい、来てくれます。それこそ、大阪から来てくれる人もいれば、半年間、毎日通ってくれる人もいるし。家族を連れてきてくれる人もいるし。

―熱烈! そんな銭湯でも大人気の祝さんがアイドル活動を始めたきっかけはなんだったんですか?

 私がちゃんとした「アイドル」かといわれると微妙なところなんですが、きっかけは知り合いのコがミスiD2014にエントリーして最終選考に残ったことです。最終選考では「自分をアピールできるものならなんでも持ってきてOK」だったので、そのコが自分をアピールする「もの」として私も最終選考に参加して。その後、プロデューサーさんに「祝ちゃんも出なよー」って言われて、2015年にエントリーしたら個人賞をいただけたのがきっかけです。

―すごい変わった経緯ですね…。では、そこから継続してアイドル活動を?

 いえ。正直、最近は世の中で言うようなアイドル活動はしてないんですよね。自分の思うアイドル像と世間的なアイドル論にギャップがあって…。

番台に座り続けて、そこで歳をとっていきたい

―自分の思うアイドル像とは?

 今のアイドルは絶対的に年齢が重要視されてると思うんです。一瞬の儚(はかな)さのような。でも、祝にとっては赤ちゃんからお婆ちゃん、そしてお爺ちゃんも皆、アイドル。特にお爺ちゃんやお婆ちゃんの包容力や穏やかさは天下一品で、本当の意味で温かい。だから祝は番台に座り続けて、そこで歳をとっていきたい。それが私にとってはアイドル活動になるんだと思います。

―なんか、めちゃくちゃ深い気が…! では銭湯以外で活動のメインは?

 モデルのお仕事が多いです。昔から写真を撮られることが大好きだったし、祝も物づくりが好きなこともあり、周りに物づくりをしている方が多くて。自分とカメラマン、そして関わってくれる人、みんなの考えてることを合致させて、ひとつの作品をつくり上げることはすごく楽しいです。

―ファッションやメイクが個性的ですし、モデルとしてもすごいハマってますよね! こだわりは何かあったりしますか?

 こだわりというか、いろいろなところにアンテナを張ることですかね。そこで引っかかったものを自分なりに解釈して取り入れるようにしてます!

―個性的な雰囲気はそうしてできてるんですね! そして、「祝茉莉」っていう名前も個性的だと思うんですが、どんな由来なんですか?

 下の名前は本名と同じなんです。それと私の大好きな「祝」って漢字を組み合わせました。「祝」っていう字は縁起がいいし、音もいいしで惚れちゃってるんですよね。ちなみにですが、祝茉莉は「祝 茉莉」じゃなくて「祝茉莉」でひとつの塊です。

―そこまで字に思い入れがあるって珍しいですね! そんな「祝茉莉」ちゃんの恋愛についてもお伺いしたいんですが、どういう人がタイプとかある?

 タイプは、外見だと年上で目が細い、髭の人。中身は、祝がわがままで甘えたがりなので優しい人がいいですね。いい意味でうまくをあやしてくれる人みたいな。それと、祝の好物がりんごなので、りんごを剥(む)いてくれる人ですかね。

―りんごはまだしも、難易度高そう(笑)。ちなみに、休日は何して過ごしてるんですか?

 家で料理やお菓子を作ったりしてます。人にものをあげるのが好きなんで。みかんとかも。

祝さんおオススメの都内の銭湯3選!

―もうすでにちょっとお婆ちゃんっぽいですね(笑)。

 いいお婆ちゃんになるっていうのが夢なんで嬉しいです。

―じゃあ、お婆ちゃんっぽいって言われても嫌じゃないんだ?

 全然嫌じゃないです。むしろ、たまに人間ぽくないとか妖怪ぽいとかって言われたりもするんですよ。でも、私は人間なのにそんなこと言われるなんてすごいなって思うし、嬉しい。そう見えるほどの魔力があるのかなって。だから、これからもっと魔力を磨いていきたいですね(笑)

―その発想も素晴らしいですね! 祝さんのよりいっそうの活躍を期待してます! では最後に、都内のオススメ銭湯を3つ教えてください!!

 いっぱいあって選べないですが、ひとつ目は日暮里の雲翠泉さん。ここは、もはや美術館みたい。壁には日本昔ばなしの物語みたいな凄い価値のある絵が張ってあって、それがすごいかっこいい。さらに、浴槽がたらい型で浴場の真ん中にあるんですよ。で、富士山のペンキ絵も派手。おすすめです!

ふたつ目は上野の燕湯。ここは、なんか江戸っぽいです。その理由としては、お湯がすっごく熱いのと、みんなお風呂の時間が短いこと。お風呂ってゆったりつかるイメージがあるけれど、この銭湯は朝の7時からやってて、1日の始まりに自分に渇(かつ)を入れるために来る人が多いんです。建物も有形文化財に登録されてて立派でかっこいいのも見どころ。

最後は、銀座の金春湯。ここは、繁華街の料亭とか綺麗なお店が建ち並ぶ中にあるビル銭湯。だから、趣(おもむ)きのある入り口とかじゃないけど、大きな浴槽と素敵な鯉の絵が魅力的です!

あとは、もちろん祝の働いてる昭和浴場もおすすめです! 東京では珍しいタイル絵の富士山があります。是非会いに来てください~!

―ありがとうございます! 皆さん、GWの終わりに最後はゆっくり銭湯で疲れを癒やすなんていうのもいいんじゃないでしょうか!?

(撮影/松岡一哲 取材協力/昭和浴場)

●祝茉莉(しゅくまり)新潟県魚沼市出身。ミスiD2015個人賞(草野絵美賞)。現在、中野にある銭湯「昭和浴場」にて番頭を務めている。○5月8日、杉並区にある「井萩会館」にて祝茉莉主宰のフリーマーケット「祝ふりま」を開催予定。詳しくはTwitterにて。Twitter【@syukumari】 Instagram【@syukumari】