金メダルラッシュに足りなくなったゴールデンバタフライフィッシュ

リオ五輪で日本勢が獲得したメダルは史上最多の金12、銀8、銅21の計41個。過去最多のメダルラッシュに日本中が沸くなかで、なぜか渋い表情の面々が…。兵庫・神戸市立須磨(すま)海浜水族園の飼育員たちだ。

実はこの水族園、日本代表を応援しようと、リオ五輪前にある企画をぶち上げた。園内に金、銀、銅メダル用の水槽を設置し、獲得したメダルの数だけ、同じ色の魚を泳がせて展示しようというのだ。

ところが予想以上のメダルラッシュで金色の魚が不足することに。そのため、やむなく魚の写真コピーを水槽に貼ってしのぐという“失態”を演じてしまったのだ。須磨水族園の小坂直也飼育員がこう恐縮する。

「金色の魚として『ゴールデンバタフライフィッシュ』10匹を用意したのですが(その後、3匹が体調不良に)、私どもの予測を裏切って、金メダルが12個にもなってしまった。『ゴールデンバタフライフィッシュ』は真ん丸の体形で鮮やかな金色と、金メダル用の魚にぴったりなのですが、かなりの珍魚で一匹数万円はする。

足りない分を補充しようと方々の熱帯魚業者に問い合わせたのですが、どうしても在庫が見つからず…。そのため、やむなく写真コピーで代用するという、お恥ずかしい結果になってしまったというわけです」

「キンギョハナダイ」という「キン」のつく赤い魚でやり過ごす案もあったが、潔くシールで対応したとか

ひょっとしたら、金の魚が足りなくなるかもーー。小坂飼育員によると、そんな不安がよぎり始めたのは8月11、12日のことだったという。

「この日に体操の内村選手、柔道のベイカー、田知本両選手、水泳の金藤選手が金メダルを取り、それまでの3つと合わせて計7つになってしまったんです。後半に女子レスリング競技が控えていることを考えると、金メダルは10を超えかねない。焦りました」

そして8月18、19日の両日で、須磨水族園は完全なお手上げ状態となる。小坂飼育員が苦笑する。

「18日に伊調選手ら、女子レスリング勢が3つの金を取ってしまったんです。これで日本の金メダル数は10となり、準備した『ゴールデンバタフライフィッシュ』をすべて使いきってしまった。なのに、翌19日もバドミントンの高松コンビに続き、女子レスリングの川井選手までもが金メダルに輝いてしまった。このふたつの金メダルで万策尽きました」

こうなると、心配になるのが2020年の東京五輪。須磨水族園では4年後も同じ企画を行なうつもりというのだが、今回と同じミスをしてまた恥をかいたりしない?

「4年後の東京五輪は同じミスをしないよう準備しますが、また読みを間違えて魚の確保にあたふたしたい、との思いもないわけではない。それは日本選手団が予測以上の活躍をして、金メダルラッシュになっているということですから」(小坂飼育員)

4年後、須磨水族園の金メダル水槽がどんな状態になっているのか、楽しみだ!

(取材・文/ボールルーム)