ジミヘンが愛した芸術の港町エッサウィラのメディナは世界遺産。私もこの街、モロッコで一番好き

サラーム! 砂漠から帰ってきたマリーシャが次に向かったのは、海!

モロッコの大西洋に面した城砦に囲まれた港町「エッサウィラ」にやってきた。青い空にはカモメが気持ち良さそうに飛び回り、のんび~り平和な雰囲気と温かい人々。

芸術家が魅了される街と言われ、あのジミ・ヘンドリックスもこの街に惚れて長期滞在したという。

すぐ近くには泳げるビーチもあって、乗馬を楽しんだりラクダにも乗れちゃうんです!

「北稜堡(ほくりょうほ)の展望台」には大砲が並び、目の前には大西洋が一望できる

早速、メディナ(旧市街)を歩くと「んんん!?」。仲良さそうに手をつなぐ男性ふたりを発見した。

これは、ヤバイ! 先日、砂漠で旅友と語り、「モロッコでは同性愛がご法度(はっと)」だと知ったばかりなのだ。私は一瞬ドキッとしたが、実はアラブ諸国やイスラム圏では、これは友情の証なんだって。そういえばバングラディッシュも、それから宗教は違えどインドもそうだったし、韓国もそうだよね。

こうしてみると、理由は様々だけど、世界では男性同士が手をつないでいるのをよく見かける。逆に日本ほど見ない国も珍しいのかもしれない。

手をつなぐ男の友情。最近では日本にも「なかよし男子」というのがいるんだとか?

そんなことを考えながら歩いていたら、「んんん!?」。モロッコ名物のアルガンオイル屋や革製品の店に混ざって、日本ではよく見るけどモロッコでは絶対見ないはずのものが目に入った。

それは、フワっと風に揺れる「たこ焼き」と書かれた、赤いのぼり旗!

ジャパレスがたくさんあるような先進国ならまだしも、なんでエッサウィラにたこ焼き屋さんが?

「は!」。私はアルゼンチンのパタゴニア地区で出会った日本人の旅人、松之助のことを思い出した。

みやげ物屋に並んで突如現れた、たこ焼き屋

「たこ焼きで人々を幸せに」

松之助は三重大学1年生の頃にたこ焼き屋を起業した。卒業後、「たこ焼きで人々を幸せに」という志を抱いて世界一周の旅に出た。

インドではたこ焼きを無料で振舞ったり、チリでは蟹とたこ焼きを交換したりと、世界でたこ焼きを作り続ける。だしと醤油以外の食材は現地調達。タコが手に入らないところでは鶏肉を入れたり、ボリビアではリャマの肉を入れたという。

ところで皆さん、日本に輸入されるタコはかなりの量がモロッコ産やモーリタニア産だって知っていましたか?

「モロッコのタコはとっても美味しい!」。そう唱える彼はたこ焼きを作ろうとモロッコを訪れたものの、意外にタコが売ってない。なので直接、港町であるエッサウィラに行って、港の朝市で探すことにしたのです。

港ではサメやウニや名前のわからない魚がいっぱい

港で会ったモロッコ人たち。エッサウィラ良いとこ、一度はおいで!

そして2012年9月、エッサウィラの路上でたこ焼きを売っていると、ピザ屋を経営していたアナスというモロッコ人にこう言われた。

「俺の店の前でたこ焼き出さないか?」

そんな運命的なひと言から、モロッコでのたこ焼きストーリーが始まったのだ。

それから彼はアナスに材料や技術を教え、道具一式を託し、モロッコを去りました――そう、このたこ焼き屋は松之助が作った店だったのです!

翌年、新たに世界一周の旅に出た彼はアナスに再会し、たこ焼き屋が大流行していることを知り、驚いたそう。

2015年には業務用たこ焼き機をモロッコに持っていったところ、「爆弾を作るのか?」と税関で別室に連れていかれるハプニングも。

そんなトラブルを乗り越え、今、彼が運んだ18個焼けるたこ焼き鉄板は8つ、立派に並び、そこに流されたたこ焼きの生地はプックリと美味しそうに私の目の前で膨(ふく)らんでいた。

大胆に生地が流し込まれていく

今では伊勢海老焼きや、イカ焼きなどいろんな種類のたこ焼きを売っている。さすが港町、エビもプリップリ~!

飛ぶように売れるたこ焼き

アナスはすっかりたこ焼き職人の顔で千枚通し(ピック)を握り、手際良くクルクルと丸を作っていく。漂うダシの匂いに現地の人が集まってきて、いつのまにか人だかり!

日本の旅人が遠いアフリカの地に出したたこ焼き屋は大流行りで、それを見た私は日本人として、旅人として、なんだかとっても嬉しかった!

「ハフハフッ!」 熱いものが口に入った時のリアクションは世界共通!

たこ焼きは一個4DH(約44円)。舟皿がないので、ポテトのSサイズくらいの紙袋に1、2個詰められ、生地に穴を開けてそこに醤油を注入するというスタイル。タコパでもあるのか一度に20袋注文する客もいたりして、詰め作業は大変そうだったけど、飛ぶように売れて鉄板は空っぽになっちゃった。

私は再び焼かれるのを待ち、やっとできた熱々を頬張ると、エッサウィラの恵まれた海の幸と日本の食のコラボレーションに自然と笑みがこぼれた。

こうして私は、遠いアフリカ大陸のモロッコで、ひとりの日本人旅人の志と、海を越えてたこ焼きでつながった友情を見届けたのだ。

これからもモロッコの人たちがたこ焼きで幸せになりますように

現在、フィリピンでインターンをしているという松之助にたこ焼き屋に訪問したことを伝えると「来年は20代最後。たこ焼きを始めて10周年の年に大きな挑戦をします。壮大なたこ焼きの旅です! ご期待ください!!」という、力強い言葉をもらった。

旅の仕方は十人十色だけど、こうして夢や希望にあふれている人の旅は刺激をもらえる。

「きっとまた世界のどこかで彼のたこ焼きに出会えるかもしれない」

そんなことを思いながら、私はたこ焼きにピッタリであろうビールの刺激を求めて、こっそり観光客用のお酒が飲める店へと足を延ばした。

プハッ!

実は国内産のビールもある。モロッコ産ビール「Flag」

【This week’s BLUE】程よい潮風とサンサンと降り注ぐ太陽の光に居眠りする猫。商品の上だけど、おかまいなしだニャー。

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】