日本仏教の根源として有名な長野県・善光寺。寺の執務によれば、一連のセクハラ騒動で「参拝客は半減した」とも

長野県を代表する観光名所で、1400年の歴史を誇る善光寺が揺れている。

善光寺住職で、天台宗「大勧進」のトップでもある小松玄澄貫主(こまつげんちょうかんす)(82歳)が寺の女性職員にセクハラ、パワハラ行為を働いたとして、懲戒を迫られる騒動になっているのだ。

「貫主」とは最高の地位を表す生き仏のような存在。そんなご仁がセクハラ、パワハラとは一体どうなっているのか? さっそく長野市へと飛んでみた。すると、善光寺へと向かうタクシーの中で、いきなり運転手がこうボヤく。

「あの貫主は女を見たら口説かずにはいられないほどの女好きで有名ですよ。今回のセクハラ騒動で善光寺の参拝客も半減し、タクシー商売にも響いている。困った人です」

どうやら小松貫主、地元では仏道より色道の先達として有名な存在らしい。

トラブルの発端はもう8年も前のこと。貫主は寺の賄(まかな)いを担当する60代女性職員2名にアタック。しつこくデートを強要し続けたという。しかし、ふたりはこれを無視。すると貫主、今度は一昨年2月に新しく採用された賄い担当女性(やはり60代!)を口説き始めたというから懲りない。善光寺の内部を知る僧侶が証言する。

「この職員が貫主の誘いに乗ってしまったのです。寺内で貫主と職員が抱き合うシーンが目撃されたこともあって、ふたりの不適切な関係はあっという間に善光寺内に広まってしまったのです」

これを知った2名の先輩女性職員は新入女性職員を呼び出し、貫主との関係を断ち切るよう説得したという。

「それからです。小松貫主のパワハラが始まったのは。一昨年9月、昨年8月とふたりの先輩女性職員に不当な配置転換を命令しただけでなく、『ヤクザの愛人で入れ墨がある』などと、中傷や差別発言を連発するように。新入女性職員を叱ったふたりによほど腹を立てたのでしょう」

貫主を解任するただひとつの方法は?

その後、ふたりの女性職員は長野市などにパワハラ被害を直訴。騒動を知った信徒などから、この6月末、懲戒を迫られることになったというわけだ。

「貫主は『天台宗一山』(善光寺の子筋に当たる25寺)や信徒総代から、無期限謹慎、善光寺本堂の立ち入り禁止、住職辞任を突きつけられています。ところが、貫主は『そんな発言はしていない』と疑惑を全否定。事実確認の会合出席もドタキャンし、逃げの一手です」

真相はなんなのか? 貫主直撃を試みたが、本人は雲隠れしたまま。代わって清水恵一大勧進執事がこう答える。

「信徒総代と一山から同時に辞任勧告を受けるのは、善光寺の歴史始まって以来のこと。事務局にも連日、苦情の電話が鳴りっ放しです」

貫主は辞任しない?

「セクハラも差別発言もしていないと、貫主は主張しています。辞任の要求ですが、貫主には任期がない上に、『悪いことなど絶対にするわけない』との性善説に立ってつくられた立場ですから懲戒規定もない。つまり、本人が辞めると口にしないかぎり、終生、貫主の地位に留まれるのです」

ということは、信徒らの要求は実現しないということ? この疑問に一山寺院のある僧侶がこう首を振る。

「ひとつだけ方法があります。大勧進の貫主を任命するのは、天台宗最高位である『天台座主(ざす)』を務める総本山延暦寺の貫主。だから、延暦寺貫主が解任を決断すれば、さすがの小松貫主も善光寺住職の辞任を受け入れるほかありません」

小松貫主、世界に55台しかないベンツCL55AMGを乗り回すなど地元では有名な生臭坊主だったとか。観光客も激減している善光寺のためにも、潔く仏教界を去るべきでは。

(取材・文/ボールルーム)