結果が違っていたら「あれはしつけだ」と言う人はいなかったでしょう…

先月28日、両親に「しつけのため」と北海道七飯町の山林に置き去りにされた後、行方がわからなくなっていた田野岡大和(たのおか・やまと)君(7歳)が、今月3日の早朝に現場から数㎞離れた鹿部町の陸上自衛隊の駒ヶ岳演習場内で無事保護されたーー。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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もしもあの山中に置き去りにされたのが、あなただったら。携帯も財布も持っておらず、土地勘も山暮らしの経験もなければ、成人男性にとっても命の危険を感じる状況でしょう。

他に車も通らず、必死の思いで歩き回り、偶然、山小屋にたどり着いた、あなた。

水だけで6日間しのぎ、奇跡的に救助されます。「何度言っても生活態度が改まらないので、懲(こ)らしめようと置き去りにした。すぐに戻ったが見失った。悪かった。おまえを愛している」と親は言いました。

「すごいサバイバル能力ですね! 親もよかれと思ってのことですから許してあげましょう」と世間は盛り上がります。

これが、よその7歳の男の子の身に起きたことなら「美談」なんでしょうか。子供は大人と違って聞きわけがないし、親が信念を持ってやったことなのだから、いいだろうと?

親子であっても、教育目的であっても、人を死ぬような目に遭(あ)わせるのは犯罪的な行為です。子供は親の持ち物ではありません。身体的にも能力的にも未熟で、大人の保護が必要な、ひとりの人間なのです。

結果が違っていたら「あれはしつけだ」と言う人はいなかったでしょう。

小島慶子Kojima Keikoタレント、エッセイスト。女性誌などで子育てエッセイを連載。子育てに悩んだ際に目にした「これは虐待ではないかと悩む親よりも、虐待ではないと言い切る親のほうが深刻」という専門家の言葉が心に残った