「適当な人間ですから…」と言いつつ、やはり野球については愛ゆえに厳しく熱く語る江本さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、東北楽天ゴールデンイーグルスの前監督・デーブ大久保さんからご紹介いただいた第24回のゲストは元プロ野球選手・参議院議員の江本孟紀さん。

プロ野球の解説を長年務め、政界にも進出した“Mr.ダンディ”も来年で御年70歳の大台。だがプライベートでは最近、ハーレーを乗り回しているという変わらぬ壮快さで発言もズバズバ! 前回は政治家時代の裏話や持論を伺ったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―ちなみに、僕が50歳手前なんですが。年始に五十肩が出てきて、どんどん激痛で左腕を上げられないほど…。もうそれだけで気持ちが滅入ってるんですけど。

江本 それはね、へたる。僕もありますよ。それ両方きますから。もうゴルフもね、痛いから45度ショットです。こっちもここまで上がらないの。ここまで上げて、こうね…(身振りで説明)。

―それくらいは江本さんもあるんですね。見た目も全く以前と変わらないですけど。

江本 それはもうしょうがない。それは髪の毛がなくなる人と一緒。僕も結構、薄くなってますから。

―いやいや、何も変わってなさげですから(笑)。では、若さの秘訣とか聞かれるでしょうけど、やっぱり気持ちの問題ですか?

江本 なんなんでしょうね。特別ないかな。一昨日も実はCTだとか、血液検査全部見てもらったんですけど。内蔵脂肪なんて、こんな薄~いですよ。後はね、糖尿の数値が高い。それはなかなか下がらないです。糖尿病の薬で筋肉が落ちるしね、だいぶ痩(や)せました。そういう細かいのはあるけどね。

―糖尿は厳しいですね。見えないだけで、やはりそれなりにいろいろと…。

江本 かといって、こんなことしたくないしね(筋トレのポーズ)。

―スポーツジムとかは行かれないんですね! ではゴルフしたりハーレー乗り回すとか、体を動かすのは遊びの実践だけ?

江本 スポーツしてもお金にならないのはしないんですよ。悲しいでしょ、お金でスポーツしてた人間だから(笑)。

―それもダンディズムのような(笑)。でも体型もそんなに変わらないですし。体質なんですかね。

江本 酒飲まない代わりに、ご飯食べるのは好きですよ。この浅草も(この日の取材場所)、だいぶ前から好きでね、メシ屋も蕎麦屋にとんかつ屋、いろいろあるでしょ。もう、食い物しか興味ないから。それ取ったら楽しみないもんね。

―(笑)、でもそれで体型を保たれてるのがすごいですよ。そういえば、松崎しげるさんにもゲストで語っていただいて、若々しさに驚いたんですけど。あんな真っ黒なのに実は顔にしみがなくて。番組で調べてみたら、30代の女性でも60個くらいあるところ、1個ちょいしかなかったという。本当に色素が黒くなってるだけなんですって。

江本 あの人、俺よりふたつ下だよね。2、3年くらい前かな、番組の収録で一緒に旅して…鬼怒川温泉の奥のほうにふたりで行ったんですよ。やっぱり元気だったね、あの人は。

「野球選手でも生意気なヤツがいたらやってやるよ(笑)」

―もう奇跡のような人で。松崎さんの細胞を採って培養とかしたら、なんか発見できるんじゃないかって話に(苦笑)。しかも毎晩一升飲めるってくらい酒豪だそうで…。

江本 僕は元々、酒は全く一滴も飲まないですから。煙草もね、35年くらい前やめて…。ただ、うちの周りにも酒、煙草、一切やらないけどガンになった人もいるし。わかんないですよ。まぁ、僕の場合、究極の楽天家ですからね。

―そこ一番大事ですよね(笑)。自分で老け込んだとか意識するより、カッコつけでもダンディであろうとするのがプラスに働くんでしょうし。

江本 それで言うとね、うちは息子が40歳で、娘の旦那が37、8かな。時々ね、おまえら、俺と対マンで喧嘩して、勝てるようになったら偉そうに言えって。どうなんだよって言ったら、「いや、無理です無理です」って、ふたりともね(笑)。

―ははは、いまだに子供にまで戦闘態勢で。男としてというか、生き物としてライオンですね(笑)。

江本 そうそうそう。いや、野球選手でも時々、生意気なヤツがいたら、いつでもやってやるよっていうのはあるもんね(笑)。体かけて勝負しやがれって。実際のところはわからんけど、やっぱり気持ちだけはね。

―それでまた、言いたいこと言ってるのも大事でしょうし。

江本 ただ最近ね、そういうことをばーっと言うにしても、どっか救いがないといかんわけです。ジョークとかもね、それが通じない世の中になってて面白くないなと。

―それこそ、いちいち馬鹿正直にとって、シャレがない。

江本 ほんと馬鹿正直なんですよ。もうちょっとこう余裕っていうかね。グレーゾーンがないでしょ、白黒ばっかり。

デーブさんともその話になりましたよ。野球賭博問題にしても、選手間のちょっとした罰金や内輪の賭けまでほじくり返して世知辛いなと。

江本 これはまた話が違うけど、プロ野球の世界でもね、上下関係がなくなったのもイヤなんですよ。世の中、上下関係じゃないですか? そんなもん、社長とフラットな新入社員なんているわけないんだから。野球も特殊社会ですけど、むしろ上下関係とかね、礼儀はやっぱり知らないとダメなんですよ。そこは今、欠けてるんでね。

―結構、その話は皆さん言われますね。時代だからとか、そればっかりじゃないと。

江本 で、あるスポーツの監督さんが来て言うのが、うちは選手を「くん」付けで呼んで、もう一年生も四年生もないと。みんな仲良しで風呂も一緒に入ったり、上下関係とかなしで成果上げましたって、すごく自慢してね。けど、これは教育方針としては間違ってると思うんですよ。

スポーツが上手くなるかならないか、まぁそれも大事なんですけど、それ以外に何が一番いいかって言ったら、運動部は特に上下関係を鍛える場なんですよ。理不尽なこともありつつね。そういうことを社会で実践できるために訓練する場として、ものすごいイイ効果を発揮するわけです。

それが今、フラットかなんか知らんけど、プロ野球でさえ、「くん」付けで下の名前呼んだりする監督いるのが、俺からしたらもう気持ち悪い。そういうのを賞賛する社会になってるんですよ。

「プロ野球をお涙頂戴の世界にひ弱くしたらダメ」

―年齢とか関係なくグラウンドでは仲間だからみたいな。ちょっとサッカー的というか?

江本 うん、サッカー的なあれ、嫌いなんですよ(笑)。あんなもん、社会出たら全く役に立ちません。僕の学生時代なんか、例えば大学4年間、運動部いてね、レギュラークラスと補欠で試合にほとんど出れなかったのと、6月頃になって就職どうかって言ったら、後のやつらが先に決まるんですよ。

生意気なスター気取りのやつとかね、レギュラークラスは一番遅いんです。会社に聞いたら「そりゃ4年間も殴られ蹴られしながら、上下関係鍛えられたヤツが会社でどんだけ使えるか」と。うまいことできてるんですよ、そこは。

―それこそ鉄拳制裁とか暴力行為を肯定するのではなく、集団の上下関係の中で打たれ強く、厳しく鍛えられて育つのはありますよね。

江本 それはやっぱり、ある種の競争の厳しさだとか、礼儀含めてそんなものを知っていったほうが役に立ちますよ。それがね、今は全然欠けてるんです。まぁ、我が高知商業なんて、当時はとんでもない学校だったからね。もう、それはえげつなかったから、今だったら毎日犯罪みたいなものですよ(笑)。

もちろん、そういうもの全てがいいわけではないし、今それをやれというんではないけど、最低限の上下関係、礼儀とかね、歴史も踏まえて繋いでいかないと。

―アウトローで我が道を行く江本さんでも、そこは経験されて。鍛えられて今の自分があると。

江本 だから、今はちょっと優しすぎなところがあるよね。TVの番組でも、トライアウトした選手のドキュメントとかあるでしょ。お涙頂戴でね、あれも僕は嫌いなんですよ。まだやりたいからってチャンスを与えることもあるけど、所詮はプロ野球選手としては落伍者ですよ。潔(いさぎよ)く、次のことさっさと考えないと。

―厳しいですね(笑)。潔すぎた江本さんの言葉だと、説得力ありすぎですが。

江本 いや、ほんと冗談じゃない。プロ野球の世界をそういうお涙頂戴の世界にね、ひ弱くしたらダメなんですよ。ファンだって、今は居酒屋で盛り上がる代わりに野球場行ってるかもしれんけど、そんなぬるい空気になってきてるんでね、これは言わないと。

―本来的に弱肉強食のね、ギラギラして戦う場がアミューズメント化してるような?

江本 そうですよ。それでアメリカ的なものにね、メジャー風に移行してるっていうんなら、厳しさも出してこないと。向こうの競争なんて、それこそマイナーから厳しいなんてもんじゃないでしょ。日本型の平和なね、ひ弱なとこでぬるくしてたらダメなんですよ。

―いや、なかなかズバッとそう言える人もいなくなってるんで。やっぱり江本さんならではですね。

江本 いや、だから本来は客の教育もしないといけないんですよ。もう、なんか違う世界になってきてるから、野球場が。アメリカがなんでもいいわけじゃないけど、行ったらわかるんですよ。そんな集団で歌を歌ったり踊ったりはないですよ。

「昔の試合っていうのは、野球という喧嘩をしてた」

―まぁ女性ファンも増えて、楽しみ方が多様化してますけど。メジャー的な一挙手一投足に集中して観て、ブーイングもすれば、スタンディングオベーションも…というのとは違うものがありますね。

江本 ちゃんと野球観てるから客席が近いしフェンス低いんだということをね、まぁ言ったってわかんないんですけど。それで、サッカーと同じことやっててもいかんでしょ。

―まぁ実際、昔よりはるかにボールパークにはなって、観客動員の努力はされてるわけですけど。僕が子供の頃、まだ地元・仙台の宮城球場がロッテの本拠地だった時代があって。昭和50年前後、ちょうど江本さんも南海にいた頃ですかね?

江本 ロッテが本拠地の頃、よく行きましたよ、仙台。

―ロッテだけに“バブルガムボーイズ”とかいう少年会員のファンクラブもあって(笑)。チケットもらったり、よく観に行ったんですけど。スゴい印象に残ってるのが、その南海戦で球場入りする選手が目の前を通って、藤原さんとかが歩いてきたんですよ。

江本 藤原満(みつる)さんね。

―そこで「ほんま、いっつも汚(きった)ない球場やな」とか言ったのを聞いて、スゴいショックを受けて。なんか恥ずかしいというか、辱(はずかし)められたというか(苦笑)。

江本 がっくりして(笑)。

―子供心に傷つきまして…。ところが、それから11歳で大阪に転校して、当時の南海の本拠地・大阪球場に観に行ったら「大して変わらんやん!」と。ツッコミ入りました(笑)。

江本 そうそう、あの球場、古かったね(苦笑)。もう、客のガラも悪いし(笑)。

―基本、めっちゃ閑古鳥(かんこどり)で、一塁側のヤジが三塁側まで聞こえて客同士がやりあってるんですよ。で、選手にも加藤英司(阪急、現オリックス)さんとかに「歩く姿はボケの花~!」とか囃(はや)したてるのが響き渡ってるんですよね。

江本 そうそうそう。ヤジ合戦が面白いよね。「南海電車、ボロ電車~」とか。もう、やじり合いが面白かったんですよ。…あとね、1年に1回くらい、いきなり外野スタンドに投光機がぱーっと当たると、警察官が大勢で入ってきて。博打(ばくち)やってる連中を捕まえてるの。そういう野球賭博までありましたから。

―とんでもないですね(笑)。まぁそういうヤジ合戦も楽しくて、本当に面白い時代でしたけど。なんかギラギラした怖さもあって、大人の男の世界を怖々、垣間見てるような…。

江本 もう喧嘩でしたからね、基本的に我々の時代は。今はもう、仲良しが野球のプレイをする、プレイゲームですよ。昔は野球の試合っていうのは、野球という喧嘩をしてた。だからファンのヤジも選手同士のヤジもすごかったしね。

次回ゲストは、男女問わず素敵な女性と憧れられる…

―喧嘩してるのを野次馬が観てるような? それで命がけでデッドボールくらったりも…。

江本 そうです。で、当てたらやられるしね。そこにもピッチャーと打つほうとの、なんか阿吽(あうん)の呼吸みたいなのがあったんですけど。今、ないですから。

―そういう野武士というか、当たり前にみんなが侍だったという時代のような。

江本 だから、それも昔がいいとか悪いとかじゃなくて、そういう時代もあったということくらいは知ってたほうがいいって話でね。そりゃあんな時代に帰れないですから、今のほうがいいに決まってますよ。そら閑古鳥でやってるよりはね。地方で試合してあんだけお客さんが満員なるんですから。昔からしたら考えられないわ(笑)。

―そういう歴史を経て、何千万、何億ってもらう選手も今いるわけですからね。

江本 だから、この反動がこないようにしないとなと思うわけです。球団は客が来て儲(もう)かりゃいいやってだけの話ですけど、実際はあんだけ客が来ても赤字なんですから。

―本当にそういう球界のビジョンであり未来像をしっかり描くためにも、球団経営者や究極はコミッショナーなんでしょうが、現場のことも歴史も知っててという人物に携わってもらうのが健全な気もしますけど。どうですか、江本さん?

江本 まぁ僕もね、ちょっと前に頼まれて母校の法政大学で教えたりもしたんですよ。国内外のスポーツ政策なんかをね。要するに、スポーツだって政治が関わらないと一切できないわけです。関係ないとか切り離してとか馬鹿なこと言うヤツも世の中にはいるんですけど。そんなことありえないですから。

で、4年間やったんですよ。やる以上はまぁ一生懸命やってね、学生にいい加減なことできないから。人生の中で一番勉強したからね。東大受かるんじゃないかって思うくらいやったんですよ(笑)。

だけどやっぱりもう歳とってきてね、さすがに疲れてしんどいんですよ。それなりに刺激もあったし、まぁ今考えたらいい勉強をしたと思うよな。でもそういうのも、もう他のヤツがやってほしいよね。僕は、あとは本当に時間できたらのんびり四国でも周ってね…。

―ハーレーでですか(笑)。もう、すっかり隠居するような…。そこはもう少しツッコミたいところなんですが、だいぶ時間もオーバーしてるということで、そろそろお友達を…。

江本 はいはい、木の実ナナさんとか、どうですかね。あのね、最初の出会いは雑誌の対談か何か、はっきりとは覚えてないんですけど。そこからコンサートや芝居を観に行かせてもらって。なんか肩の調子が悪かった時にお医者さんの先生を紹介したりね。

―男性も女性も皆さん憧れる素敵な女性のイメージですよね。

江本 そうそう、それこそいつも元気で若々しいですから。パワーがあってね、若い世代を引っ張っていってほしいなと。よろしくお伝えください。

―わかりました。本日は長いことお話しいただいて。また機会がありましたら是非お願いします!

江本 いつでもいいですよ。この辺で美味しいもの食べるんでもいいしね(笑)。

第25回は6月19日(日)配信予定! ゲストは女優・歌手の木の実ナナさんです。

●江本孟紀(たけのり)1947年7月22日、高知県生まれ。高知商業、法政大、熊谷組を経て東映フライヤーズにドラフト外で入団。その後、南海ホークス、阪神タイガースで活躍。プロ通算成績(投手)113勝126敗19セーブ。引退後、出版した『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(KKベストセラーズ)がベストセラーに。タレント、役者としても人気となり、92年からは参議院議員を2期務める。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。四国アイランドリーグplus「高知ファイティングドッグス球団」総監督も務める。

(撮影/塔下智士)