事件現場となったライブハウス前(東京・小金井市)。被害者の冨田真由さんは容疑者からのプレゼントを送り返すなどして、恨みを買ったともいわれている

アイドルやシンガー・ソングライターとして活動していた冨田真由さん(20歳)が5月21日、ファンの男に首や胸など20ヵ所以上をメッタ刺しにされた残忍な事件――。

事件後、複数の現役アイドルたちに話を聞くと、「私もツイッターを一日中監視されていて怖い」「もらったぬいぐるみから盗聴器が出てきた」など、“ファンの行きすぎた言動”が続々と出てきた(前編記事「小金井刺傷事件で“明日はわが身”と怯える現役アイドルたち」参照)。

さらに、多くの現役アイドルが口をそろえたのが「出待ち、入り待ちをしている人を見ると、ちょっと怖いと思う」(Aさん・21歳)というもの。アイドルに「出待ち」「入り待ち」はつきもののはずだが、一体なぜか? 現役アイドル・Bさん(22歳)が解説してくれた。

「ライブ会場で活動するアイドルを応援してくれるファンの多くは良識的な人たちで、彼らの間では基本的に出待ち、入り待ちはご法度(はっと)なんです。もし、会場の出入り口付近で会っても『バイバイ』と言って別れるだけで、後をつけてくるようなことは絶対にしません。

駅のホームとかでバッタリ出会っても、多くのファンは“アイドルと一緒に電車に乗ってはいけない”と『お先にどうぞ』と譲ってくれるんです。なので、入り待ちや出待ちをしている人を見かけると『ファンじゃない変な人がいる!』と、ちょっと怖くなるんです」

大方のファンが、こうした暗黙のルールを守る一方で、これを知らなかったり、破ったりするファンにはアイドルたちも自然と警戒することになる。別の現役アイドル・Cさん(23歳)もこう語る。

「例えば“粘着”。これは握手会などで1分間だけしか話しちゃいけないって決まりなのに、その時間を超えて話してくる人や、物販の時にアイドルのそばにずっと張りついてしゃべってくる人のこと。

それから“説教厨(ちゅう)”。これは『今日、歌詞間違えたね』とか『その日は僕、仕事があるからライブを入れないでね』みたいに、まるでマネジャーや運営のような発言をする人。こうした人たちは、ちょっと扱い方を間違えると何をするかわからないので注意しています」

マナーやルールを知らないストーカー

今回の刺傷事件は“マニアックなファンによる事件”と思われがちだが、彼女たちに言わせると「ファンとしてのマナーやルールを知らないストーカーのような人物の犯行」ということらしい。

「今回の事件で『アイドルファンは危ないヤツが多い』とか『ライブハウスは危険だ』という声があるようですが、それは全く逆です。ライブハウスの中は知り合いばかりなので、何かあったらみんなが助けてくれます。実際、今回の事件後に『いざという時に僕が推しのアイドルを守れるよう、護身術を習い始めました』というファンの人もいましたから」(現役アイドル・Aさん・20歳)

ちなみに、「今回のように見知らぬ人物が出待ち、入り待ちをしていて、危険な雰囲気を察知したらどうするか?」と現役アイドル・Dさん(20歳)に聞いたところ、こんな冗談のような答えが。

「周りの女のコたちといろいろ考えたんですが、結局、『仲のいいファンの人に家まで送ってもらうのが一番安全かも』って答えにたどり着きました(笑)」

「ウソでしょ!?」と言いたくもなるが、二度と同様の悲劇が起こらぬことを願いたい。