党大会が国民へのプレゼントなしになったのは、金正恩政権が深刻な金欠に陥っているため?

「最後まで金正恩キム・ジョンウン氏からの贈り物リストが報道されることはありませんでした」

金正恩を党委員長に選出して閉幕した朝鮮労働党第7回大会を取材したコリアウオッチャーがこうつぶやく。金正恩の贈り物リスト? 一体、なんのことだ?

「党大会は党の方針や人事を決めるだけでなく、金一族の偉大さを印象づけ、忠誠心を高める場でもあるんです。そのため、過去の党大会では指導者から国民へプレゼントが『下賜(かし)』され、もらった住民が感涙にむせぶ光景が平壌(ピョンヤン)放送などで大々的に報道されたものです」

確かに、1980年に開かれた前回の第6回大会では、豪華なプレゼントが大盤振る舞いされた。庶民には布団、服地、菓子など。エリート層の党大会参加者3千人に至っては、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ミシン、扇風機、テープレコーダーなどの家電製品に加え、オメガの時計、高級ウイスキー、イギリス製の服地など、実に2.5tトラック1台分もの物資が贈られたのだ。前出のコリアウオッチャーが続ける。

「それが今回の党大会では、贈り物に関するニュースは一切なし。一部地域で歯ブラシセットなどが有償で配給されたとの情報はあるものの、住民にプレゼントが『下賜』された形跡はありません。それどころか、金正恩政権は党大会を成功裏に迎えるため、国民に平均月収の20%ほどに相当する1千ウォン(約90円)を毎月、銀行に貯金せよと強要する始末です。みんな表向きは金正恩バンザイを叫んでいますが、内心は不満タラタラのはずです」

北朝鮮情勢に詳しいコリア国際研究所の朴斗鎮(パク・トゥジン)所長もこううなずく。

「私が把握しているのは5月6日、米国の自由アジア放送が『党大会参加者に42インチ以上の薄型液晶テレビが贈られるとの噂(うわさ)が北朝鮮国内で広まっている』と伝えたニュースくらいのもの。大会参加者でこのレベルですから、一般住民にはプレゼントがあったとしても、わずかなお菓子が『下賜』されたくらいのものでしょう」

国民の内心は不満タラタラ?

党大会が国民へのプレゼントなしになったのは、「金正恩政権が深刻な金欠に陥っているせい」と、朴所長は指摘する。

「国連の制裁が効いています。特に最大の貿易国である中国が、鉱物資源の輸入をストップさせたことが響いている。昨年の北朝鮮の対中輸出約28億ドルのうち、鉱物資源輸出の占める比率は5割ほど。その利益がなくなり、金正恩政権は深刻な外貨不足に直面しているのです」

党大会では核・ミサイル開発の成果を誇示した金正恩党委員長だが、経済については「国家経済発展5ヵ年戦略」に触れたのみ。朴所長が言う。

「ネーミングは仰々しいものの、穀物生産量や発電量など具体的な経済目標値はなし。まともな経済計画とは呼べないシロモノです。おそらくへたに目標を定め、5年後に達成できなかったら指導者としての権威が失墜しかねないとビビったのでは? 金正恩党委員長は国民の暮らし向きなど、はなから眼中にないのでしょう」

36年ぶりの党大会も終わってみれば新味なし。未熟ぶりを露呈した若き指導者の行く末やいかに。

(取材・文/本誌ニュース班)