新日本プロレス『SUPER JCUP』で5年7ヵ月ぶりの再来日を果たしたカリスティコ

8月21日、新日本プロレスの『SUPER JCUP』に、あの「カリスティコ」がついに再来日を果たした。

2004年に「ミスティコ」としてメキシコ最大の団体CMLLに登場以来、幾度かリングネームを変えながら世界を股にかけて活躍し、ルチャリブレ界を牽引してきた伝説の男。

来日は2011年1月の第1回『ファンタスティカマニア』(新日本プロレス)以来、実に5年7ヵ月ぶりで「日本は第2の故郷」と公言している割に遅すぎる再来日。これは“ユーはどうして日本に戻ったのか”直撃するしかない!

しかし取材の約束を取り付けたものの、時間になっても約束したホテルのロビーに現れない…。まさか心配されていたケガが悪化? それともスターだけにドタキャン!? などと冷や汗をかきながら待機していると「あれ、僕の部屋でやるんじゃないの?」と気さくでキュートでちょっぴり天然なスーパースターが目の前に現れた…! 

スペイン語圏ということもあり、ここまでの単独取材はおそらく日本初? 手前味噌ながら超貴重なロングインタビューが実現!!

* * *

―試合前の貴重な時間をグラシアス! 会場入りまであと40分ですが(汗)。「日本は第2の故郷」のはずが、超ご無沙汰で…もしかして日本をキライになっちゃったとか!?

カリスティコ 違うよ(笑)! 本当は来たかったんだけどね…。

―最初に新日本プロレスに登場したのは2009年ですよね?

カリスティコ 2009年の1月だよ。そしてその8月にIWGPジュニアヘビー級チャンピオンになったんだよ!

―チャンピオンになった時の気持ちは?

カリスティコ ビエン! ムイ・ムイ・ビエン(すっごくよかった)! メキシコでも有名な新日本プロレスに来られたことも幸せだったし。

―タイガーマスク選手から王座を勝ち取りましたが、試合をされてどうでしたか?

カリスティコ 彼とはスタイルは違うんだけど、いつもいい試合ができるよ。だって僕のスタイルはジャンプしたり場外に飛んだりするアエレア(空中戦)が主だけど、タイガーマスクはちょっと違うでしょ? 彼はもっとクラシカルなルチャを仕掛けてくるんだ。だからふたつの違ったスタイルを見せられるし、そこが好きだね。最初はリングの中央で技の掛け合いで始めるけど、だんだん外に飛び始めて盛り上がっていくってわけ。

―「リビングレジェンド」とも呼ばれる獣神サンダー・ライガー選手についてはどういう印象を?

カリスティコ ライガーさん…! 彼はいつだって僕の憧れで、本当に尊敬している人なんだ。メキシコのファンにとっては、ミル・マスカラスと並んでライガー、タイガーマスクが伝説的な存在。もちろん僕にとってもね。メキシコで知り合った時、ライガーさんは僕にマスクをくれたんだよ! お会いしたらいつも敬意を持って接してくれるし、僕も「ライガーさん、ライガーさん」って感じで挨拶させてもらってるよ(笑)。

危険な仕事だから、長くても5年で引退するよ

屋外での撮影中「これ何の音? 鳥? 蜂?」と反応したのは蝉の声。メキシコにいないようで、木の幹に止まった蝉を「刺したりしないよね?」と安全な距離から凝視しておられた

―そのライガー選手にも勝利していますね。

カリスティコ そうなんだよ~、1度メキシコでね。IWGPジュニアヘビーのタイトルマッチで、その時は防衛できたんだ! 2009年9月にアレナ・コリセオ(首都メキシコシティにある会場)でね。

―そういったメキシコの試合を観るのはこれまで難しかったのですが、6月から動画サイト『新日本プロレスワールド』でCMLLの試合も配信開始。両社の関係は今後も続いていくと思いますか?

カリスティコ もちろん続いていくだろうね! 今、すごく良い関係を築けているんじゃないかな。相性もいいし、すごく良いコンセプトを共有できていると思う。そのコンセプトっていうのは、やっぱり双方で選手の行き来があること。それができるって、実はすごくいいと思うんだ。

―確かに、他団体に行くとなると退団してしまうケースも多いですし。その点、新日本では選手の海外遠征は頻繁(ひんぱん)です。先日、メキシコに行った現IWGPジュニア王者のKUSHIDA選手ともタッグマッチで対戦していますね?

カリスティコ そう、このケガはその時にしたものなんだよ…(苦笑)。

―そんな遺恨が!? 1ヵ月以上も欠場するほどのケガで、引退をほのめかす発言までされたとか?

カリスティコ ああ、言ったね。でもすぐにとは言ってないよ。年老いてからじゃなくて若いうちに引退したいという意味でね。年を取ってから引退するっていうのはイヤなんだよ。まあ、あと3~5年ぐらいかな。

―すぐじゃないですか! ただ、デビューも早く、すでに若くして18年のキャリアがあります。ルチャドールとしては長いほうですか?

カリスティコ そうだね…。僕はこれまでのキャリアでずっと「飛ぶ」スタイルを通してきた。それは正直なところ危険な流儀だし、それを続けてきたという意味ではすごく長いと言えるんじゃないかな。

―確かに必殺技「ラ・ミスティカ」を始めとした迫力の空中殺法があなたの魅力です。

カリスティコ (自身以上にキャリアの長い)アトランティス、ネグロ・カサスはタイガーマスクと同じクラシカルな試合運びで、僕の流儀とはだいぶ違う。僕は試合の間中、走り続けるし場外にも飛ぶから、やっぱりケガはしやすいんだよね。アメリカに行った時も、やっぱり戦い方が違うからたくさんケガをしてしまって…。そんな危険な仕事だから、長くても5年でもう引退するよ。

―残り時間が限られるとなると、さらに見逃せなくなります! その18年のキャリアで他団体を渡り歩き、昨年10月にアレナメヒコ(CMLLの主要会場)に戻ってきました。やはり愛着があった?

カリスティコ もちろんだよ。CMLLは僕のホームだから。僕はCMLLで、そしてアレナ・メヒコで生まれたようなものだからね。

日本は可愛いコがいっぱいいるね

―そこまでなら、どうして他団体に行ったんですか?

カリスティコ 環境を変えたかったんだ。他の場所で僕というルチャドールにどんなことが起こるのか知りたかったし、見てみたかった。確かに僕はメキシコ人にはあまりいないタイプのひとりだろうね。新日本プロレスにもCMLLにもAAA(トリプレア=メキシコのライバル団体)にも出ているし、アメリカのWWEにも行き、そして今は独立している。こういうルチャドールは珍しいと思う。

―レアだと思います! そのキャリアの中、どれぐらいの国で試合して来ましたか?

カリスティコ ほとんど全部じゃないかな。アメリカ、ヨーロッパだけじゃなくて南アフリカにも行ったし、ドバイとかイラクも行ったよ。アイルランドも行ったな。

―世界中を旅して周るなんて、本当にスーパースターの生活ですね。実はかなりのお金持ちなんじゃないですか~?

カリスティコ 僕がお金持ちだって? 全然ないよ~、ノー・オカネ! このカフェで払う小銭もないぐらい(笑)。

―いや、ここは出しますけど(笑)! 女の子にもモテたでしょ?

カリスティコ うーん、そんなことないよ。僕自身は子供だろうが女性だろうが男性だろうが同じように接するし、僕を観に来てくれる観客って幅広いんだ。小さな男の子も女の子もいるし、おじいちゃんおばあちゃんもいる。カリスティコはみんなの物だから。

―なるほど、みんなのモノなんですね…って、マジメか!

カリスティコ いつもね、アハハ。

―とか言って、世界中に彼女がいるのでは?

カリスティコ 僕はただひとりの女性を愛するタイプだから。

―素晴らしい!

カリスティコ 1ヵ国につき、ひとりね。

―オイ! どこまで冗談なのか…(汗)。では日本の女のコについては?

カリスティコ カワイいコがいっぱいいるね。それに若く見えるよね! 昨日行った焼き肉レストランにも超可愛いコがいたよ。一緒にいた◯◯さんに聞いてもらえれば、僕がどんなタイプが好きかわかると思う(笑)。

フットサルのメキシコ代表になっていた?

ファンタスティカマニアでもお馴染みのティタンと息の合った同時空中殺法を見せた!

―了解です(笑)! ところで、その活躍を妬まれることはありませんか? 例えば他の選手から何か嫌がらせを受けたりとか。

カリスティコ そりゃたくさんあるよ。

―やっぱり!

カリスティコ 別に何かされるワケじゃないけど、僕は楽屋でケンカしないタイプだから陰口を言われることが多いみたい。あいつは悪い人間だとか、自信過剰でナルシストだとか、いない所で悪く言われる。僕はすごくいい人間だから余計に妬まれるんだろうね(笑)。でも、会えばちゃんといい人間だってわかってもらえるから大丈夫!

―ポジティブ! それがスーパースターになる秘訣かもしれませんが、そんな障害にも負けずルチャドールを続ける理由は?

カリスティコ 僕の家系はみんなルチャドールだから。お父さんも兄弟たちもおじさんも従兄弟たちもみんなルチャドールなんだ。

―なるほど、家業のようなものでしょうか。では当然、子供の頃からなりたかった?

カリスティコ いや、サッカー派だったから(笑)。17歳の時はフットサルのメキシコ・セレクションのメンバーにもなったよ。

―つまり、代表メンバーということですか?

カリスティコ そう。セレクション・ハポン(日本)、セレクション・エスタドスウニドス(アメリカ)とかあるでしょ? そのセレクション・メヒコに選ばれたんだ。ルチャドールになっていなければサッカー選手になっていたね!

―ではなぜルチャの道を選んだのですか?

カリスティコ 家族全員、ルチャドールだから。

―えっ、結局それだけ?

カリスティコ それに気に入ったしね。プロレスって素晴らしいよ。世界中で知られているからアメリカでもどこでもできるし、CMLLで日本にだって来られる。僕はこの国が本当に好きなんだよね。日本食のファンだし日本の人も好きだし、全部気に入ってる!

(取材・文・撮影/明知真理子 通訳/鈴木つどい)

◆このインタビューの続きは⇒ 日本を愛するルチャのレジェンドが凱旋!「皆さんのおかげで“スペル・エストレージャ”になれたよ」 みちのくプロレス『ふく面ワールドリーグ』(9月16~19日、東京、新潟、宮城、岩手で開催)参戦も発表、“スペル・エストレージャ”を目の当たりにする超貴重なチャンスだ!!

●Caristico(カリスティコ)2004年にメキシコ最大の団体CMLLで「ミスティコ」としてデビュー以来、2011年から2013年はアメリカ・WWEで活躍するなどルチャリブレ界を牽引するスーパースターに上り詰める。2016年8月21日に新日本プロレスの『SUPER J CUP』にて5年7ヶ月ぶりの再来日を果たした。