暑さで体だけでなく心がヤラれる前に休むのが大事!

暑い、暑い、暑い。こうも連日、うだるような暑さが続いていると夏バテや熱中症が心配だ。しかし、注意したいのはそれだけではない。夏はうつ状態になりやすいというのだ。

一体、どういうことなのか、パークサイド日比谷クリニックの立川秀樹院長に聞いた。

「うつ状態のひとつに心因性というものがあります。ストレス性とも言いますが、人はストレスを感じると防御反応として、交感神経が働くんですよ。通常、リラックスしていると交感神経が収まり、副交感神経が働くようになっています。

しかし、これが休んでいても交感神経が高まったまま“過覚醒”状態となってしまうと、頭がオーバーヒートしてしまい、心身の疲労困憊が起きて、疲弊に伴う、うつ状態になってしまうこともあります」

つまり、交感神経がある一定のバロメーターを振り切ったまま固定化され、元に戻らなくなってしまうと過覚醒状態になり、うつ状態を引き起こしてしまうというのだ。では、これと夏の暑さとはどういう関係が?

「夏の“暑さ”や“汗”もストレスなので、普段の生活よりも与えられるストレスが底上げされてしまっているのです。なので、普段からバロメーターが振り切れるギリギリのストレスを感じている人にとっては過覚醒、そしてうつ状態になりやすいというわけです」

過覚醒になると、疲れが取れない、不眠や食欲低下、そして頭痛、吐き気等の症状が出るそう。ただ、夏バテや熱中症とも似ているが、どう見分ければいいのか? 立川先生によると、不眠の質が違うという。

「過覚醒が起きていると、ずっと頭がリラックスできないような感じになってしまうんです。なので、不眠といっても夏バテの『疲れて眠れない』『寝苦しい』というのとは違い、覚醒しているので、ひとつは入眠困難があります。また、寝ても交感神経が高まってセンサーがONの状態なので些細な物音等で起きてしまったりとかで熟睡できないんですね」

また同じく、過覚醒で特徴的なのが感覚の“鋭敏化”だと立川先生は続ける。

自分でできる夏のストレスケアは?

「全ての感覚が異常に過敏になってしまうので、通常の痛みをものすごく大きく感じたり、疲れもひどく感じます。それだけでなく、例えば、人混みが辛くなったり、人の表情や評価を全て鋭敏に感じてしまうので、今までストレスとして感じてこなかったことも気になってくるんですよ」

そうなってしまうと、悪循環に陥ってしまう。些細なことにもストレスを感じるようになってしまい、その結果、さらに疲弊して、うつ状態になってしまうのだ。

「特に動悸まで出てしまうと、明らかに過覚醒。動悸は多くのうつの患者さんが訴える症状なんです。なので、放っておくとうつ状態になる危険が高いと思います」

では、過覚醒を防ぐためにはどうしたらいいのか。

「とにかく交感神経の高ぶりが振り切れないように、休むことですね。遊びに行ったり、飲みに行ったり等、能動的な癒しは元気な人なら効果ありますが、交感神経が高ぶっている人にとってはストレスになってしまうので、マッサージなどの受動的な癒しが大事です」

最後に、普段の生活の中でもできる、オススメのセルフケアを教わったので参考にしてほしい。まだまだ続く熱暑に、夏うつをこじらせないよう気を付けよう。

【夏のストレス・セルフケア】 1.朝起きる時間を守り、起きたらすぐ日光を浴びる 2.アイスコーヒーや紅茶等で交感神経を上げるカフェインを摂りすぎない 3.仕事からプライベートに移行する際に自分なりの儀式を作る。(お気に入りのカフェに寄る、ジムでストレッチ等) 4.夕食は就寝3時間前、入浴、運度は就寝2時間前に済ます。 5.就寝前1時間はメール、仕事の電話をせず、寝る時は携帯のスイッチを切る。 6.夜10時以降は、悩み事があっても紙に書き出し、明朝、再度考える。

●立川秀樹パークサイド日比谷クリニック院長、滝川中央病院非常勤医師。筑波大学医学部卒業、医学博士授与。著書に『「こころの病気」から自分を守る処方せん こころの健康を取り戻すために』等。

(取材・文/鯨井隆正)