マリーン朝王族の墓地。あまりの天気の良さに、イスラム圏だけどひさびさに肩出しちゃった

サラーム! 前回は「青の街」だけにちょっぴりブルーになったりもしたけれど、気分も新たに101回目の街はフェズ! まだ旅は終わりましぇーん!

てことで、バスで南へ5時間。フェズの新市街にはシャウエンのような魔法使いファッション(民族衣装ジュラバ)は見当たらない。ショッピングモールやバーガーキングなんかもあって、「モロッコ、結構、都会なんだなー」と印象はガラリと変わった。

でも壁に囲まれたメディナ(旧市街)に到着すると、やっぱり魔法使いたちが出現。ここは「迷路都市」と言われるほど路地が複雑に入り組んでいるから、シャウエンでのように迷子にならないように気を付けよーっと。

メインの大通りを外れなければ意外と迷子にならずに歩けたよ。人生は迷子ですけど……

さて、「リヤド」というモロッコ伝統の「中庭のある邸宅」スタイルの宿に着くと、ミントティーで迎えられた。基本的にイスラム圏にはお酒がないので「This is モロッカンウイスキー」というギャグがお決まりらしい。

「『MOCO’Sキッチン』か!」とツッコミたくなるほどの高さからジョボジョボと注がれたミントティーは、大量の白砂糖が入っていて甘い甘い。お酒のかわりに甘味が嗜好品なのかしら。

中庭が四角く囲われた邸宅型宿「リヤド」

宿主と言語エクスチェンジ。アラビア語は難しくて数字も覚えられない

早速、メディナの入り組んだ路地を散策すると、モロッコ特有の革製品やカラフルでかわいい雑貨がズラリと並んでいて「キュン」。これは女子にはヤバイ。

吸い込まれるようにモロッコ伝統の履物「バブーシュ」のお店へ…。すると、シュッとした男性店員さんが笑顔で「This is モロッコアディダス」だってさ!

どうやらモロッカンピーポーはこのパターンのギャグがお好きなよう。「ヤダ~、ウケルー!」とベタに背中を叩いてみたけど、去り際に握手しようとしたら、「あ、すんまへん、僕、ムスリムなんで」と断られました(ハグや握手など異性に触れるのは宗教のタブー)。ギャグは言うけど基本的にはマジメなんですね。

バブーシュ。いろんな種類があるけど私はシンプルなのが好きだな~

丘に登ると……ナニコレ珍百景!

そしてシャウエンでは子供に睨(にら)まれてばかりいた写真問題だけれども、フェズはみんな人懐っこい~。子供が挨拶してくれるし、モロッコ人のほうから「一緒に写真撮ってくれませんか~?」と言ってくれる。喜んで!

この子、絶対イケメンになる!

モロッコ女子グループ

人々の感じの良さに私はご機嫌で、引き続きフェズ散歩。下町の商店街のようにお店が連なっているので、歩きながらヒヨコ豆をつまみ、絞りたてのフレッシュなオレンジジュースをゴクッ。

ソーセージやひき肉を炒めた肉ミックスサンドイッチ(約120円)でお腹を満たす。お祭り気分でなんて楽しんだろう♪

優しくて陽気なモロッコ人

すると、「ナメシカワ~、ナメシカワ~」と声をかけられた。フェズ名物の「なめし皮」工房見学の勧誘だ(外国語のような日本語のようなどっちつかずのサウンドは、「ダレノガレ」を初めて耳にした時の印象と似ている)。

これについて行くと、恒例の「道案内したからお金チョーダイ!」と言われるわけなんだけど、その額は数百円だっていうから安いもんだ。お金を請求されたと怒る旅人も多いけど、それくらいのチップは払ってあげようよ。

いや……そう思うのは、モロッコ人の勧誘の仕方がかわいらしいからかも。なんかちょっとこう、謙虚さを感じるのよ。

といいつつ、なめし皮工房はミントの葉を鼻の穴に詰めなきゃやってられないほどの強烈な匂いが立ち込めているというので、ちょっと躊躇(ちゅうちょ)し「またあとで」。

天気も良いので、旧市街を囲む壁から飛び出し「マリーン朝の墓地」がある小高い丘に登ることにした。すると、そこには……予想外のナニコレ珍百景!

広々とした丘に広げられたのは、いくつもの動物の皮・皮・皮!

皮が丘の上にいっぱい広げられていた

両手両足を広げた動物の形をしている。ウシ? ヤギ? ヒツジ? 体から剥(は)がされた皮が丘の上にこれでもかと並べられていた。これが革製品となって売られていくのだろう。

結局、ナメシカワ工房には行かず、私は偶然見つけたその光景に見惚れて、皮が回収されるまで丘で過ごした。

ひとつ、皮の忘れ物があったよ。忘れられるなんてカワいそうな皮だろ

回収された皮はロバに積んで街へ運ぶ

現地人の結婚式にまぎれこむ

終始満足のフェズ散歩を終え、リヤドに戻ると、宿の前ではパレードのような団体が音楽を奏で、何やら騒がしい。『ハメルンの笛吹き』のネズミのようにその行列について行くと、たどり着いたのは…これまた珍百景!?

賑やかに迷路を練り歩く行列

とある邸宅の中庭に着飾った人たちがいっぱい。そう、これは現地人の「結婚式」! 親族や友達らしき人たちの他、ご近所ぽい人や子供たちもたくさんいる。主役はまだだったけど、ドアは開け放したままで誰でもウェルカムって感じ。

謎のアジア人が、人生一番のお祝いの席に混ざりこんでいるというのにみんな温かい。楽器隊の演奏を見届けた後、さすがにこれ以上長居してはいけないなと思い帰ろうとすると、

「21時になったらディナーが始まるから食べにおいでよ」

とまさかのお誘いが。半信半疑で21時に戻ってみると、声をかけてくれた人は見当たらない。それでもみんな優しく接してくれたものの「アラビックできる?」と聞かれ、「あ、シュピーヤ(少し)。サラーム(挨拶)とシュクラン(ありがとう)と、 ジャミラ(美しい)だけ……」

言葉もできないのに、調子こいて混ざりこんでやっぱり図々しかったかな…。気まずさに肩をすくめ、そそくさと退散した。もし私がアラビア語、いやせめてフランス語が少しでもできたら、もっと楽しく参加できたのになぁ。

美しく着飾ったモロッコ女性たち

それにしても、フェズの人たちは観光客慣れしてるのか、温かくオープンで本当に優しい。スペインで「モロッコでは客引きがしつこい」と聞いていたので警戒していたけど、案外そうでもないよ。

メディナ内を歩いていればもちろん声はかけられるけど、断ればすんなり引き下がってくれる。相変わらずの「トウキョ? オサカ?」という声かけには飽き飽きだけれども、ついに「セタガヤ?」と言われた時は、思わず「それ、新しいね! いいよいいよ!」と褒めてしまった。

日本の旅人が値切るせいか、「ビンボープライス」という妙な用語もよく耳にした。でも教えたのは日本人だからモロッコ人は悪くない。

そして大好きになったフェズを去る日、私はなぜか「スケベ、スケベ」と言われ、街を後にしたのだった。

フェズいいところだなぁ

【This week’s BLUE】フェズのメディナ(旧市街)の入口、ブージュルード門。

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】instagram【marysha9898】