欧米の“右派ポピュリスト”たちが連携するような動きを見せていることが気になると語るモーリー氏

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがドナルド・トランプを支持するポピュリストについて語る。

* * *

先日、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプの支持者集会である“大物”が応援演説を行ないました。イギリスのEU(欧州連合)離脱に主導的な役割を果たした英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージュです。

最近はトランプ陣営の劣勢が伝えられているだけに、事前の予想を覆してイギリスの国民投票に勝ったファラージュを呼ぶことで、「まだまだわからない。『まさか』は起こりえる」とアピールする狙いもあったのでしょう。

気になるのは、欧米の“右派ポピュリスト”たちが連携するような動きを見せていることです

昨今のヨーロッパではフランス国民戦線、オランダ自由党、オーストリア自由党といった極右政党が勢力を拡大し、民衆を煽(あお)りまくっています。その主義・主張はトランプと似た部分も多く、すでにフランス国民戦線党首のマリーヌ・ルペンなどははっきりとトランプ支持を表明。彼らは国境を超えて連携し、悪の枢軸ならぬ“無知の枢軸”をつくろうとしているのではないかーーそう思えてなりません。

ポピュリストの詭弁(きべん)には共通点があります。それは個々の小さな事例を過剰に一般化し、そして「巨悪化」すること。例えば「ムスリムの移民が増えた→ムスリムがアメリカを乗っ取ろうとしている」とか、「EUへのイギリスの予算負担が大きい→EU官僚がイギリス国民の富を食い物にしている」といった具合です。まさに針小棒大ですが、こうして「火に油を注ぐ」やり方が、現状に不満を持つ人々によく響くのです

本来ならそうした“衆愚化”にストップをかけ、バランスを取る役割を担うべき大手メディアもまた、深刻な機能不全に陥っています。例えば、テレビのニュース番組が社会のオピニオン形成を補助するため、啓蒙的な立場から複雑な話題を取り上げようとしても、その「お勉強の時間」が退屈だと思われてしまえばビジネスが成り立たない。結局、ひたすらエンタメ化するという方向へと舵(かじ)を切ってしまうのです。

日本の場合はニュース番組に芸能人を出して視聴者の興味を引こうとするケースが目立ちますが、海外でも方法論は違えど、ベクトルは総じて似たり寄ったり。こうして「お客さま」に寄り添う報道姿勢が、結果として社会の衆愚化を加速させていることは否めません。

“知的怠慢”に扇動家がつけ入る…

これに対し、国営放送なり公営放送がもっと本質的な報道をガンガンやればいい、との意見もあるでしょう。もちろん一理ありますが、そうやって余計なものを削(そ)ぎ落とせば削ぎ落とすほど、ニュースに興味を持つのは超インテリだけになり、大多数はスポーツやバラエティしか見なくなるかもしれない。そうなると、ますますポピュリストにとって都合がよくなってしまう…。転がり始めた衆愚化を止めるのは簡単なことではありません。

情報を集めたり、ものを考えるツールはいくらでもあるのに、多くの人は一番安直な方向、簡単な結論へ流れる。メディアもそれを追いかける。そんな“知的怠慢”に扇動家がつけ入る…。これは100年前のファシズムの流行とはまったく違う、新たなクライシスです。そして残念ながら、今のところ現状を打破する処方箋は見つかっていません。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム?あなたの時間?』(月~金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など