「僕の考えるファシズムにおいては、多様性を受け入れない人たちは即座に退場」と語るモーリー氏

週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが現代日本版「正しい極右政治」について語る。

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戦後71年間、日本という国を支えてきた社会システムは、どこをどう切り取ってみてもサステイナブル(持続可能)ではなくなっています。

にもかかわらず、多くの日本人は濁流に削り取られつつある狭い中州に立ち尽くし、ただ足場が崩れていくのを眺めるだけ。「向こう岸まで橋を架けよう」とか、「せめて土囊(どのう)を積もう」といった前向きな議論さえ、変化を恐れて潰してしまう。

この行き詰まりを打破するには、どんな劇薬が必要なのか? 今回は、僕が考える「リベラルな顔をしたファシズム政治」ーーもっとわかりやすくいえば「現代日本版・正しい極右政治」を紹介します。

まずは、「美しい日本」に代表される情緒的ナショナリズムを排し、超属性的なナショナルアイデンティティを政治軸とします。それは「多様性の徹底」。従来の日本が“違和感排除社会”なら、出身地や人種、性別などあらゆる属性を超越した“違和感歓迎社会”への転換です。

具体的には、移民の受け入れから始めます。といっても、人道的観点から誰でも受け入れるのではなく、オーストラリアやカナダがやっているように、日本に経済的・知識的利益をもたらす優秀な人材を優先的に入れるような構造です。

人種や民族に関係なく、優秀なら日本で心地よく暮らせる。望むなら日本人になれる。逆に、そういう移民を排除しようとするレイシストは全力で取り締まります。僕の考えるファシズムにおいては、右だろうが左だろうが、多様性を受け入れない人たちは即座に退場です

もちろん、日本人でも優秀ならいくらでもチャンスがあります。あらゆる属性のマイノリティを覚醒させ、才能のある人間が輝けるようにします。逆に言うと、才能がないのに“食い込む”ことで高い地位を得ている人は容赦なく引きずり落とします。大事なことは、才能をムダにしないこと。現状の既得権をむしり取らない限り、埋もれた才能に対する“新たな利益”は生まれません─。

「精彩を欠いた部長」や「才能のない課長」の既得権をむしり取れ!

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さて、ここまで読んでどんな感想を持たれたでしょうか。ワクワクしましたか? それとも嫌悪ですか?

もちろん僕も、こんな強権的な暴政が実現するとは思っていません。ただ、それほどまでに現代日本の“病気”は深刻なんです

僕は、日本の病気の根源は「ガラパゴスとグローバリズムの同居」にあると考えています。グローバリズムで競争が厳しくなり、社会保障もカットの方向へ向かう昨今、本来なら「精彩を欠いた部長」や「才能のない課長」の既得権をむしり取る制度も同時に実現していないとおかしい。

ところが、日本にはそれがないから、いったん解雇されたり、受験に失敗したり、あるいは子供のいる女性が離婚したりすると、見事なほどチャンスが巡ってこない。ダメな既得権者たちが身を守るために組むスクラムが強すぎる

そのあまりにも高い絶壁を崩して、せめて“なだらかな丘”くらいにしないと、日本に未来はないと思うんです。現代に生きる知識人や論客の仕事は、「アベ政治」だとか「売国奴」とかいう正体不明のワードを並べ立てることではなく、日本を活性化させるためにタブーなき議論を交わすことだと思うのですが……

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム?あなたの時間?』(月~金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など