FW浅野はキーマン。アーセナルが獲得した選手だというところを見せてほしいと語るセルジオ越後

確かに地味な顔ぶれだね。リオデジャネイロ五輪の代表メンバー18人が発表された。おおむね事前の予想どおりで、ケガ人を除けば、今年1月のアジア最終予選の主力がそのまま残った。

注目のオーバーエイジ(23歳以上)はFW興梠(こうろき・浦和)、DF藤春(G大阪)、DF塩谷(広島)の3人。3枠をフル活用するのは、2000年シドニー五輪以来、実に4大会ぶりだ。彼らの実力は申し分ないよ。

興梠はペナルティエリア内での反応が速く、周囲の選手を生かすこともでき、ボールも収まる。藤春はサイドからのスピードに乗った攻撃が魅力だね。塩谷は強さとスピードがあり、1対1で勝てる。この3人の加入は確実に戦力アップにつながる。

ただ、申し訳ないけど、インパクトには乏しいね。いずれもA代表に関しては当落線上の選手で、大きな国際大会での実績もない。若い選手たちを引っ張っていくリーダーシップという部分も未知数だ。

なぜ、ひとりでもいいから、JリーグでプレーしているA代表のレギュラークラスを招集できなかったのか。また、招集が難しいといわれていた欧州組についても、例えば、長友(インテル)などは以前、「日の丸は誇り。呼ばれたらチャレンジしたい」と参加に意欲を見せていた。そうした選手について、日本サッカー協会はどこまで交渉を頑張ったのかな。手倉森監督には「本当に呼びたかった選手は、他にいたのでは?」と聞いてみたいね。

もちろん、決まった以上はこのメンバーに頑張ってもらいたい。また、注目度という点ではかなり物足りないけど、期待度という意味では、やるべきことをしっかりやれば、それなりに戦えるのでは、という予感はある。

勝敗のカギを握るのは誰か?

手倉森監督はメンバー発表会見で「後ろを万全にしたかった。前はチャンスこそ少ないがスキをつける(メンバー)」と言っていた。つまり、アジア最終予選を勝ち抜いた、粘り強く守ってカウンターを狙うサッカーだ。そのサッカーであれば、世界の強豪が相手でも勝負に持ち込めるはずだ。

また、6日間で3試合という過密日程と長距離移動を乗り切るには、誰が出ても同じサッカーをできなければいけないけど、しっかりとそういうメンバー構成になっている。

ただ、その中でも、個人的にカギを握ると思っているのが、FW浅野(広島→アーセナル)とMF遠藤(浦和)のふたり。

スピードのある浅野は日本のカウンター攻撃の中心。4位になった前回ロンドン五輪の永井(名古屋)と同じ役割だね。みんなが耐えて、我慢して奪ったボールを、彼が飛び出してシュートするというような場面は必ず訪れる。そこで決められるか。さすがアーセナルが獲得した選手だというところを見せてほしい。

遠藤は、塩谷が加わったことで最終ラインではなく、ボランチでの起用のメドが立った。アジア最終予選同様、彼が最終ラインの前にいることでチームの守備が格段に安定する。主将としてのリーダーシップにも期待したい。

この世代はアジア最終予選でも、あまり期待されていなかった。それが試合をするごとに力をつけ、1位で五輪出場を決めた。本田(ACミラン)のような派手なキャラの選手はいないし、みんなまじめでおとなしいけど、最終予選に臨んだときと同じ気持ちで戦い、低い前評判を覆してほしいね。

(構成/渡辺達也)