若者は長時間労働しても賃金で報われない働き方に限界を感じている

日本生産性本部などが2016年の新入社員およそ1300人を調査したところ、「働き方は、人並みで十分」と回答した人が58.3%と、過去最高を更新。

また、「将来どのポストまで昇進したいか」との質問で、「社長」と答えた人は10.8%と、10年前(17.8%)より大きく減少し、過去最低を更新した。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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「別に出世しなくてもいいじゃないか」「会社に使い捨てられる人生はいやだ」「そこそこの収入で、そこそこ働いて、平穏な日常を手に入れたい」

そんなふうに考えたことのある人は少なくないでしょう。でも、なんとなく「出世したい」とか「仕事が命」とか言っておかないとダメ人間みたいに思われる空気もまだ根強いですよね。

若者が出世を望まず私生活と仕事との両立を重視するのは、長時間労働で身を削っても賃金で報われない働き方に限界を感じているからだとも言えます。滅私奉公(めっしほうこう)よりもワーク・ライフ・バランスというのは私も共感しますが、老婆心(ろうばしん)ながら「いざというときに生き残る方法も考えておかないと」とも思います。

優秀だけどあえて出世を望まない社員ならともかく、初めからそこそこで手を打つような仕事ぶりだと、リストラの対象になりかねません。会社が倒産してしまったら、個人の人脈やスキルがないと再就職も難しい。そのあたりも視野に入れながら、会社に使われるのではなく会社を使うつもりでキャリアを積めるかどうかが問われているのでは。それって、イエスマンで出世するより、難しいかも。

●小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。会社員として15年働いた後、独立して6年。辞めたことを後悔したことは一度もないが、15年間の会社員経験があったからこそ、自分の適性を知って独立できたとも思う毎日