気を引き締め直すという意味では、収穫のある敗戦だったと語るセルジオ越後

9月開幕のロシアW杯最終予選を前に、いい薬になったんじゃないかな。

日本代表がキリン杯に臨み、初戦のブルガリア戦に7-2と大勝したものの、続くボスニア・ヘルツェゴビナ戦は1-2で逆転負けした。

やる気のないブルガリア相手から大量得点を奪ったことで、世間は「アモーレ祭り」とばかりに騒いだけど、ボスニア戦の敗戦で終わったね。

確かに、ボスニアはいいチームだったよ。選手もファイトしていたし、久しぶりに歯応えのある相手だった。でも、彼らは欧州選手権(EURO)出場を逃した国で、しかもベストメンバーじゃない。そんな相手に日本はプレスをかけてもかわされ、技術でもフィジカルでもスピードでも負けていた。本田、香川が出場しても結果は変わらなかったと思う。それほど内容は悪かった。

特に気になったのは守備面。ブルガリア戦の2失点は自分たちのミスから許したもの。また、ボスニア戦の2失点は先制点を奪った直後、相手が選手交代をした直後と、いずれも注意が必要な時間帯だ。集中力や試合の流れを読む力という部分で甘さを見せた。

ハリルホジッチ監督の采配にも疑問が残る。強化の一環とはいえ、タイトルがかかった試合で本人も「優勝を狙う」と言っていたはず。なのに、ボスニア戦で若い浅野を先発させたり、終盤に小林祐を代表デビューさせたりしている。彼らにチームとしてのコンセプトはしっかり伝わっていたのかな。これは結果論だけど、浅野は試合終了間際にシュートを打てる決定的な場面でパスを選択した。あれは本当に残念なシーンだったね。

ハリルホジッチ監督は、メンバー発表会見時に大久保を招集しない理由を聞かれて「チームに合うイメージが湧かない」と答えていたけど、現時点で彼の言う「イメージ」に誰がフィットしているのか、僕にはわからない。

最終予選を突破できてもブラジルW杯と同じ

キリン杯が終わって感じたのは、日本は相変わらず同じことを繰り返しているということ。弱い相手や手頃な相手とばかり戦って「俺たちは強い」と錯覚しては時々、強い相手と対戦し現実に引き戻される。

惨敗したブラジルW杯以降、強化試合は国内開催で強豪とはいえない相手がほとんど。格下相手と戦わなければいけないW杯2次予選があった事情を差し引いても、アウェーに打って出る機会や格上との対戦が少なすぎる。

もちろん、興行面を考えれば、国内での試合は必要だ。僕も否定はしない。要は、そのバランスや集まったお金の使い方がよくないんだ。

キリン杯と同時期に韓国は欧州遠征を行ない、スペインに1-6と大敗したものの、チェコには2-1と勝っている。また、オーストラリアもアウェーでイングランドと対戦し、1-2で惜敗。いずれも相手はEURO出場国。日本よりも実になる強化試合をやっている。

仮にEURO出場国との対戦を組めなかったにしても、例えば日本がボスニアまで行けば、相手がベストメンバーをそろえてくれる可能性は高くなる。

今のままの強化を繰り返せば、たとえ最終予選を突破してロシアW杯に出場できても、ブラジルW杯と同じような結果になるんじゃないかな。

田嶋会長、西野技術委員長ら今年から新体制になった日本サッカー協会のトップがどう感じているのか、気になるところだね。

(構成/渡辺達也)