ドキュメンタリー映画『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』の魅力を監督である石原真(右)とAKB48・5期生の宮崎美穂(左)が語った

7月8日(金)より全国公開となったAKB48のドキュメンタリー映画『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』。

今作は、かつてNHKで『紅白歌合戦』や『MUSIC JAPAN』など数多くの番組を手がけた石原真が監督を務めた。その彼が今、注目しているというのが5期生、宮崎美穂

最新シングル『翼はいらない』で約5年ぶりに選抜メンバー復帰、さらに今年の選抜総選挙78位にランクインーー。そこでふたりの対談が実現、彼女の波乱万丈のヒストリーを振り返りつつ、映画の見どころを語ってもらった。

石原 宮崎は元々、5期生のトップだったんですよ。同期の指原莉乃や北原里英よりすごかった。歌はうまいし、ダンスもできる、ファンからスーパー研究生と言われて、AKB48の看板であるチームAに最速で昇格。

―当時、勢いあるなという自覚はありました?

宮崎 そうですね。まだ公演に出られない同期もいたくらいだったので…。

石原 あとは新公演の初日。高橋みなみが仕事の都合で出られず、まだ研究生だった宮崎がたかみなのポジションに入って、オープニングにひとりで登場!

宮崎 よく覚えてます。私がステージに出た瞬間、会場から「おおーーー!!」って。

石原 でも劇場に来ていたファンは納得。それだけの期待感もあったし。

宮崎 乗ってましたね。当時は周りがみんな先輩で、妹みたいに可愛がられて。

石原 今のコに例えるなら15期生の大和田南那(なな)やドラフト2期の樋渡由依ですよ。

―チームA、超期待の若手ですね。

宮崎 当時はまゆゆ(渡辺麻友)とえれぴょん(小野恵令奈)と私で次世代エースみたいなことも言われてました。

石原 第一回選抜総選挙は18位。「若手で一番きてるのみゃお(宮崎)」と言われてたし。『ヘビーローテーション』も選抜メンバー。

―でもそこから5年ぐらい停滞期があって…。ちなみにAKB48の映画も4作目まではほぼ映ってません。それはなぜ?

宮崎 映画のインタビューでも話したんですけど、“太ったこと”が最大の失態だったと思います。

太っていたという自覚は、ないです(キッパリ)

石原 チームBへ移籍した頃じゃないかな。やさぐれモードが始まったのは?

宮崎 妹グループのBで後輩もいる立ち位置になって。当時は後輩が苦手だったし、思うように活動ができなくて。

―チームBはみんなで差し入れのお菓子を奪い合ってたらしいですね。

宮崎 Bはもうデブ(DEBU)のBだったので(笑)。(佐藤)亜美菜、なっちゃん(平嶋夏海)、重量級チーム。

―みんなBへ行って大きくなりましたね…。

宮崎 チームAだと、あっちゃん(前田敦子)や(篠田)麻里子様はプロ意識が高くて食べ物をすごく気にするんです。でもBだと、「みんな友達、イエーイ! バクバク食べようぜ。差し入れ~!」みたいなテンション(笑)。公演の曲の合間にアイスを食べていたし。

―自分が太っていたという自覚は?

宮崎 ないです(キッパリ)。痩せてるぐらいに思ってました。まあ周りから少々言われてましたけど。親はもちろん、ファン、マネージャー、事務所…。でも「なんでそんなこと言うの~、私のことをいじめたいの?」ぐらいに(苦笑)。

―全く気にしてない!

宮崎 でも徐々に太ってることを自覚し始めて。一度、デブキャラにいこうと思ったんです。けど、プライドが邪魔をして。次世代選抜に選ばれていたり、過去の栄光があったから…。「デブで~す!」って踏みきれなくて。TVのダイエット企画のオファーは6回断りました。

―そんなに!

宮崎 で、卒業しようと。メディアに出る機会も減って、次世代のメンバーもどんどん出てくるし。ダラダラいるより別の道に行こうかなと。

―でも思いとどまった理由は?

宮崎 選抜にいた自分が忘れられなくて、悔しかったんです。このまま辞めるのは負ける気がして。それと人気がなくて、やさぐれてる時期でもファンの方は応援してくださっていたから、その人たちに申し訳ないなって。

あの日を境に吹っ切れた気がします

―そこからの復活劇ですね。

宮崎 まずはダイエットして。今のAKB48に足りないものを考えて。さっしー(指原莉乃)みたいなトークのできる人がいないから、そこかなと。昨年のじゃんけん大会では、白塗りでコウメ太夫の格好をして自虐ネタを。

石原 武道館は爆笑だったよね。

宮崎 最初はすごくイヤだったんですよ。でもあれだけの人が見ている中で思い切ってやったから秋元(康)さんの印象に残ったと思うし、あの日を境に吹っ切れた気がします。ターニングポイントですね。

―結果として選抜に戻ってきました。

宮崎 私が選抜に入ったことでみんなの刺激になったと思うんです。かつて、さっしーが選抜に入って、私が落ちて悔しい思いをしたように。悔しいと思うメンバーは絶対いるから、そういうメンバーにも頑張ってほしいです。

石原 宮崎は今、風が吹いているからね。トークでは小嶋(陽菜)や柏木(由紀)みたいな先輩に遠慮なくツッコめる。元々、トークはよかったけど弱気なところがあって。でも、そこを吹っ切れたのが再ブレイクにつながったのかなと。

―今回の映画に宮崎さんはどんな感じで出演を?

石原 まさに今までしてきた話ですね。AKB48って腐らなければ復活できるんですよ! 特に5期は総選挙2連覇の指原、NGT48へ行った北原、近野(莉菜)はJKT48で初選抜。内田(眞由美)は卒業して焼肉屋の店長。そして宮崎は復活とそれぞれの場所で頑張っている。

―ちなみに宮崎さんから見た石原さんは?

宮崎 絶妙な距離感です。昔からいるんですけど、マネージャーや支配人のように近すぎる存在じゃなく、違う観点からずっとAKB48を見てくださっている。

石原 宮崎は研究生時代から見てますね。劇場公演は500回ぐらい入ったかな? あと48グループの千何百曲、大体わかりますね。

そもそもどこから第2章なのか?

―すごい! そんな石原さんが撮った映画ですが、どういったテーマで?

石原 AKB48が10周年を迎えて、高橋みなみが卒業して第2章と言われるけど、そもそもどこから第2章なのか? 前田が卒業した頃という人もいるし、指原が総選挙で大島優子を破って1位になった時という人もいる。

―いつも第2章や次世代と言っている気がします。

石原 口で世代交代と言うけど、そう簡単じゃない。今は看板になるメンバーがいない状態。ウィズアウト高橋みなみのAKB48を描いてます。

―ずっと見てきた石原さんらしくマニアックな視点になるのですか?

石原 村民に向けての村祭りをやってもしょうがないと思ってます。誰々ちゃんが同期に抜かれて鬱ブログをあげたとか。AKB48グループってファンの数も大きいので、そこに向けても成立するんですよ。

雑誌でいったら3万部を相手にしたら商売として成立する。でもそれって外に広がらないよねと。例えば、週プレと今回の映画って似てると思うんです。AKB48にさほど興味がない、あるいは前田や大島がいた頃の神7や『365日の紙飛行機』ぐらいしか知らない人にまで楽しませなければいけない。

そう考えると、別の視点を入れなければ成立しないんです。モーニング娘。のつんくさんやももいろクローバーZの川上さんに話を聞いたのもそういうことです。

―もし宮崎さんが監督をやってくれと言われたら?

宮崎 喜んでやります! 私がやったらすごい感じになりますよ。「メンバーでしか見られない視線」をキャッチコピーに楽屋の着替えを…(ニヤリ)。

―それはダメです!!

(取材・文/関根弘康 撮影/山下隼)

■宮崎美穂 1993年7月30日生まれ。AKB48チームA(5期生)。

■石原真1957年生まれ。NHKエンタープライズ所属