「てんや風ローストビーフ天丼」(税込み780円)。専用に開発されたドミグラスソースもポイント。大根おろしと合わせて食べてもおいしい!

天丼のチェーン店として関東を中心に全国展開する、てんや。

平成元年の創業以来、ワンコインで本格的な天丼が食べられるお店として、サラリーマンを中心に安定した支持を得ている。

だが近頃、やたらとアグレッシブなメニューが目につくようになった。豚天丼、鶏天丼、牛タン天丼といった、肉を使った天丼だ。今年4月には半熟たまご天をのせたWハンバーグ天丼なるものを登場させ話題になった。

そして6月にデビューしたのが、ローストビーフ天丼。食べてみると、ローストビーフの柔らかさは残しつつ、天ぷらとしてさっくり揚がっている。正直、インパクト重視の天丼だと思ったが…こりゃうまい!

てんやのメニュー開発を担当するマーケティング・商品部に話を聞いた。

「ローストビーフ天丼は、昨年の牛タン天丼の反省を生かして開発を始めました」

ビーフを使った天丼として、昨年華々しく登場した牛タン天丼だったが、素材によって大きさや厚さが微妙に異なるため、うまく揚げるのが難しかったのだ。

お店に行ったことがある人はご存じだろうが、てんやは誰でも安定しておいしい天ぷらが揚げられるように、衣をつけた具材が油の中を自動で流れるオートフライヤーを使っている。

そして、その温度や時間は天丼の“センター”であるエビが一番おいしく揚がるように設定されているとのこと。それゆえ他の食材は、エビと同じ温度や時間でちょうどよく揚がるように、大きさや厚さを調整する必要があるのだ。ローストビーフもいろいろと試した結果、厚さ4mmとなった。

でも、数ある食材からローストビーフを選んだ理由は?

「牛タンの後、牛スジを攻め、正肉も試しましたが硬くてダメで、中心まで柔らかいローストビーフにしようと」

そもそも肉の天丼シリーズを始めたのは、普段、てんやにあまり来店しない学生世代の男性にもっと来店してもらう目的があったという。そう考えると前作のハンバーグ天丼も納得だ。

世に出なかった幻のメニューは?

ローストビーフ天丼は試行錯誤を重ねた後に、社長が試食。そこで出たのは意外なひと言だった。

「『ローストビーフにはマッシュポテトと西洋ワサビでしょう』と。それでポテサラ天と西洋ワサビをのせたところ、とても評判がいいんです」

新メニューの反響は大きく、売り上げもハンバーグ天丼を超えそうだという。

「話題になったけど、実はあまり売れなかったメニューもあるんですが、おかげさまでローストビーフ天丼はリピートのお客さまも多く、肉天丼シリーズとして過去最高の売り上げになるかもしれません」

では、定番メニュー化も?

「肉天丼は“チャレンジメニュー”という扱いで、今のところ定番メニュー化の予定はありません。これからもローストビーフ天丼に負けない新しい天丼を考えないと」

ちなみに過去、開発したけど世に出なかったメニューはあるんですか?

「たくさんあります。例えば、夏のメニューではソバ天丼とか。天丼のご飯の部分が冷たいソバなんです。何回か提案してるけど、社長のOKが出ないんですよ」

それは冷やし天ぷらそばとあまり変わらない気が…。

「あとはワールドカップ天丼。サッカーのワールドカップ出場国にちなんだ食材を天ぷらにして。4年に1回、試食会議に出すんですけど、いつもスルーされちゃうんですよね。また来たかと(苦笑)」

ローストビーフ天丼は7月13日(水)までの限定販売。次のメニューはどんな感じ?

「まだ言えませんが、王道だけど『こう来たか』と思っていただけるような(ニヤリ)」

次も楽しみに待ちたい。

(取材・文/関根弘康 撮影/村上庄吾)