現在、モンゴル・レスリング協会会長として競技の普及・強化に尽力している元横綱・朝青龍

幕内優勝25回。圧倒的な強さで角界に君臨し、しかし時にはゴシップメディアもにぎわせた、元横綱・朝青龍ことドルゴルスレン・ダグワドルジ

現在は母国モンゴルのレスリング協会会長として競技の普及・強化に尽力する彼をモンゴルの首都で独占キャッチ! 旧知のカメラマンによるインタビューなだけに、元横綱はちゃめっ気たっぷりの笑顔を連発!!

***

4月下旬、UWW(世界レスリング連合)のリオ五輪予選がモンゴルの首都ウランバートルで行なわれた。

モンゴル・レスリング協会会長の朝青龍は、大会のメダルのデザインからTシャツのデザイン、表彰式のプレゼンター、世界各国から来たUWWの役員の食事まで、責任者としてすべてを自分の手で完璧にやろうと忙しく走り回っていた。そして、役員との食事から帰ってきた朝青龍をキャッチした!!

―横綱! インタビューお願いします!!

朝青龍 どこでやる?

―あ、もう始まってます!

朝青龍 え、始まってるの!?

―すみません、時間がないので早速! モンゴル・レスリング協会の会長になろうと思ったきっかけはなんですか?

朝青龍 そうですね、私には相撲で叶(かな)わなかった夢があったんですけど、それが何か、わかりますか?

―わかりません!

朝青龍 大鵬(たいほう)さんの最多優勝記録(32回。当時)を破りたかったんですけど、25回で終わってしまって。突然の引退で叶わなくてですね。非常に残念なことでした。そしてモンゴルに帰ってきて。

兄(スミヤバザル)がレスリングでオリンピックに出て、今は国会議員なんですけど、私に「レスリングを応援してくれないか」と言ってきてですね。相撲で叶わなかった目標をレスリングで叶えようと思っているんです。

モンゴルのレスリング協会は長い歴史があって、メダリストをたくさん出しているんですけど、まだオリンピックの金メダルがないんですよ。それを、叶わなかった自分の夢に代えて達成しようと思って一生懸命応援しているんです。

突然、いつもの「何言ってんだよ、バカ!」

自身が経営するビアレストランにてスマホをいじりながら、おどけた顔を見せる朝青龍

―世界選手権では金メダリストがいますが、まだオリンピックではゼロなんですね。

朝青龍 私は2010年に大相撲を引退したんですけど、縁あって同じ年の9月にモスクワであった世界選手権を見に行くことになって。その時、モンゴル女子が初めて金メダルを獲る瞬間を見て燃える気持ちがありまして、応援していこうと心に決めたんです。

―それで会長になられて。

朝青龍 会長になって3年目になりましたね。

―応援するというのはどういう?

朝青龍 そうね、言葉で言うのは簡単ですが、決まった道があるものではないので難しいものです。ステップバイステップで少しずつ前に進もうと。福田さん(富昭。日本協会会長)の協力でモンゴルの選手を日本に留学させてもらったり、合宿させてもらったりして感謝しています。

それとね、アジアのレスリングでは重量級の選手が少ないと思うんですけど、モンゴルでも同じ問題があるんですよ。まだモンゴル相撲のほうが人気なので、体の大きいコはみんなそっちにいっちゃう。モンゴル相撲はプロみたいなものだからね。そのコたちにオリンピック種目であるレスリングに来てもらいたい。

―モンゴルでも重量級不足問題があったとは。

朝青龍 そうだよ、アジアの国は日本も韓国も中国も国際大会を全然やらないでしょ。だから、モンゴルオープンという大会と、朝青龍カップっていう子供の国際大会をつくったんだよ。大会があれば興味を持ってもらえるし。

―おお、朝青龍カップですか。

朝青龍 そう、スポンサーがなかなか少ないから、100%自分持ちでカデット(15~17歳)の大会やってるんだよ。

―なんでそこまでしてやってるんですか?

朝青龍 何言ってんだよ、バカ! レスリングの普及のためだよ! 今年2回目なんだけど、日本やロシア、台湾、韓国、中国からも選手が来るよ(*大会は5月6~8日に行なわれた)。子供の国際大会は、アジアだけじゃなくて世界的にも少ないでしょ。やっぱりね、競技普及を考えたら、子供の大会をやるのが大事でしょと思うんですよ。

プレス席を回り、「時間があれば、皆さん一緒に食事しましょう」と労(ねぎら)うなど、周囲への気遣いも欠かさない

「東京五輪で金メダルを獲るのが4年後の夢!」

子供たちが「アサショーリュー!」と駆け寄ると、サインや握手に応じ、キスをしていた

―ところで、あの、なんかいつもと違って話し方が丁寧ですね(笑)。インタビューになるといつもですか?

朝青龍 俺、最近、丁寧な言葉でしゃべりすぎなんだよ。安倍首相とかとも会ってるし。

―プーチンさんとも会っていましたね。いや、こんなマジメなインタビューの予定じゃなかったのに(笑)。

朝青龍 ねえ!

―いつも「バカヤロウ」ばかり言われていたので、新鮮です。

朝青龍 「バカヤロウ」は相撲では合(愛?)言葉だろ!

―私、一般人です! ずばり、リオで金メダルは獲れますか!?

朝青龍 獲るために努力します! 獲ります!

―何個!

朝青龍 ふたつ!

―おお、強気ですね!

朝青龍 女子でふたつ! 58㎏級はまだ誰が代表になるか決まっていないけど、強い選手がいます。

―伊調馨(かおり)選手に13年ぶりに土をつけたオルホン・プレブドルジ選手ですね。

朝青龍 63㎏級もなかなかいい感じでいくと思うんで、あとはメンタルの問題とか、そういうのを強くしていきたいと思います。

―早速、夢がひとつ叶いそうですね。

朝青龍 そして2020年は東京でオリンピック。日本は私にとっては第二のふるさとなので、そこで金メダルを獲るのが4年後の夢です!

●このインタビューの全文は発売中の『週刊プレイボーイ』24号でお読みいただけます。中田英寿氏との交流や、自身の総合格闘技参戦の噂…朝青龍の近況が明らかに!

●元横綱・朝青龍(ドルゴルスレン・ダグワドルジ)1980年生まれ、モンゴル・ウランバートル出身。モンゴル相撲一家に生まれ、明徳義塾高校に相撲留学。99年に初土俵を踏み2001年初入幕。03年に第68代横綱に昇進。幕内優勝25回の成績を残し10年に引退。現在は実業家のほか、モンゴル・レスリング協会会長として奮闘中!

(取材・文・撮影/保高幸子)